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幸福なゆりかごから墓場まで

11/友沢と主人公と友沢妹弟の話


 わたしのおにいちゃんは、とってもがんばりやさんです。まいにちあさ早くおきて、わたしとおとうとのごはんを作ってくれます。お母さんがいえにいたときはお母さんがやっていたことを、いまはぜんぶおにいちゃんがやってくれます。
 おにいちゃんは、やきゅうをします。やきゅうのれんしゅうをたくさんします。おにいちゃんはあんまりはなしてくれないけど、たぶんいっぱいいっぱいれんしゅうしているとおもいます。
 おにいちゃんには、ゆめがあります。ぷろやきゅうせんしゅになるのがおにいちゃんのゆめです。そうしたら、わたしとおとうとになんでもすきなものをかってくれるって、いいました。だから、れんしゅうをたくさんするっていいました。そうしたら、お母さんもきっとびょうきがなおるからって、いいました。
 お母さんは、びょうきで、いえにいません。びょういんにいます。ときどき、おにいちゃんにつれていってもらって、あいに行きます。そうすると、お母さんはいつもわらってくれるけど、そのあとはごめんねといってかなしそうなかおをするので、わたしもかなしくなります。そうすると、おにいちゃんが、だいじょうぶって、わたしとお母さんとおとうとにいってくれます。
 わたしは、おにいちゃんがだいすきです。だから、おにいちゃんにはあんまりがんばりすぎてほしくありません。どうしてかっていうと、がんばりすぎることはあんまりよくないって、学校の先生がいっていたからです。がんばりすぎるのは体によくないって、先生はいいました。
 でもおにいちゃんは、わたしたちのためにいっぱいがんばってしまうので、わたしはだいじょうぶだよっていいます。でもおにいちゃんは、あんまりきいてくれません。
 わたしのいえには、おとうさんがいません。でも、おにいちゃんがいつもよしよしってほめてくれるから、さみしくありません。わたしもおとうとも、おにいちゃんといっしょにいるのが大すきです。
 だから、おにいちゃんにも、よしよしって、ほめてくれる人がいるといいなとおもいます。
おにいちゃんに、ほしいものはある?って、きいたことがあります。おにいちゃんはちょっとびっくりしたみたいだったけど、わらって、ありがとうっていいました。
 わたしはまだ子どもなので、おにいちゃんがしてくれるみたいに、おにいちゃんにいろいろしてあげることができません。
 だから、かみさま、きいてください。わたしのぶんも、おにいちゃんのおねがいをきいてください。おねがいします。



 朋恵ちゃんの日記帳を開いたまま、友沢はぼろぼろと泣いていた。タオルを差し出すと、今度はそのタオルと日記帳を抱きかかえたまま余計に泣いてしまうのだった。友沢の涙はあとからあとから溢れ出して、止め方を忘れてしまったみたいだった。
 隣の部屋では朋恵ちゃんと翔太くんが眠っている。こんなときにまで友沢は二人を起こすまいと気遣っているようで、決して声をあげず、時々漏れる嗚咽すら我慢して泣いていた。

「勝手なことして、ごめん。この前あそびに来た時に、たまたま朋恵ちゃんの書いてた日記を見ちゃったんだ。お前があんまり無茶ばっかしてるから、どうしても見てほしくてさ。おせっかいだって分かってるけど、ごめん」
「……」
「友沢、オレも朋恵ちゃんと同じ気持ちだよ。そんなに、一人でがんばりすぎるなよ。お前を心配してる人がいること、時々でいいから、思い出してくれよ」

 もちろん、オレもその一人なんだけどさ。
 友沢はオレの言葉が聞こえているのか、聞こえていないのか、小さく嗚咽をこぼすばかりだ。その背中を、オレは自分に出来うる限りの優しい気持ちを込めてさすってやった。友沢に少しでもこの気持ちが伝わりますようにと念を込めながら。
 この頃の友沢は、今まで以上に目に余る無茶をしていた。バイトも野球も大学もお母さんのことも家のことも、ぜんぶ完璧にこなそうとして、めちゃくちゃな生活をしていた。友沢は自分自身について、あまりに無頓着すぎる。
 でも、そう思っていたのはオレだけじゃなかったみたいだ。オレが朋恵ちゃんの日記を見つけたのは偶然で、この前友沢の家にあそびに来た時に、こっそり朋恵ちゃんが見せてくれたのだった。
 おにいちゃんには、ないしょだよ。
 そう言った朋恵ちゃんの約束を破ってしまったことだけは申し訳ないと思っている。でもオレは、どうしてもきみのお兄ちゃんに知っていてもらいたかったんだ。

「友沢、もう泣くなよ。せっかくの男前が台無しだぞ」
「…なんだよ、それ」
「朋恵ちゃんが言ってたよ。うちのおにいちゃんは世界一かっこいい!って」
「そう、か…」
「オレも、そう思う。友沢は、世界で一番カッコイイ!」

 それを聞いた友沢は顔を真っ赤にして、絶句してしまったようだ。マンガだったら、「ボン!」みたいな効果音が出てしまうほどの見事な赤面に、オレは思わず笑ってしまう。
 驚いた友沢は、その拍子に涙も引っ込んでしまったようだ。

「涙、やっと止まったな」
「うるさい」
「はは、元気出てきたみたいで良かった」
「パワプロ」
「ん?」
「……」
「友沢?」

「ありがとう」

 そう言った友沢の顔を、オレはこの先もきっと一生忘れることはないだろう。胸の奥に感じたこの熱さも、きっと忘れることの出来ないものなんだろう。



2018.5.24
幸福なゆりかごから墓場まで


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友沢くんを泣かせたくなってしまう。できれば幸せな方で
友沢くん=家族の印象がとても強いです。幸せになってほしい
n年ぶりにやった11がやっぱりめちゃくちゃに良くて滾ってます
当時分からなかった友沢くんの魅力をビンビンに感じてます
かっこよすぎ!

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