忍者ブログ

あなたに恋をしているの

※先天性で女の子な猪狩守ちゃん注意
 主←守←進



おかしなところがないか、ボクは最終チェックのつもりでスカートの裾をつまみながらもう一度だけ鏡の前でまわってみた。
何度も結び直した胸元のリボンとしわひとつないプリーツスカートがふわりと舞う様子に満足する。
もちろんメイクだってばっちりだ。緩やかに持ち上がったまつげはぱっちりとした二重の目元を飾り、アイラインは細く上品にボクの大きな目を際立たせている。チークは淡いピンク色で健康的に頬を染め上げ、リップグロスは少し多めに乗せてぷっくりとした唇を印象づける。
ボクは今日もなんと美しいのだろう。どこからどうみても完璧なボクは、ただやはり髪型だけが気に入らないのだった。

(また前髪がはねてる…)

どんなに丹念にブローしても、美容師にパーマをかけてもらっても、昔からボクの前髪はいつも決まって同じ方向にはねるのだった。ぐいぐいと指で引っ張ってみてもやはりすぐに戻ってしまう。
軽く首を振ると、ぱさりとショートカットの髪が揺れた。
髪型ひとつにこれほどまで心を砕く自分を滑稽に思いながらも、それでもやっぱりボクは考えずにはいられないのだった。

(あいつも、長い髪が好きなんだろうか)

あれは野球部の連中が「好みのタイプ」について話しているときだった。胸の大きい子がいい、背の小さい子がいい、料理上手な子がいい、好き勝手言う連中の声を聞きながら、ボクは心底どうでもいいと思いながらスポーツドリンクを飲み干したのだった。
今日はまた一段と暑い。休憩後の練習はさらに厳しくなるだろう。

「パワプロはどんな子が好きなんだー?髪長い子だっけ?」

ドリンクのおかわりを注ぎに腰を浮かせたボクは、中途半端な姿勢のままもう一度ベンチへ腰を下ろした。
後ろの方で矢部と何事か話していたパワプロはきゅっと顔を上げてこちらを見る。
いきなりなにー?と要領の得ない顔をしているパワプロの返事を待ってボクは無意識に唇を舐めていた。
ああ、喉が渇く。今日はなんて暑いんだろう。
「好きなタイプ?ああ、オレは」
「猪狩!監督が呼んでたぞ!」

ようやく口を開いたパワプロの声を掻き消したのは突然現れたチームメイトだった。
パワプロが何か面白いことを言ったらしく、後ろではドッと笑いが起こった。あいにくボクの耳にはその内容は聞こえてこなかった。

「猪狩?どうした、監督が呼んでんだろ?」
「ああ、今行くよ」

近くにいたチームメイトがいぶかしげな顔でこちらを見る。
ボクは曖昧に笑うとコップを置いて立ち上がった。パワプロたちはまだ笑っていた。

(結局、聞けないままだったんだ)

ボクが戻ってくる頃には当然のように話題は変わっていて、パワプロたちは今日あった小テストについて話しているのだった。順番からするとどうやら次はボクたちのクラスで抜き打ちの小テストがあるらしいが、そんなものは普段からきちんと勉強しておけば何の問題もない。
そのように答えると、相変わらずだなお前はと言ってパワプロは笑うのだった。相変わらずとは、それはいい意味なのだろうか、悪い意味なのだろうか。

ああ、それよりもいま差し当たって問題なのはこの前髪である。
やはりドライヤーをあてたくらいではどうにもならない。

「おはようございます、姉さん」

鏡に進の姿が映り込んで、ボクは少しだけびっくりしながら振り返った。もうそんな時間か。

「姉さん、最近気合い入ってますね。鏡の前にいる時間が前より増えたし」
「べつにそんなことない。もう終わるところだ」
「姉さん、前髪が気になるんなら、あれをつけたらいいのに」

どうやら意地の悪い弟はボクが前髪に四苦八苦する様子を見ていたらしい。
にっこりと笑った進が言う。

「あの髪留め、パワプロ先輩にもらったんでしょう?」
「あ、あれは、べつに!」
「いまさら隠さなくても。いつも机の上に置いて眺めてるから僕にもばればれですよ」

それも見ていたのか。本当に進は意地が悪い。
返答に困るボクへ進はやっぱり笑ってみせるのだった。
待っててください、と言い置いて踵を返した進はすぐに戻ってきた。手にはいつもボクが眺めているだけのヘアピンが握られている。
進が持ってきた髪留めとは、野球部で縁日に行ったときにひょんなことからパワプロがボクに買ってくれたものだった。出店に並ぶそれを何気なく眺めていたら、いつの間にか隣にいたパワプロが買ってくれた。きょとんとしているボクに、パワプロはきっと似合うよと言いながら小さな包みをボクの手の平に置いていくのだった。そのときの自分がなんと返答したのかはよく覚えていない。

「せっかくもらったんだからつけなくちゃ。今日は僕がつけてあげます」

そっぽを向くボクの前にやってきた進は、慣れた手つきで髪をかきあげると難無くヘアピンをつけていった。
長い髪をいつも結んでいる弟にとってこのくらいのことは造作もないことらしい。
人差し指で髪を触りながら進は言う。

「ほら、とってもかわいいですよ」
「ボクは、こんな幼稚なデザインは好きじゃないんだ」
「お花のかわいいデザインだと思いますけど」
「いかにも幼稚なあいつが好きそうなものだ」

フンと鏡を見ながら言うと、進は苦笑いしながら自分のネクタイの歪みを直し始めた。
髪留めをつけるのは得意なくせに、ネクタイを結ぶのは苦手だなんてボクの弟ながら変わったやつだ。
そんな進を横目に、ボクはというと鏡の中に映る自分の姿にうっとりみとれているのだった。
進の言う通りとてもよく似合っている。
こんなにかわいいヘアピンなら、もっと早くにつけていれば良かった。
ああでも、これをもらった日から数えて朝練のない日は今日が初めてなのだから仕方ない。
あいつはこれを見てなんと言うだろうか。似合うと言ってくれるだろうか。鈍感なあいつのことだから、そもそもヘアピンをつけていることすら気付かないかもしれないな。
ボクはこんなにもかわいいというのに、あいつときたらなにひとつ分かっちゃいないのだから。

「さあ姉さん行きましょう」
「ああ」

今日もボクの一日が始まる。外に出ると文句なしの快晴で、まぶしい太陽光に目を細めながら進と二人で笑った。
今日も絶好の野球日和だ。



―――――――
こいつぁやべえなと思ったら下げます
とうとうやってしまった…にょたまもちゃん…かわいい…
守さんはあおいちゃんみたいな感じで女性ピッチャーとしてチームにいます
守さんは全然相手にしてないけど、実はモテモテで常に狙われてたらウマー
悪い虫は進くんがぜんぶ排除だお
容姿には自信あり。野球に関しても自信あり。でも恋愛だけはどうしても自信が持てなくって…
主人公ちゃんの前ではことさら素直になれなくって…
守さんかわいすぎるからお嫁にきてください。私が娶る幸せにします

守姉さんに思いを寄せる進くんが切な萌えすぎてぱねえっす

拍手

PR

カレンダー

03 2026/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

最新記事

ブログ内検索

忍者アナライズ