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雨降って

雨降って(野球マスク)

 人生は空模様に似ている。さっきまで晴れていたかと思えば突然雲行きが怪しくなって、気が付けば大雨洪水警報。さらに曇天から小康状態、ところにより雨、おおむねは晴れになることでしょうなんて思っていたら、実際には台風に巻き込まれていたなんてことも有り得る。当事者は、台風の目の中にいるうちには、分からないものだ。
 そういうわけで、僕の人生はトラックに撥ねられてからというもの、概ね予想通り、今のところは順風満帆と言ったところだ。天気というものは当然ながら、どんなに良くても悪くても、それがずっと続くということはあり得ない。止まない雨がないように、同時に晴れが永遠に続くこともない。
 目が覚めて、ベッドから起き上がる。このところ視力が著しく下がったので、眼鏡をかけなければ何も見えない。ベッドサイドに置いてあるそれを手探りで取り上げ、装着する。まだ少しぼんやりする頭のまま、冷蔵庫を開けた。この頃やたらと喉が乾くのは、これも手術の影響なのだろうか。二リットル入りのペットボトルを持ち上げ、グラスに注がずそのまま口を付けて飲む動作は、家にいたときには考えられないことだ。
 顔を洗うために洗面所へ向かい、蛇口を捻る。ふと顔を上げると、鏡の中にはまだ見慣れない自分の姿があった。眼鏡はもちろんだが、あまりに目立つのは髪の色だろう。緑色をしている。もちろん好んで脱色をしたわけではない、手術を終え、目が覚めたらこの色になっていただけだ。なんとなく髪に手をやって触ってみるが、手触りは昔のままだから余計に不思議な感じがする。
 外した眼鏡を脇に置き、顔を洗う。トラックに轢かれて一時は意識不明の重体で生死さえも彷徨ったらしいのに、こんな風に普通に顔を洗って朝の支度をしているのがおかしかった。交通事故によって僕の日常は大きく変わってしまったが、変わらないこともたくさんあるのだ。それは、自分がまだ野球を続けていることも含まれる。
 空模様は、人生に似ている。雨が降ったあとは晴れるし、そのときに虹を見ることだってある。
 初めてマウンドから見た空は、青かった。だから僕は今日も、野球をしているんだろう。なんとなくそんなことを考えて、我ながらロマンチシズム溢れる思考に笑ってしまった。僕の名前は、野球マスク。野球をするために、生きている。





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何年どころか十年単位で野球マスクのことを考え続けている
こわい!(もちろん私が)

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