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オーダー

オーダー (主人公←友沢)

 順番だと思う。目の前の、いつもの光景を眺めながら友沢はしみじみと思った。いつもの光景というのはつまり、チームメイト同士の小競り合い、さらに正確に言えばパワプロと猪狩守の言い争いであった。あまりに日常の光景であるため、もはや誰も気にしていない。各自練習の後片付けをしたり、すでに引き上げてしまった選手もいる。パワプロと猪狩は、練習後に顔を突き合わせてはこんな調子なのである。これが猪狩カイザースの一軍選手、ひいては友沢亮が目にするあまりにいつも通りの日常であった。
「猪狩、勝負だ!」
「ふん、ボクと勝負だなんて、十年早いね」
 そう言った猪狩はマウンドに上がるし、挑発されたパワプロは真っ向から喧嘩を買いながらバットを構える。あまりにもいつも通り。あまりに見飽きた。
 よくも飽きないものだな。さっきまで素振りをしていたバットを抱えながら、友沢は思う。それは彼ら二人に対してというよりも、自分に対して思うことであった。よくもまあ、飽きずに、毎度、毎回嫉妬出来るものだろう。友沢は、目の前の光景が大変にくらしい。
 嫉妬。妬み。嫉み。そういった感情の諸々を、友沢は今まですっかり忘れていた。羨ましいとか、妬ましいとか、そんなことを考えている暇は友沢にはなかったし、そこまで執心する対象もいなかった。そうだと言うのに。
 プロ入りをしてから、友沢はすっかり変わってしまった。腑抜けてしまった。自分でそう思う。念願のプロ入り、血を見る思いで手にしたプロ入りの切符、そうして開けた新しい世界の扉は、開けなくていい余計なところまで開いてしまったようだった。
 友沢は、パワプロに恋をしていた。
 色恋に疎い友沢には、パワプロが猪狩のどこを好いているのかさっぱり分からなかった。ついでに言えば、猪狩のパワプロに対する機微など、微塵も察することが出来なかった。友沢には分からないことばかりだ。
 そんな友沢が導き出した唯一の回答、それすなわち「順番」であった。出会いの、順番。パワプロが猪狩を気にかけるのは、自分よりも先に出会っていたからであろう。ただそれだけのことだ。そうでなければ、自分がこんな惨めな思いをする理由などどこにもない、そう思い込もうとしていた。
 なんでオレ、年下なんだろう。くだらない友沢の呟きは、勝負する二人の声に掻き消され、どこにも誰にも聞こえなかった。



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失恋沢すきすぎる

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