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自絞死

※ふたりとも頭のネジがゆるゆるな主進



ほろほろと涙を流す進くんの顔を見ながら、オレは「大丈夫だよ、気にしないで」と言いたかった。
それなのにオレの喉というやつはまともに機能をしてくれず、咳き込むばかりである。
ああ、いい加減止めなければ、この咳も、進くんの涙も。

「あの、僕、あの…」
「ゲホッ、いいよ、進くん」
「僕、こんなことするつもりなんてなくて、ぼく、ぼく」
「分かってるから大丈夫だよ」

だから泣かないで、言うと進くんは大きな瞳からさらに大粒の涙を流して泣きじゃくってしまった。
ぽろぽろと流れ落ちるそれは進くんの頬を滑ってオレの掌を濡らした。
ぬぐってもぬぐっても進くんの涙は止まらない。
オレが大丈夫だと言えば言うほど嗚咽は大きくなるばかりである。
泣かせたくなんてないはずなのに、どうしていつもこうなってしまうんだろう。
オレはバカだ。

「タオル、持ってくるよ」

優しく髪を撫でてソファから立ち上がる。
進くんは幼い動作で首をこくんと垂れると近くにあったクッションを手に取って顔を埋めた。
少し前にオレが進くんへプレゼントしたものだった。
僕、緑色が好きなんです、クッションを触りながらにこにこと笑う進くんがかわいくって、次の日オレは一人でまたそのお店へ行ってふわふわのクッションを買った。
プレゼントすると、進くんはクッションみたいにふわふわと笑うのだった。
そのクッションは今、進くんの涙でまだら模様になっている。

洗面所まで行って洗い立てのタオルを一枚手につかむ。
ふわふわのそれはとてもいい匂いだ。そういえば、柔軟剤を変えたんですと進くんが嬉しそうに話していた。進くんは家事が好きだった。
鼻先をタオルに押し付けて深呼吸をする。
咳はようやく止まった。

洗面所の鏡に映った自分をまじまじと見つめる。
首にはくっきりと真紅の跡がついていた。今しがた進くんにつけられた跡だ。
赤色を指でひとなぞりしながらオレは考える。
またやってしまったという反省と後悔。
最近こうして鏡の前で反省する回数が増えてきたような気がするのは、オレの気のせいに違いなかった。

こんなことになったのは、いつからだっただろう。
昔から、進くんには猪狩の話をすると嫌がるところがあった。
オレはそれを重々承知していたし、なるべく猪狩の話題を出さないようにしているのだが、なにぶんオレと猪狩は高校の頃からの同級生であったし、なにより猪狩は進くんの実の兄だ。
どんなに避けていたって、話題に上ることはある。
猪狩の話をする度に嫌な顔をしていた進くんは、いつしか顕著に怒りを表すようになった。
兄さんの話は聞きたくありません。あなたの口から兄さんの名前が呼ばれるのが我慢できません。
オレはそのたびにごめんと謝って、そのあと決まって進くんも謝るのが恒例のパターンだった。
わがままを言ってごめんなさい。

それがいつしかこうなった。いつからかは覚えていない。
気が付いたら進くんはオレの首を絞めていて、オレは抵抗せずにされるがまま、解放された後はこれでもかと咳き込むのだ。
抵抗する気がないのは、進くんの行為に殺意がないのが分かっているからだった。
当然だ、オレたちは恋人同士なのだもの。どうして殺す理由があるっていうんだ。
だからオレは進くんの好きなようにさせて、己の不注意を詫びるのであった。
ごめんね、進くん。
オレが謝ると決まって進くんは泣き出してしまうから、それだけが悩みだった。
オレは進くんに泣いてほしくないのに。
指の跡がくっきりと残った首筋を隠すようにオレはタートルネックの裾を引っ張る。
進くんは悪くないのだから、これ以上悲しませてはいけない。

「パワプロさん」

ソファから立ち上がった進くんが駆け出してくる。
そのままの勢いで進くんはオレの胸に飛び込んできて、オレは少しだけよろめいた。
進くんがいやいやをするように首を振って、ぐりぐりと顔を胸に押し付ける。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「いいって。だからもう泣かないでよ進くん」
「僕、パワプロさんがいないとダメなんです。パワプロさんのことが大好きなんです」
「オレも進くんのことが大好きだよ」

熱い進くんの涙がオレの服に染みを作った。
じんわりと広がるそれにオレまで泣き出しそうになる。
進くんの名前を呼んだ。顎に指をかけて顔を上げさせる。キス。
泣き濡れたまぶたに舌を這わせながら丹念に涙を舐めとり、唇はそのまま下に降りていく。
進くんの嗚咽を閉じ込めるように、ぴったりと唇を合わせて口づけた。
舌を差し入れて口内をねぶる頃には進くんの涙も止まっている。
静かなリビングにちゅくちゅくと水音が響いてオレは妙な心持になる。
名残惜しく唇を離すと、鼻の頭まで真っ赤にした進くんが蕩けた表情でこちらを見つめていた。
その鼻の頭にキスを落としてオレは笑う。

「進くん、好きだよ」
「僕も、好きです。大好きなんです」

もう一度だけ唇を合わせて進くんから離れる。
頭を撫でると、恥ずかしそうに進くんは笑った。オレは、この顔が好きだ。



―――――――
ヤンデレっていうかヤンデル進くんが好きです
それに付き合ってあげる主人公ちゃんも、また

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