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星降り

2010イメージ/主守


恋愛運急上昇、気になる彼と急接近の予感!?
高校の同級生が気になっているあなたは素直な気持ちを伝えると吉!
ラッキーカラー:ブルー
ラッキースポット:二軍球場

ぶるぶると震えながらパワスポを握りしめていた猪狩守は、ふうと大きく息を吐き出し手元の雑誌を机に置いた。
愛読のパワスポ、何気なく目に入った記事は占いコーナーのページであった。占いなどくだらない、そう思いながらもページを繰って自身の星座を探したのはほんの気まぐれである。一枚ページをめくると目当ての記事は見つかり、そこにはかわいいのかどうか判断に困る、微妙な顔をした山羊がこちらを見ていた。
普段はこんな記事気にもとめないのだが、なぜだか今日は読んでみようという気になった。手の平にじんわりと汗が浮かんでくる。くだらない、確かにくだらないけれど、まるで信憑性がないとも思えなかった。短い文章の羅列をもう一度上から下までなぞる。もしもこれが自分のことを言っているとしたら、そう思うといてもたってもいられないというのは本当だった。
思い浮かぶ顔はひとつしかない。気になる彼。高校の同級生。自分の気持ちを置いてけぼりにして、胸ばかりがドキドキと高鳴っている。ばかげている、だけど。
幸い時間には余裕があった。それに、二軍球場の近くに用事もある。ひとつ頷くと、猪狩は青いジャケットを手にとり、タクシーを呼ぶべく携帯電話を探した。



「キミ、また手がとまってるぞ」
「わー!オレ、ホソミーの巻頭グラビアなんか見てないって!」
「なに一人で騒いでいるんだい」

紐で結んだ雑誌を脇によけて、猪狩は額の汗をぬぐった。これだけの量になると、たかが雑誌の片付けとはいえかなりの重労働であった。山積みにされた雑誌の束、一体これで何年分になるのだろう。
今日は久々のオフである。猪狩は、片付けのできないパワプロの尻を叩きながらわざわざオフを返上して部屋の掃除を手伝っていた。そうだというのに、当のパワプロときたらたびたび手を休めてはよそごとをしている。何かを引っ張り出してきてはいちいち騒いだり眺めたりと作業はちっとも進まない。
手元を見ると、そこにはパワスポが握られていた。どうやらパワプロは、ホソミーという女子アナの巻頭グラビアページを読むのに忙しかったらしい。フンと鼻をならし、猪狩は呆れた口調で話し出した。

「全く。こんな古いものをとっておいてあるなんて信じられないね」
「だって、捨てるタイミングとか分かんなくて」
「だからキミは片付けができないんだよ」

おっしゃる通りでございます…一応反省の意を示しているらしいパワプロは神妙に頷くと今度こそ雑誌の整頓を始めた。それを見て猪狩も再び作業に戻る。ふと、先ほどパワプロが見ていたパワスポが目に入った。今度は真剣に片づけているらしいパワプロに隠れて猪狩はこっそりとページをめくってみた。表紙になんとなく見覚えがあったのだ。
ぱらぱらと流し読みをしながら、星占いのページが目に入った。普段はこんなもの気にもとめないのだが、イラストとして描かれている変な顔の山羊が記憶の糸に引っかかった。
山羊と目が合い、なんとなく感じていた既視感がはっきりとした記憶となって猪狩の中に蘇る。

「なに笑ってんだよ猪狩」
「いや、ちょっと懐かしくてね」
「?なにが?」
「ボクも若かったなと思っただけだよ」

要領を得ない顔でパワプロは首を捻っている。猪狩だけが口元を緩めて微笑んでいた。若い記憶だった。
思えば、あの占いは恐ろしいほどに的中していた。それは、今ここにいる猪狩とパワプロが証明していることだった。
温かな感情が猪狩を満たし、たまにはこういうのもいいかもしれないと猪狩は人知れず微笑む。

「なあパワプロ」
「ん?」
「キミは、なんでボクがいまここにいるんだと思う?」
「それは、だから、オレが片付けできないからだろ。ごめんって。今度はちゃんとやるよ」
「半分は正解で、半分は不正解だ」
「というと?」
「ボクはキミのことが好きだから、いまここにいるんだ」

きょとん、パワプロは大きな目をぱちくりと瞬かせて猪狩を見つめた。
そんなパワプロに猪狩はじりじりとにじり寄る。フローリングの床の上、指先が触れ合った。

「えっと?猪狩?」
「キミはどうなんだい」
「え?」
「ボクのこと、好きか」

そんなの、口ごもったパワプロはそれ以上言葉を紡ぐことができなくなってしまった。猪狩の唇に吸い込まれてしまったからである。
戯れのように重なった唇はすぐに離れた。そのまま触れるほど近い距離で猪狩は続ける。

「たまにはね。素直になるのもいいものだよ」
「なんかオレ全然ついていけてないんだけど…」
「ハハ、だからキミは鈍くさいしモテないんだよ」

モテないは余計だろ、ぷりぷりと怒るパワプロに猪狩は笑っている。昔から変わらない、これが二人の距離だった。

「ところで、キミはさっきからなにをしているんだ」
「え?」
「勝手に服を脱がさないでくれるかい」

楽しそうにぷちぷちとボタンを外しているパワプロの手を制する。しかし、掴んだ手は逆に引き寄せられ、そのまま唇を押し付けられてしまった。にやりと笑ったパワプロは猪狩の耳元で囁く。

「だって、ちゃんと返事をしないと」
「返事って」
「オレがお前のこと好きかどうか」
「そんなまわりくどいことしなくても分かってるさ」
「いーや、お前は分かってないね、全然分かってない」

愛してるよ、猪狩
本日二度目のキスはあきれるほどに甘く、猪狩はうっとりと目を閉じながらたまにはこんな日も悪くないと考えていた。


―――――――――――――
ただのヤオイ 主守っていいですね

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