好きなんだ
好きなんだ(主人公×猪狩守)
「パワプロくんが、さっき女の子に呼び出されてたでやんす!きっと告白されるに違いないでやんすよ!」
悔しいでやんす〜!と勢いよく駆け出していった矢部とは対照的に、ボクは制服を中途半端に引っ掛けたまま、ユニフォームに着替えている途中であった。
いつもならば部室まで矢部と一緒にやってくるパワプロの姿はなく、特に尋ねてもいないのだが、矢部は勝手に言いたいことだけを言ってグラウンドに出ていったようだ。他の部員はまだ来ていない。一人になった部室でボクはようやくユニフォームに袖を通した。タオルを掴んで、スパイクに履き替える。
なんだか、変な感じだ。スパイクの紐を掴むのに上手く結べなくて、ボクはもどかしくなる気持ちを抑えてなんとかそれを結び終えた。ぼんやりと浮かぶのは、さっきの矢部の言葉と、ボクが勝手に想像するパワプロの姿だった。
パワプロが女生徒に呼び出されたらしい。そして告白をされるそうだ。一体それがどうしたというのだろう。馬鹿馬鹿しい。ボクにはなんの関係もないことだ。
そうは思うのに、ボクの頭の中には随分と勝手な想像が散らかっていた。パワプロに彼女が出来たら。きっと、ボクと過ごす時間は今までよりも減ることだろう。
部活動のあと、個人練習と称して二人だけで自主練習をする時間。時折、公園に寄ってキャッチボールをする時間。学校からの帰り、寄り道をして一緒にハンバーガーを食べる時間。新しいゲームを買ったと言って、パワプロの家で一緒にゲームをする時間。テスト前、助けて欲しいとボクにみっともなく泣き付いたパワプロに勉強を教えてやる時間。
それらの時間はきっと、その「彼女」とやらに割かれてしまうのだろう。「彼女が欲しい」そんなことを常日頃から冗談めかした口調で話していたパワプロの顔がいやというほど鮮明に思い出される。
そうしてボクはひとつの結論、気付きを得るのだった。一度腑に落ちてしまえばなるほど理解の出来る感情で、ボクは驚くほど素直にその気持ちを認めるのだった。そしてそれと同時に湧いてくるのは怒りである。パワプロからしてみれば不当としか言いようのないものであろうが、当事者のボクからすればまさしく怒り以外のなにものでもない。この天才猪狩守を差し置いて、いい度胸だ。
「あれ、猪狩しかいないの」
ガチャガチャと騒々しくドアノブを回して入ってきたのは、パワプロだった。鞄を放るようにして椅子へ置くと、さっそく制服のボタンを外して着替え始めた。
「猪狩、珍しいじゃん。いつもならさっさと着替えてランニングでもしてるのに」
あっという間にユニフォーム姿になったパワプロは、帽子を掴むとさっさとスパイクを履いて、今にも駆け出していってしまいそうだ。
「おい、パワプロ」
「へ、なに?」
「キミ、ボクに何か言うことはないのかい」
「え…ないけど。猪狩、なんか怒ってる?どうかしたのか?」
へらりと笑ってみせたその顔に、ボクはほんの今しがた導き出した気付き、結論への回答を見たような気がした。もう認めるしかないだろう。
「パワプロ。ボクは、キミのことが…」
さて、そのあとどうなったかといいますと、皆さまご承知置きの通りでございます。
突然降ってきた愛の告白にあっけに取られる人間がいる一方、言いたいことを言って勝手にスッキリしている天才が一人、そもそも話の始まりからすべて眼鏡の彼の早とちり思い違いだったとか、それによって天才が起こした天災のような告白から付き合うようになった二人がいたとかいないとか、おおむねそんな感じの、今日も平和なあかつき高校野球でしたとさ。終わりだよ!
了
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たまにはいいだろうという意欲作。
みなまで言うな…^^
「パワプロくんが、さっき女の子に呼び出されてたでやんす!きっと告白されるに違いないでやんすよ!」
悔しいでやんす〜!と勢いよく駆け出していった矢部とは対照的に、ボクは制服を中途半端に引っ掛けたまま、ユニフォームに着替えている途中であった。
いつもならば部室まで矢部と一緒にやってくるパワプロの姿はなく、特に尋ねてもいないのだが、矢部は勝手に言いたいことだけを言ってグラウンドに出ていったようだ。他の部員はまだ来ていない。一人になった部室でボクはようやくユニフォームに袖を通した。タオルを掴んで、スパイクに履き替える。
なんだか、変な感じだ。スパイクの紐を掴むのに上手く結べなくて、ボクはもどかしくなる気持ちを抑えてなんとかそれを結び終えた。ぼんやりと浮かぶのは、さっきの矢部の言葉と、ボクが勝手に想像するパワプロの姿だった。
パワプロが女生徒に呼び出されたらしい。そして告白をされるそうだ。一体それがどうしたというのだろう。馬鹿馬鹿しい。ボクにはなんの関係もないことだ。
そうは思うのに、ボクの頭の中には随分と勝手な想像が散らかっていた。パワプロに彼女が出来たら。きっと、ボクと過ごす時間は今までよりも減ることだろう。
部活動のあと、個人練習と称して二人だけで自主練習をする時間。時折、公園に寄ってキャッチボールをする時間。学校からの帰り、寄り道をして一緒にハンバーガーを食べる時間。新しいゲームを買ったと言って、パワプロの家で一緒にゲームをする時間。テスト前、助けて欲しいとボクにみっともなく泣き付いたパワプロに勉強を教えてやる時間。
それらの時間はきっと、その「彼女」とやらに割かれてしまうのだろう。「彼女が欲しい」そんなことを常日頃から冗談めかした口調で話していたパワプロの顔がいやというほど鮮明に思い出される。
そうしてボクはひとつの結論、気付きを得るのだった。一度腑に落ちてしまえばなるほど理解の出来る感情で、ボクは驚くほど素直にその気持ちを認めるのだった。そしてそれと同時に湧いてくるのは怒りである。パワプロからしてみれば不当としか言いようのないものであろうが、当事者のボクからすればまさしく怒り以外のなにものでもない。この天才猪狩守を差し置いて、いい度胸だ。
「あれ、猪狩しかいないの」
ガチャガチャと騒々しくドアノブを回して入ってきたのは、パワプロだった。鞄を放るようにして椅子へ置くと、さっそく制服のボタンを外して着替え始めた。
「猪狩、珍しいじゃん。いつもならさっさと着替えてランニングでもしてるのに」
あっという間にユニフォーム姿になったパワプロは、帽子を掴むとさっさとスパイクを履いて、今にも駆け出していってしまいそうだ。
「おい、パワプロ」
「へ、なに?」
「キミ、ボクに何か言うことはないのかい」
「え…ないけど。猪狩、なんか怒ってる?どうかしたのか?」
へらりと笑ってみせたその顔に、ボクはほんの今しがた導き出した気付き、結論への回答を見たような気がした。もう認めるしかないだろう。
「パワプロ。ボクは、キミのことが…」
さて、そのあとどうなったかといいますと、皆さまご承知置きの通りでございます。
突然降ってきた愛の告白にあっけに取られる人間がいる一方、言いたいことを言って勝手にスッキリしている天才が一人、そもそも話の始まりからすべて眼鏡の彼の早とちり思い違いだったとか、それによって天才が起こした天災のような告白から付き合うようになった二人がいたとかいないとか、おおむねそんな感じの、今日も平和なあかつき高校野球でしたとさ。終わりだよ!
了
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たまにはいいだろうという意欲作。
みなまで言うな…^^
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