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赤点満点

赤点満点(主守)

「お前って、ほんとにオレのこと好きだよなー」
「は?」
 ポテトチップスをバリバリと食べながら、そのまま適当に服で指を拭ってからコントローラーを握ったパワプロに、ボクは間の抜けた声が出た。ボクの様子になど構うことなく、パワプロはテレビの画面だけを見ている。
「次はこのステージにしよ」
「おい」
「えっ、なに。早くしろよ」
「さっきのは、どういう意味だ」
「なにって、そのままの意味じゃん。猪狩って、ほんとにオレのこと好きだよなーって思っただけ」
 進んでいく画面をよそに、ボクはパワプロの顔をまじまじと見る。さきほど負けたのがよほど悔しかったのか、パワプロは勝手に自分の得意なステージとキャラクターを選んでいる。おい、残機の設定まで勝手に変えるんじゃない。
「ボクじゃなくて、キミの方が好きなんだろう」
「んん?」
「ボクじゃなくて、キミがボクを好きなんだよ」
「いやいや待て猪狩」
「なんだ」
「なんでそうなる」
「じゃあキミは、好きでもない人間を自宅に招き入れるのか?」
「いや、それを言ったらお前こそ、好きでもないやつの家に上がるのか?」
「ああいえばこう言うじゃないか」
「お前がな」
「キミがね」
「じゃあなんでお前は、なんだかんだ悪態つきながら、オレと一緒にいるんだよ」
「何言ってる。キミが、赤点を取ったら部活動が出来なくなると言って、勉強を教えてくれとボクに泣きついてきたんだろう。一体これで何度目だい」
「そうだよ。でも、今はゲームしてるじゃん」
「それも、キミが始めたことだ」
「違うよ、これは猪狩がこの前の続きって始めたんだろ」
「キミが問題を解く間、少し息抜きをしようとしただけじゃないか」
「いや、隣でゲーム始められて、勉強なんか出来るわけないだろ!」
「それでもキミは勉強をするべきだ」
「だったら自分の家でやれよな」
「こんなもの、ボクの家にあるわけないだろう」
「そうなの?お前んち、あんなにデカいのに」
「こういうものは、キミと会うまで一度も触れたことがなかった」
「そういえば、そんなこと言ってたっけ…じゃあ、進くんともゲームで遊んだりしたことないの?」
「ない」
「そうなんだ。じゃあ、今度進くんも呼んで一緒にやろうよ」
「こんな狭いところに三人も入らないだろ」
「狭いってお前なー…てか、前に矢部くんとお泊まりしたじゃん」
「そうだった。あの日の矢部は妙な調子だったな」
「いやそれはお前だろ。人のベッドで勝手に寝てるし」
「このボクが、キミたちと一緒に雑魚寝など出来るわけないだろう」
「べつにいいけど…あー!」
「フフ…またボクの勝ちだ」
「もういっかい!」
「望むところだ…と言いたいところだが、いい加減勉強をしろ」
「うう…」
「このボクがみてやっているんだぞ、赤点なんて取ったら許さないからな」
「ほら、そういうところ。あの猪狩が、なんだかんだ面倒見てくれる」
「なんだその言い方は。まるで普段のボクが人でなしのようじゃないか」
「だいたい合ってるじゃん。だってお前、野球にしか興味ないもん」
「当然だ」
「あと…オレ?」
「いい加減しつこい。キミってやつは、よほどボクに気があるらしい」
「だからそれはお前だって」
「キミだ」
「お前!」
「キミ!」
「猪狩!」
「パワプロ!」
「…なにやってんだ、オレたち」
「さあね」
「でもさ」
「無駄話は終わりだ、さっさとペンを持て」
「オレは猪狩のこと、こんなに愛しちゃってるんだけどな」
 そのとき、自分がどんな顔をしていたのか、全く想像もつかない。たぶんパワプロとお揃いの、間抜け面だったことだろう。




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イチャイチャしてんなあ主守だなあ

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