ハローニューワールド
主人公×友沢亮
ハローニューワールド
「友沢、なんか機嫌悪くない?」
「べつに」
機嫌が悪いわけではない。友沢は、自分自身の感情に戸惑っているだけだった。
部活動を終えた帰り道、友沢とパワプロは肩を並べて下校していた。今日は友沢のアルバイトも休みの日だ。厳しい練習、忙しいアルバイト、その合間を縫うようにしてパワプロと一緒に過ごす時間が友沢は好きだ。友沢は、パワプロのことが好きだった。パワプロも、友沢のことが好きだった。そういう二人が交際をするようになるまで、それほど時間はかからなかった。
こうして二人で過ごす時間が何より大切で大事にするべきものだと理解しているにも関わらず、この頃の友沢ときたら、不貞腐れたり素っ気ない態度を取ったり、つまらない気持ちになることが多くなっていた。それもこれも、パワプロが悪い。友沢の心中を掻き乱すのは、良くも悪くもいつもパワプロだった。
もともと友沢は、あまり他人に興味がない。それは、元来の性格によるものであったり、友沢自身の置かれた境遇のせいであったり、様々な要因はあるものの、他人に対する関心が希薄なのは昔からだった。兎角友沢には余裕がない。野球のこと、家族のこと、家計のこと、考えるべきことは山ほどあって、いちいち他人に干渉している暇はない。自分は自分、他人は他人。他人に構う余裕は、ない。そういう友沢の気質をすべてひっくり返していったのは、まさしくいま隣を歩いている男に他ならなかった。パワプロに出会ってからの友沢は、それまでの自分が思い出せなくなるほどに、変わってしまっていた。
こちらの気も知らない相変わらずお喋りな男に相槌を打ちながら、友沢は道端の石ころを蹴っ飛ばす。今日の友沢が自身の気持ちを整理出来ない理由は、隣を歩く男がチームメイトたちと妙に仲良くしていたのが面白くない、といったくだらぬ内容であった。馬鹿馬鹿しいとは思っても、湧き上がる感情を止める手立てはない。そんなに楽しそうに笑わなくてもいいのに、そんなに嬉しそうに話さなくてもいいのに、パワプロは誰にでも親しげで、そして底抜けに優しいのであった。グラウンド整備のトンボを掴みながら、友沢はその様子を眺めていた。
「なあ、友沢」
なんだ、声には出さず、視線を上げることで返事をする。友沢の態度に、パワプロは苦笑している。
こんなどうでもいいことに心を砕いているくらいだったら、素振りでもしていた方がよほど有意義だ。だらだら歩いているくらいなら、ランニングして帰った方がトレーニングにもなるだろう。そうは思うのに、今日も友沢はパワプロと並んで歩いている。野球の練習をして、早くプロ入りを決めなければ。金を稼いで、家族を助けなければ。友沢にはやるべきこと、やらなければならないことが山ほどある。それなのに、そんな理屈をすべて飛び越えてしまうのが、隣を歩く男だった。
「友沢」
パワプロがわざわざ立ち止まって名前を呼ぶので、友沢も歩みを止めて振り返った。さっきからなんだ、そう言おうとした友沢だったが、唇に触れたそれに驚いて、声になることはなかった。パワプロは、嬉しそうに笑っている。友沢が何も言わないのを良いことに、もう一度。口付けは、一瞬のことであった。人目のつく往来だ、注意をしようと思ったが、やはり声にはならなかった。
「へへ。ちょっとは、機嫌直った?」
してやったり、悪戯っぽいその笑顔を前に、友沢はやはり黙っている。それを見たパワプロが、友沢を茶化す。自然と口角が上がっていることに、自分自身でも気が付いていた。
全然、足りねえよ。今日いちばんの笑顔でそう言って、友沢はパワプロの唇に噛み付いた。夕焼けだけが、それを見ていた。
了
ーーーーーーーーーーー
来年2月のパワフルカップ3にサークル参加することとなりました!やんややんや
新刊等々全くのノープランですが、何かしら出せたらいいなと思っております。
パワプロって、いいよね
ハローニューワールド
「友沢、なんか機嫌悪くない?」
「べつに」
機嫌が悪いわけではない。友沢は、自分自身の感情に戸惑っているだけだった。
部活動を終えた帰り道、友沢とパワプロは肩を並べて下校していた。今日は友沢のアルバイトも休みの日だ。厳しい練習、忙しいアルバイト、その合間を縫うようにしてパワプロと一緒に過ごす時間が友沢は好きだ。友沢は、パワプロのことが好きだった。パワプロも、友沢のことが好きだった。そういう二人が交際をするようになるまで、それほど時間はかからなかった。
こうして二人で過ごす時間が何より大切で大事にするべきものだと理解しているにも関わらず、この頃の友沢ときたら、不貞腐れたり素っ気ない態度を取ったり、つまらない気持ちになることが多くなっていた。それもこれも、パワプロが悪い。友沢の心中を掻き乱すのは、良くも悪くもいつもパワプロだった。
もともと友沢は、あまり他人に興味がない。それは、元来の性格によるものであったり、友沢自身の置かれた境遇のせいであったり、様々な要因はあるものの、他人に対する関心が希薄なのは昔からだった。兎角友沢には余裕がない。野球のこと、家族のこと、家計のこと、考えるべきことは山ほどあって、いちいち他人に干渉している暇はない。自分は自分、他人は他人。他人に構う余裕は、ない。そういう友沢の気質をすべてひっくり返していったのは、まさしくいま隣を歩いている男に他ならなかった。パワプロに出会ってからの友沢は、それまでの自分が思い出せなくなるほどに、変わってしまっていた。
こちらの気も知らない相変わらずお喋りな男に相槌を打ちながら、友沢は道端の石ころを蹴っ飛ばす。今日の友沢が自身の気持ちを整理出来ない理由は、隣を歩く男がチームメイトたちと妙に仲良くしていたのが面白くない、といったくだらぬ内容であった。馬鹿馬鹿しいとは思っても、湧き上がる感情を止める手立てはない。そんなに楽しそうに笑わなくてもいいのに、そんなに嬉しそうに話さなくてもいいのに、パワプロは誰にでも親しげで、そして底抜けに優しいのであった。グラウンド整備のトンボを掴みながら、友沢はその様子を眺めていた。
「なあ、友沢」
なんだ、声には出さず、視線を上げることで返事をする。友沢の態度に、パワプロは苦笑している。
こんなどうでもいいことに心を砕いているくらいだったら、素振りでもしていた方がよほど有意義だ。だらだら歩いているくらいなら、ランニングして帰った方がトレーニングにもなるだろう。そうは思うのに、今日も友沢はパワプロと並んで歩いている。野球の練習をして、早くプロ入りを決めなければ。金を稼いで、家族を助けなければ。友沢にはやるべきこと、やらなければならないことが山ほどある。それなのに、そんな理屈をすべて飛び越えてしまうのが、隣を歩く男だった。
「友沢」
パワプロがわざわざ立ち止まって名前を呼ぶので、友沢も歩みを止めて振り返った。さっきからなんだ、そう言おうとした友沢だったが、唇に触れたそれに驚いて、声になることはなかった。パワプロは、嬉しそうに笑っている。友沢が何も言わないのを良いことに、もう一度。口付けは、一瞬のことであった。人目のつく往来だ、注意をしようと思ったが、やはり声にはならなかった。
「へへ。ちょっとは、機嫌直った?」
してやったり、悪戯っぽいその笑顔を前に、友沢はやはり黙っている。それを見たパワプロが、友沢を茶化す。自然と口角が上がっていることに、自分自身でも気が付いていた。
全然、足りねえよ。今日いちばんの笑顔でそう言って、友沢はパワプロの唇に噛み付いた。夕焼けだけが、それを見ていた。
了
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来年2月のパワフルカップ3にサークル参加することとなりました!やんややんや
新刊等々全くのノープランですが、何かしら出せたらいいなと思っております。
パワプロって、いいよね
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