忍者ブログ

両思いをなぞって

両思いをなぞって(主友)

「友沢、キスしてもいい?」
 昼食後、隣に座るパワプロが大真面目な顔で尋ねた。パックの牛乳を飲み干した友沢は、その顔をまじまじと見返す。昼の時間帯より少し外れているからか、屋上には自分たち以外に誰もいないようだ。傍目からはいつも通りにしか見えない友沢だったが、内心ではパワプロの言葉に怒りを覚えていた。正直、めちゃくちゃ腹を立てていた。
 勝手にしろ、そんなもん。付き合うようになってそこそこ経つというのに、パワプロはキスをするたびにいちいち友沢の許可を取った。それが気に入らない。気に食わない。したければ、すればいいのだ。
「したいなら、すれば」
「友沢が嫌なら、しない」
 嫌なものか。自分が今までに、一度でも、嫌がる素振りを見せたことがあっただろうか。そもそも好きでもない人間と一緒になどいないだろうし、付き合うなど以ての外である。だいたいこれで何度目だと言うのだ、このやり取りも。
 急転直下する友沢の機嫌悪さも、パワプロから見れば普段と何ら変わりないポーカーフェイスであったので、何も伝わらない。そう、何も。友沢は感情が表に出ない方であったし、それは都合の良い事も多かったが、ことパワプロに対しては毎度悪い方へ働いていた。友沢は、口数が少ない。余計なことは喋らない。そんなの、見ていれば分かるだろうと思ってしまう。
 友沢は、パワプロのことが好きだ。うんと好きだった。かつて、監督に口答えをした自分を庇って、身代わりにパワプロが野球部を退部になったことがある。それだけでも恩があるのに、パワプロたちが所属していた第二野球部のおかげで、自分たちは本当のチームになれた。今自分がこうして野球に専念出来ているのは、パワプロのおかげと言っても過言ではない。
 加えて、昼食のことや、家族のこと、バイトのこと、パワプロには並々ならぬ恩がある。パワプロはお人好しで、愛情深い。そういうパワプロのことを友沢が好きになるまで、そう時間はかからなかった。交際が始まったのも、自然のことのように思えた。
 だからこそ、友沢は理解が出来ない。なぜいちいち、口と口を付けるために、許可が必要であるのか、その理由が。自分が嫌がるからかもしれないとはパワプロの言であるが、それは本気で言っているのだろうか。
「もしかして友沢、怒ってる?」
 ああ、怒っている。声には出さない。おそらく、顔にも出ていない。友沢はもう、何に怒っているのかよく分からなくなっていた。キスひとつでわざわざ許可を取るパワプロには、自分の気持ちなど何一つ伝わっていないということなのだろうか。それは怒りというよりも、悲しみにも近い感情であった。
「友沢?」
 友沢の怒りは続く。パワプロがあんまりにも優しくてあんまりにも気遣いをするせいで、友沢は妙な願望を持つようになってしまった。乱暴をされたいなどとは言わないが、しかし、もっと欲望に任せて、好きに振る舞って欲しいと思う。お前がしたければ、すればいい。お前がくれるものを、オレは全部欲しいと思う。そうだ、オレはお前の全部が欲しい。
 顔を上げた友沢が噛み付くようなキスをして、驚いたパワプロは為す術もなくされるがままであった。口の端から垂れる唾液を舐め取ると、ようやく我に返ったらしいパワプロと目が合う。今度は向こうから重ねられた唇に満足をして、友沢はその首に腕を絡ませながら目を閉じた。




ーーーーーーー
友沢くんは主人公ちゃんのことめっちゃ好き
もちろん主人公ちゃんもね

拍手

PR

カレンダー

03 2026/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

最新記事

ブログ内検索

忍者アナライズ