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返事はいらない

返事はいらない(主人公×猪狩守)

 風呂から上がると、猪狩はもう布団の中に入って寝ていた。こちらに背を向けるようにして寝ている猪狩を眺めながら、オレは適当に濡れた髪を拭きながらビールの空き缶を片付ける。
 猪狩が酒を飲むのは、チームが日本一になったときと、オフの前日だけだ。今日はオレも猪狩もよく飲んだし、よく食べた。なにしろ、猪狩とこうして二人で会うのは久々なのである。酒が入って普段よりもさらに饒舌になる猪狩を眺めながら、こいつもオレと同じように嬉しいのかなと思うと、コンビニで買った安酒もとんでもなく美味く感じるのだった。
 オレは猪狩のようにドライヤーで髪を乾かすという高等な習慣がない。そもそも家にあるドライヤーは、猪狩が持ってきたものだ。髪を拭いたタオルをそこらにぽいと放り、オレも同じく眠ることにした。
 一人暮らしの部屋に似つかわしくない、キングサイズのベッド。野球でそこそこ飯が食えるようになった頃、自分へのご褒美にと奮発して買ったものだったが、今やまるで猪狩とこうするために購入されたもののようだ。人生、何がどうなるものか、本当に分からない。
 照明を落とし、布団に潜り込む。その間にも、にやにやと笑ってしまう顔が戻らなくてオレは困っていた。猪狩は眠っている。オレが布団に入ってきても相変わらず知らん顔で、そっぽを向いている。
 猪狩は、左肩を下にして寝ていた。これが、すべての答えだった。サウスポーである猪狩が、眠るときに左肩を下にすることはあり得ない。つまり猪狩は寝たフリをしていて、もっと言うなれば、これは猪狩なりの「イエス」のサインなのであった。こんなの、オレにしか分からないだろう。なあ、猪狩。
 たぶん今頃、耳まで赤くしながら期待に胸を膨らませているだろう猪狩に応えてやるべく、オレは後ろから静かに猪狩を抱き締めた。すぐに我慢できなくなってその首筋に噛み付くと、やっぱり寝たフリをしていた猪狩から抗議の声が上がるのだった。



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嬉しいときに書く主守〜
病める時も健やかなるときも主守〜〜

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