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神様なんていないのに

神様なんていないのに(猪狩守)

 ボクは、神という存在を信じていない。ボクが信じているのは、己の信念のみである。それは昔から今も変わらない。そうだというのに、その信じていないものに対して苛立ちを覚えるというのは、おかしな話であった。
 弟が、事故に遭った。トラックに轢かれたのだ。ボクがそれを聞いたのは、日課であるランニングをして家に戻った後のことである。運転手の脇見運転。赤信号無視。意識不明の重体。そんな単語が次々とボクの中を通り抜けていった。それらのひとつも現実味を帯びていないというのに、集中治療室で今なお治療を受けている弟だけが現実であった。
 ボクは、医者に尋ねた。「弟は、野球が出来ますか。」弟は、野球が好きなんです。二の句を飲み込んだボクに、医者の返答は無慈悲なものだった。
 もしも。もしもどこかに存在しているというのならば、ボクは神に問う。進が一体なにをした。今朝も変わりなく日課のトレーニングをこなし、まもなく始まる夏季予選への準備に余念なく、幼い頃より共に切磋琢磨してきた弟が、誰よりも素直でまっすぐでひたむきに努力してきた弟が、ボクの弟が、一体なにをしたというのだ。
 ボクは、神という存在を信じていない。それでも。信じていないはずのそれに、ボクは祈ってしまう、願ってしまう、思ってしまう。
 弟から野球を、どうか取らないで。ボクから進を、取らないで。どうか。神様。




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解釈日替わり

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