三途の川でクリスマス
三途の川でクリスマス
(パワポケ 主人公×四路智美)
高校生の頃、パワポケ君とホテルに行ったことがある。高校二年生の冬、クリスマス。
この季節、どこをどう過ごしても世間はやたと浮かれていて、街を歩けばイルミネーションの明かり、教室ではクラスメイトたちがクリスマスの予定やプレゼントといった話題に花を咲かせ、家でテレビを付ければ陽気なクリスマスソングと共に家族でチキンを食べるCMが映った。どうにも、苦手だ。テレビを切り、簡単な家事を済ませて床に就く。一人暮らしの住まいは、テレビを切るとしんと静かだった。布団を頭までかぶって、目を瞑る。そうしていると、ふいに瞼の裏に、ひとりの男の子が浮かび上がった。そうだった、今年は彼がいるんだった。布団を被り直しながら、私はこっそり唇を緩ませた。
クリスマス当日、私は彼を誘ってみた。ホテルに行かない?誘われた彼はどうにも衝撃的だったのか、固まっていた。ドギマギしていたその姿は、いつもよりずっとかわいらしく映った。
もちろんこの話にはオチがあって、私とパワポケ君はホテルの「ロビー」で一緒に過ごしたのだった。上等なソファに腰掛けながら、二人で他愛のない話をする。期待が外れてほっとしているのか、それとも残念なのか、彼は終始落ち着かない様子だった。高級ホテル、きらめく照明、沈み込む柔らかなソファ、隣にはパワポケ君。楽しかったからか、その日の私はいつも以上におしゃべりだったように思う。初めて、クリスマスを楽しいと思った。
帰り際、彼は私に尋ねた。どうして、あそこへ行こうと思ったの?一拍置いて、私は答える。きらびやかで、華やかで、きっと私には一生縁のない場所だからかな。彼はきょとんとしている。それで良かった。彼には、分からなくていい、分かってもらいたいとは、思わなかった。不思議そうな顔をしている彼の頬にチュッと口付けて、その日はそのまま別れた。間抜けな顔が、やっぱりかわいらしかった。
あれから、数年。また今年もクリスマスがやってきた。相変わらず街はきらきらと浮かれていて、歩く人の顔をきらびやかに照らしていく。
結局、高校生の彼と私が結ばれることはなくて、パワポケ君は別の女の人と結婚してしまった。それどころか、彼はそのすぐあとで崖から足を踏み外して、あっさりと事故死。死んでしまったのだ。
それを知ったとき、私は日本にいなかった。何しろ私は、悪の大組織プロペラ団の日本支部長だったのである。外国へ出張しての工作活動に忙しく、彼の死を知ったときは、それはもう悔しかったものだ。それと同時に、馬鹿馬鹿しくもあった。日本にさえいれば幾らでも打つ手があったという慢心、そして他の女と結婚した男のことを未だに気にしている自分も、そのすべてが。
「って、思ってたのにね」
「智美?」
「どうして死んだはずのあなたは生きていて、ついでに、銃弾を受けたはずの私もこうして生き延びているのかしらね」
「それは、オレがサイボーグになって復活していたからで、君はオレがあげた防弾チョッキを着ていて助かったんだろ」
「そう。そうなのよね。でも、そんな話って、信じられる?」
「まあ、言いたいことは分かるけど…」
困ったように笑う彼の横顔は、高校生の頃に見たものと全然変わっていない。再会した彼はサイボーグとして生まれ変わっていて、そして最近また人間に戻ることが出来たのだった。なに、それ。情報が渋滞を起こしている。ついでに今の私はプロペラ団の日本支部長でなくなって、というよりはプロペラ団ごと消滅してなくなっていた。パワポケ君はもう既婚者ではなくて、サイボーグでもないただの人間で、私はプロペラ団の支部長でなくなった。あらゆるしがらみがなくなって、ただの男と女になった。
「ねえ、どうして、また会おうと思ったの。それも、こんな日に」
「こんな日、って。クリスマスじゃないか」
「変な話ね」
「そうかな」
「そうよ。だって、ふたりとも死んだのに、生きてるんだもの」
「死んだのは、オレだけだろ?」
その言い回しもおかしなものだ。私もパワポケ君も、死んだはずなのに今もこうして会って、話をしている。ほんとうに、変な話。
「プロペラ団、なくなったわ」
「ああ、そうみたいだな」
「その一部は合法組織として、なんとか細々と活動を続けてる」
「智美が、がんばっているんだな」
「かなり厳しいけどね。もうやめちゃおうかな、いっそのこと」
「智美なら、出来るよ。オレにも手伝えることがあったらなんでも言ってくれよ」
「なんでも?」
「うん」
「前から思ってたんだけど、そういう無責任な発言は慎んだ方がいいわよ、パワポケ君」
「そんなつもりじゃあ…」
「……」
「智美がいいなら、オレは…」
「うそつき」
立ち止まって、じっと彼の目を見る。イルミネーションの光がきらきらと瞬いて、真っ直ぐな彼の瞳が眩しかった。きらびやかで、華やかで、きっと私には一生縁のないはずだったもの。
「智美」
「なに」
「…なんでもない」
「なあに、それ。…ねえ、パワポケ君。これからも「付き合って」くれる?」
一瞬驚いた顔をした彼は、まちがいなく高校生の頃のやり取りを覚えているに違いなかった。私から遊びに行こうと彼をデートに誘って、これからも「付き合って」くれるかどうか尋ねた、あのときのことを。満面の笑みで頷く彼は、あのときよりもずっと逞しく見えた。
「じゃあ、行きましょうか」
「行くって、どこへ」
「決まってるでしょ、今日はクリスマスなのよ。ホテルよ、ホテル」
「…ホテルのロビー、だろ?」
「ふふ」
隣を歩く彼の腕に自分の腕を絡ませて、私は笑った。きっとこの話にもオチがあるんだろう。だって、私とパワポケ君だもの。それでもいい、もうなんでもよかった。空を見上げると雪が降ってきて、私とパワポケ君は顔を見合わせて、また笑った。
了
ーーーーーーーーー
パワポケが熱い。チビの頃めちゃくちゃあそんだ1と3ばっかりやってたんですが、最近2も始めました。おもしろいです。ゆっくり、シリーズをあそんでいけたらいいな。
智美がかわいくて仕方ないので、とにかく幸せになってもらいたいです。3主ちゃんまじ好き
(パワポケ 主人公×四路智美)
高校生の頃、パワポケ君とホテルに行ったことがある。高校二年生の冬、クリスマス。
この季節、どこをどう過ごしても世間はやたと浮かれていて、街を歩けばイルミネーションの明かり、教室ではクラスメイトたちがクリスマスの予定やプレゼントといった話題に花を咲かせ、家でテレビを付ければ陽気なクリスマスソングと共に家族でチキンを食べるCMが映った。どうにも、苦手だ。テレビを切り、簡単な家事を済ませて床に就く。一人暮らしの住まいは、テレビを切るとしんと静かだった。布団を頭までかぶって、目を瞑る。そうしていると、ふいに瞼の裏に、ひとりの男の子が浮かび上がった。そうだった、今年は彼がいるんだった。布団を被り直しながら、私はこっそり唇を緩ませた。
クリスマス当日、私は彼を誘ってみた。ホテルに行かない?誘われた彼はどうにも衝撃的だったのか、固まっていた。ドギマギしていたその姿は、いつもよりずっとかわいらしく映った。
もちろんこの話にはオチがあって、私とパワポケ君はホテルの「ロビー」で一緒に過ごしたのだった。上等なソファに腰掛けながら、二人で他愛のない話をする。期待が外れてほっとしているのか、それとも残念なのか、彼は終始落ち着かない様子だった。高級ホテル、きらめく照明、沈み込む柔らかなソファ、隣にはパワポケ君。楽しかったからか、その日の私はいつも以上におしゃべりだったように思う。初めて、クリスマスを楽しいと思った。
帰り際、彼は私に尋ねた。どうして、あそこへ行こうと思ったの?一拍置いて、私は答える。きらびやかで、華やかで、きっと私には一生縁のない場所だからかな。彼はきょとんとしている。それで良かった。彼には、分からなくていい、分かってもらいたいとは、思わなかった。不思議そうな顔をしている彼の頬にチュッと口付けて、その日はそのまま別れた。間抜けな顔が、やっぱりかわいらしかった。
あれから、数年。また今年もクリスマスがやってきた。相変わらず街はきらきらと浮かれていて、歩く人の顔をきらびやかに照らしていく。
結局、高校生の彼と私が結ばれることはなくて、パワポケ君は別の女の人と結婚してしまった。それどころか、彼はそのすぐあとで崖から足を踏み外して、あっさりと事故死。死んでしまったのだ。
それを知ったとき、私は日本にいなかった。何しろ私は、悪の大組織プロペラ団の日本支部長だったのである。外国へ出張しての工作活動に忙しく、彼の死を知ったときは、それはもう悔しかったものだ。それと同時に、馬鹿馬鹿しくもあった。日本にさえいれば幾らでも打つ手があったという慢心、そして他の女と結婚した男のことを未だに気にしている自分も、そのすべてが。
「って、思ってたのにね」
「智美?」
「どうして死んだはずのあなたは生きていて、ついでに、銃弾を受けたはずの私もこうして生き延びているのかしらね」
「それは、オレがサイボーグになって復活していたからで、君はオレがあげた防弾チョッキを着ていて助かったんだろ」
「そう。そうなのよね。でも、そんな話って、信じられる?」
「まあ、言いたいことは分かるけど…」
困ったように笑う彼の横顔は、高校生の頃に見たものと全然変わっていない。再会した彼はサイボーグとして生まれ変わっていて、そして最近また人間に戻ることが出来たのだった。なに、それ。情報が渋滞を起こしている。ついでに今の私はプロペラ団の日本支部長でなくなって、というよりはプロペラ団ごと消滅してなくなっていた。パワポケ君はもう既婚者ではなくて、サイボーグでもないただの人間で、私はプロペラ団の支部長でなくなった。あらゆるしがらみがなくなって、ただの男と女になった。
「ねえ、どうして、また会おうと思ったの。それも、こんな日に」
「こんな日、って。クリスマスじゃないか」
「変な話ね」
「そうかな」
「そうよ。だって、ふたりとも死んだのに、生きてるんだもの」
「死んだのは、オレだけだろ?」
その言い回しもおかしなものだ。私もパワポケ君も、死んだはずなのに今もこうして会って、話をしている。ほんとうに、変な話。
「プロペラ団、なくなったわ」
「ああ、そうみたいだな」
「その一部は合法組織として、なんとか細々と活動を続けてる」
「智美が、がんばっているんだな」
「かなり厳しいけどね。もうやめちゃおうかな、いっそのこと」
「智美なら、出来るよ。オレにも手伝えることがあったらなんでも言ってくれよ」
「なんでも?」
「うん」
「前から思ってたんだけど、そういう無責任な発言は慎んだ方がいいわよ、パワポケ君」
「そんなつもりじゃあ…」
「……」
「智美がいいなら、オレは…」
「うそつき」
立ち止まって、じっと彼の目を見る。イルミネーションの光がきらきらと瞬いて、真っ直ぐな彼の瞳が眩しかった。きらびやかで、華やかで、きっと私には一生縁のないはずだったもの。
「智美」
「なに」
「…なんでもない」
「なあに、それ。…ねえ、パワポケ君。これからも「付き合って」くれる?」
一瞬驚いた顔をした彼は、まちがいなく高校生の頃のやり取りを覚えているに違いなかった。私から遊びに行こうと彼をデートに誘って、これからも「付き合って」くれるかどうか尋ねた、あのときのことを。満面の笑みで頷く彼は、あのときよりもずっと逞しく見えた。
「じゃあ、行きましょうか」
「行くって、どこへ」
「決まってるでしょ、今日はクリスマスなのよ。ホテルよ、ホテル」
「…ホテルのロビー、だろ?」
「ふふ」
隣を歩く彼の腕に自分の腕を絡ませて、私は笑った。きっとこの話にもオチがあるんだろう。だって、私とパワポケ君だもの。それでもいい、もうなんでもよかった。空を見上げると雪が降ってきて、私とパワポケ君は顔を見合わせて、また笑った。
了
ーーーーーーーーー
パワポケが熱い。チビの頃めちゃくちゃあそんだ1と3ばっかりやってたんですが、最近2も始めました。おもしろいです。ゆっくり、シリーズをあそんでいけたらいいな。
智美がかわいくて仕方ないので、とにかく幸せになってもらいたいです。3主ちゃんまじ好き
PR

