墓前より愛をこめて
墓前より愛をこめて
(パワポケ3 / 四路智美)
月に一度の墓参り。簡単に墓石を掃除して、花を手向けて、手を合わせる。今月は忙しくて、命日に来ることが出来なかった。だからといってどうということもなければ、それを知る人すらもいないのだけれど。ここに来ていること自体が、ただの自己満足であった。
「…他の女と結婚した上ポックリ死んじゃうあんたもあんただけど、ここに来ているあたしもあたしよね」
ぽつぽつと、目の前のお墓に向かって話し始める。いつものことだった。あの人が死んでからの三年間、私はこうして墓参りに訪れては取り止めのないことを話すのが習慣となっていた。
お墓の主の名前を、パワポケ君という。かつての私が、思いを寄せていた人の名前だ。ずっと好きだった。もしかしたら、今でもまだ、好きなのかもしれない。そうだとしたら、私は彼が死んでもなお、片思いを続けているということになる。
「そうそう、のりかさんは再婚したわよ。次の獲物を手に入れたってとこかしら」
自分で口にして、いやな気分になった。それでもやめられない。普段は抑えている感情が、ここに来ると我慢できなかった。抑圧されたそれが溢れ返っては逆流してくるような、そんな感覚だ。思うまま、脈絡なく私はパワポケ君に話し続けた。
彼が死んだとき、私は日本にいなかった。生きていて、これほど悔しいと思ったことはない。日本にさえいれば、いくらでも打つ手はあったはずなのに。何しろ今や私は、泣く子も黙る悪の大組織「プロペラ団」の日本支部長なのである。
私は幼少の頃に父も母も失くし、なんの縁かプロペラ団に拾われた。以来、組織に身を寄せて生きている。未成年、身寄りもなく、他に生きていく手段も選択も持たなかったのだ。パワポケ君とは、そんな頃に出会った。転校してきた初日、道端で見掛けた彼に何故だか妙に目を引かれたのをよく覚えている。野球部、彼のそばで過ごすようになってからは、あっという間に目が離せなくなった。彼はこちらの腹が立つほど純粋で、真っ直ぐで、そして馬鹿で、なにより眩しかった。
もしもこの世界が、何千何百と枝分かれする選択肢、可能性の上で出来ているのだとしたら、私はいま、何を選び、どこの可能性の未来に立っているのだろう。そこに彼はいない。墓の中に埋まる彼にはもう、選択も可能性もないのだ。
「……帰ろう」
自分の話していた声が止むと、いきなり静かになった。ここの墓場は、いつ来てもひと気がなく閑散としている。場所が場所とはいえ、もう少し墓参りに来る人と出くわしても良いのではないだろうか。
もう一度だけ手を合わせて、私はその場を後にした。手向けた花をちらりと見て、ああ、この花は彼ではなく、自分の心を供養しているのだなと今更ながらに気が付いた。
選択肢、可能性。未来。まさか、このすぐ後で、サイボーグになった彼と再会することになろうとは、今の私にはまだ、預かり知らぬことだ。
了
ーーーーーーーーー
ぱあぷろくんぽけっと!!!!!!
急にやりたくなって、久しぶりに1やって3やって、エモーショナルが爆発噴火しました。
1→3のシナリオまじ神。好き。
智美、好きです。
(パワポケ3 / 四路智美)
月に一度の墓参り。簡単に墓石を掃除して、花を手向けて、手を合わせる。今月は忙しくて、命日に来ることが出来なかった。だからといってどうということもなければ、それを知る人すらもいないのだけれど。ここに来ていること自体が、ただの自己満足であった。
「…他の女と結婚した上ポックリ死んじゃうあんたもあんただけど、ここに来ているあたしもあたしよね」
ぽつぽつと、目の前のお墓に向かって話し始める。いつものことだった。あの人が死んでからの三年間、私はこうして墓参りに訪れては取り止めのないことを話すのが習慣となっていた。
お墓の主の名前を、パワポケ君という。かつての私が、思いを寄せていた人の名前だ。ずっと好きだった。もしかしたら、今でもまだ、好きなのかもしれない。そうだとしたら、私は彼が死んでもなお、片思いを続けているということになる。
「そうそう、のりかさんは再婚したわよ。次の獲物を手に入れたってとこかしら」
自分で口にして、いやな気分になった。それでもやめられない。普段は抑えている感情が、ここに来ると我慢できなかった。抑圧されたそれが溢れ返っては逆流してくるような、そんな感覚だ。思うまま、脈絡なく私はパワポケ君に話し続けた。
彼が死んだとき、私は日本にいなかった。生きていて、これほど悔しいと思ったことはない。日本にさえいれば、いくらでも打つ手はあったはずなのに。何しろ今や私は、泣く子も黙る悪の大組織「プロペラ団」の日本支部長なのである。
私は幼少の頃に父も母も失くし、なんの縁かプロペラ団に拾われた。以来、組織に身を寄せて生きている。未成年、身寄りもなく、他に生きていく手段も選択も持たなかったのだ。パワポケ君とは、そんな頃に出会った。転校してきた初日、道端で見掛けた彼に何故だか妙に目を引かれたのをよく覚えている。野球部、彼のそばで過ごすようになってからは、あっという間に目が離せなくなった。彼はこちらの腹が立つほど純粋で、真っ直ぐで、そして馬鹿で、なにより眩しかった。
もしもこの世界が、何千何百と枝分かれする選択肢、可能性の上で出来ているのだとしたら、私はいま、何を選び、どこの可能性の未来に立っているのだろう。そこに彼はいない。墓の中に埋まる彼にはもう、選択も可能性もないのだ。
「……帰ろう」
自分の話していた声が止むと、いきなり静かになった。ここの墓場は、いつ来てもひと気がなく閑散としている。場所が場所とはいえ、もう少し墓参りに来る人と出くわしても良いのではないだろうか。
もう一度だけ手を合わせて、私はその場を後にした。手向けた花をちらりと見て、ああ、この花は彼ではなく、自分の心を供養しているのだなと今更ながらに気が付いた。
選択肢、可能性。未来。まさか、このすぐ後で、サイボーグになった彼と再会することになろうとは、今の私にはまだ、預かり知らぬことだ。
了
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ぱあぷろくんぽけっと!!!!!!
急にやりたくなって、久しぶりに1やって3やって、エモーショナルが爆発噴火しました。
1→3のシナリオまじ神。好き。
智美、好きです。
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