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恋愛模様は春の色

※先天性で女の子な猪狩守ちゃん注意
主←守


いつものことだと思っていたら、どうやら今回は少々勝手が違うようだった。
数分前までボクのことを好きだとか付き合ってほしいだとか言っていたそいつは、いまボクのことを口汚く罵っている。
お高く留まった態度が気に入らないだの女のくせに野球をやっているのはおかしいだの、その内容は思わず鼻で笑ってやりたくなるようなことばかり。
ボクは何を言うでもなくそいつの顔をまじまじと眺めていた。
たぶん隣のクラスのなんとかくんという人物に違いなかった。
クラスメイトの女子がカッコイイだとかあんな人と付き合いたいだとか言っていたのを記憶の彼方から引っ張り出す。
彼女たちにカッコイイと評されていたなんとかくんは、ボクの前で醜悪な顔をさらしていまだに何か言っていた。あいにくボクの耳には届いてこない。

「おい、聞いてんのかよ猪狩」

ボクが黙ったままでいることに焦れたのか、なんとかくんは少々激昂した様子でボクに詰め寄った。
どうやらボクの態度が気に入らないらしい。
つくづくしょうもないやつだ。
ときは放課後で、ここは渡り廊下から出てすぐのところにある中庭だ。
春先の柔らかで温かい風が花壇の花々を揺らし、木々をざわめかせる。
さわさわと頬を撫でる風はこんなにも心地よく、春らしい気候はボクの気分も良くさせる。
そんなボクがわざわざ部活前にこんな茶番に付き合ってやっているというのに、なんとかくんはとかく面白くない様子で未だにボクの悪口を言い連ねている。
今までこの手のことには何度か遭遇したことがあったが、こいつは結構どうしようもない部類に入るようだ。

ボクの悪口だけならどうでも良かったが、とうとう進のことにまで言及してきたときにはさすがのボクも黙っていられなかった。
自分のことをなんと言われてもいいが、進のことだけは我慢できない。
お前が進の何を知っているというのか。

「おい、ボクは」
「その辺にしとけよ」

唐突に聞こえた声に振り返る。
振り返った先には見知った顔があった。
見慣れた顔だったが、その表情は今まで見たことのない種類でボクは驚いた。
いきなり現れたパワプロはボクとそいつの間に割って入ると、怒った顔のままボクの手を引いた。

「振られたからってそういうこと言うのはカッコ悪すぎじゃないの」
「誰だよお前」
「誰だっていいだろ。もう、猪狩に付きまとわないでくれ」
「だれがそんなブスに付きまとうかっての!」

なんとかくんの負け犬の遠吠えを背中に聞きながら、ボクはパワプロに手を引かれるままに歩いていた。
繋がれた手が少しだけ痛い。
ボクの前を歩くパワプロの顔は残念ながら見ることができなかった。
ただ、その全身から怒りの感情を感じとってボクはたじろぐ。
ボクはパワプロの怒った顔というものがあまり記憶にないのだった。

「パワプロ」

ボクの呼びかけに反応してパワプロは繋いでいた手をぱっと離すときまりが悪そうにボクの顔を見た。それはボクの知っているいつものパワプロだった。

「ごめん。盗み見るつもりはなかったんだけど。たまたま、見えちゃってさ…」
「べつにいい。それより…ありがとう」
「いや、ほんとごめん。あんなことするなんてつもりなかったんだ。すぐに行こうと思ったんだけど、聞こえてきた会話にびっくりしてつい…」
「…いつから聞いてたんだ?」
「あいつがお前のことを好きとか言う辺り」
「ほとんど初めからじゃないか…」

全然気づかなかった。パワプロはどんな気持ちであいつの告白を聞いたのだろう。
聞きたいような聞きたくないような、あんな場面を見られて恥ずかしいような、ボクはどうしようもない心持になって指先をもてあそんだ。
先ほどまで繋がれていた手が熱い。

「それにしても猪狩、お前なんであそこまで言われて黙ってんだよ」
「べつに。好きに言わせておけばいいだろ」
「お前らしくないっていうか、オレの方が聞いててムカついたぞ。だいたいお前オレにはいつも好き勝手言うくせに」

それはキミだからだよと言おうと思ったが、鈍感なパワプロに通じるはずがないのでボクは黙っていた。
ボクはこんなにも好きなのに、パワプロにはいつだってなんにも伝わらない。
だんだん落ち込んできたボクの気持ちなんてこれっぽっちも分かっていないらしいパワプロは、先ほどとは打って変わって晴れやかな顔で笑っていた。
なにがそんなにおもしろいのか。

「なにを笑ってるんだ」
「お前って人の悪口言わないじゃん。あんなやつのことでも、悪く言わないんだな」
「言ったって仕方ないだろ」
「お前らしいな」

そう言うとパワプロはさも嬉しそうな顔で笑ってボクを困惑させた。
パワプロはよく「お前らしい」だとか「お前は相変わらずだ」などと言ってボクを困らせる。
それは一体どういう意味なんだ。
言われる度に何かを期待してしまうボクの身にもなってほしい。

「あ、早くしないと部活遅れちゃう!」

早く、猪狩、そう言って歩き出すパワプロは、もうボクの手を引いてはくれないのだった。
少しばかり残念な気持ちになったが、すぐに頭は部活のことでいっぱいになってボクは駆け出した。
パワプロを追い抜いてフフンと笑う。
いつの間にか部室までの競争へと発展していた。
ああ、今日もいい日だ。早く野球がしたい。



―――――――――
にょたまもちゃんはモテモテだったらイイナーという妄想がね、ロマンよね
パワプロくんが思いのほかイケメンに…
はやく付き合っちゃえよ(笑)

にょたまもちゃんもブラコンだったらいいよね



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