忍者ブログ

ネクストバッターズサークル

ネクストバッターズサークル

 三球目、やや甘めに入ったストレートを引っ叩かれた。二遊間を鋭く抜けた球には勢いがあり、ランナーが帰って来てしまうことを悟る。きしくもこの回は、すでに一人ランナーを許してしまっていた。滑り込んだランナーがホームベースを踏み、一点。次の打者を三球三振でぴしゃりと仕留めるも、心内が晴れることはない。九回の表、ここを抑えれば勝利を手に出来たというのに、なんたることだ。
 マウンドを下りてベンチへ戻ると、監督に声を掛けられた。九回裏、打順は八番下位打線から始まる。つまり、九番であるボクにも打席が回ってくるということだ。当然、普通であればピッチャーであるボクの打席には代打がおくられることであろう。しかし、ボクは普通ではないのだ。そういうことはボクの打率と本塁打の数を見てから、顔を洗って出直して来てほしい。形式的な確認を済ませるために監督と少ない言葉を交わし、ボクはバットを持った。バットで取られたものは、バットで取り返すのみだ。
 ネクストバッターズサークルに入り、集中を高める。九回の裏を迎えて同点、この回で得点することが出来れば、自軍の勝ちだ。先頭打者が凡退に倒れたのを見てから、ボクはネクストから打席へ向かった。
 打席に入り、一度だけ伸びをする。マウンドに立つピッチャーを見ると、不思議と心が落ち着いてくるのだった。マウンドから十八,四四メートル離れた、こちら側。ストライクだった。内角ぎりぎり、際どいコースに放たれたストレートにストライクをくれてやる。二球目、緩急付けたカーブは外に大きく外れてボールとなった。
 三球目。打った瞬間に、手応えがあった。バットの真芯で捉えたストレートは、完璧なアーチを描いて飛んでゆく。そうして瞬きにも満たない一瞬の静寂の後、怒号のような歓声が降り注ぐ。どっと降るような歓喜の声を一身に浴びながら、ボクはダイヤモンドを回った。九回の裏、サヨナラホームラン。ホームベースを踏むのと同時にチームメイトがベンチから駆け出して来る。いちばん早かったのは、ネクストに控えていたパワプロだった。あっという間に他の人間も混じってもみくちゃにされながら、パワプロが言う。
「猪狩、お前、お前さあ〜!最高!」
「当たり前だろう、ボクを誰だと思ってるんだい」
 天才猪狩守。興奮するパワプロの声とそれは見事に重なって、ボクは声を出して笑いながら、そのハイタッチに応えてやるのだった。



ーーーーーーーーーーー
野球書けねえ〜!けど野球が好き〜!だし
野球してる守さんが好き〜!

拍手

PR

カレンダー

03 2026/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

最新記事

ブログ内検索

忍者アナライズ