シャボン
とても趣味の色の強い、キャラクターの名前を借りただけの読み物となりますので、苦手な方は閲覧を控えていただきますようお願い申し上げます。
13/友沢亮
ばかみたいだなあ、と思いながら友沢は立っていた。そう思いながらも、手持無沙汰に人ごみを眺めながら突っ立ている自分には、掛ける言葉も付ける薬もないのだろう。
学校帰り、午後4時過ぎ。もうすぐ期末テストを控えているので、部活動はない。そうだというのに、こんな日に限ってアルバイトも休みなのだ。ついていない。自分には、少しだって時間を無駄にする暇などないというのに。
わざわざ街の中心街にまでやってきて、友沢は何をするでもなく立っていた。街頭は人混みにまみれ、足早に行き交う人たちでごった返している。信号待ちしている人の群れを遠目で眺めながら、今ならまだ引き返せるという気持ちも少し残っていた。
ポケットに手を突っ込みながら、そういえば制服のまま来たのはまずかったのかもしれないなと思い当たった。さすがに、一目で未成年と分かるこの格好は良くなかったかもしれない。
クラスメイトの誰かが話していた断片的な会話。声を潜めているにも関わらず、それはなぜだかはっきりと自分の耳にまで届いた。
「あのね、内緒なんだけどね…」「えーそれってやばいんじゃないの…」「うん、でもね、すごいんだよ、だってね…」「そうなの、でも…」「簡単なの、あそこの交差点でね…」
ぎゅっと目を瞑る。ばかみたい、なのではなく、ばかなのだ。あのクラスメイトたちも、自分も、なにもかも。そうは思うのに、ここに留まり続ける自分に心底反吐が出た。
「ねえ、きみ、誰か待ってるの?」
声を掛けられ、はっとして顔を上げた。とっさにポケットから出された手は、ぐっしょりと汗をかいて冷たくなっていた。制服のズボンでそれをなすって、友沢は目の前の人間をぐっと睨みつける。そうでもしなければ、今すぐこの場から走り去ってしまいそうだったからだ。
スーツを着た、一見その辺のどこにでもいそうなサラリーマンの男だった。人のよさそうな顔で、こちらを見ている。生唾を飲み込んでから絞り出したそれは、思いがけず掠れていた。
「だったら、何」
「きみ、初めてだよね。見ない顔だ」
「……」
「ここで「待つ」ことの意味、分かっているんだよね?」
声を出さずに頷いて返答したことを、友沢はすぐに後悔していた。顎を引いてこくりと頷く自分の動作が、妙に幼く感じられたからだ。
クラスメイトの声が耳の奥で反響する。
ーーだって、お金が欲しいんだもん
それは本当にクラスメイトが発したものなのか、自分自身が発したものなのか、友沢にはもう判断のしようがなかった。
「じゃあ、行こうか」
生ぬるい風が頬を撫でた、ある初夏の日のことだ。
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シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
こわれて消えた
風、風、吹くな
シャボン玉飛ばそ
この童謡を聞いて、売春する友沢くんを思い浮かべた病人です。反省しています。でも後悔はしていません。
でもでも友沢くんには誰よりも幸せになってほしいなって、思っています。
不憫な友沢くんにどうしようもない魅力を感じるタチで申し訳ないです…
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