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冗談みたいな話ですが

オレと友沢は、結婚した。友沢というのは友沢亮のことで、学生時代は同じ部活動で野球をしてきた同級生であるが、プロになってからは同チームで切磋琢磨するライバル同士であり、友人であり、大切な人だ。その友沢とオレは先日、入籍をした。どこの国の話とか、憲法とか法律とか、そういう野暮なことは一旦脇に置いておいてもらいたい。
 入籍する前から半同棲状態だったオレたちではあるが、結婚を機に引っ越しをして、今は仲睦まじく暮らしている。引っ越しに際し、倹約家であり節約家である友沢とは金の使い方を巡ってやや揉めたが、最終的には友沢の方が折れた。華美な生活や不必要な贅沢をするつもりはない、オレと友沢が普通に暮らしていけるだけのマンションを購入した。扉を開ければ、友沢が家にいてくれる。オレは、家に帰るのが何よりも楽しみだった。
「友沢、ただいま〜」
 玄関を開けても、わざわざ友沢が出迎えてくれるようなことはない。新婚ほやほやに間違いなかったが、友沢ときたら結婚する前からなんら変わりがない。少し寂しい気持ちもするが、あの友沢がオレの帰りを待ち侘びて、戸を開けた瞬間飛び出してくるようなことがあったらこわい。シャツのボタンを上からひとつふたつ外しながら、入って来た時からいい匂いのしているキッチンの方へ歩いて行く。
「ただいま」
「お帰り。早かったな」
「うん。今日の晩めしは?」
「見れば分かるだろ、カレーだ」
 振り返った友沢は、おたまで鍋の中をかき混ぜながら言った。エプロンを付けたその後ろ姿にぎゅうと抱き付くと、オレの行動を咎めるように、おいと言う。その声がただの照れ隠しだととっくに知っているオレは、たまらずその口を自分のそれで塞いでしまう。一度唇を離し、二度目の口付けを交わすときには、友沢はおたまを置いて鍋の火を切っていた。そういうところが、たまらない。
「ここでするのか」
「うん。晩飯の前に友沢を食べようかな」
「馬鹿だな」
 言葉だけを聞くとずいぶんひどいが、その声はこちらが恥ずかしくなるほど甘い。友沢が首の後ろに手を回して口付けをねだる間に、オレはエプロンに手を伸ばしてそのリボン結びをほどいてしまう。ほどいたそれにするりと手を掛けて、友沢を見る。
「エプロン付けてる友沢って、エロいな」
「台所でエプロンしないでどこでするんだ」
「それは、確かに」
 少しだけ考えて、ほどいたばかりのリボンをもう一度結び直す。こちらに寄りかかりながら小首を傾げる友沢の仕草は、世界一かわいかった。
「なんだ?しないのか」
「いや、このままの方がエッチかな〜と思って」
「ほんとうに、お前は……」
 呆れているみたいだけど、別に怒られない。それどころか、友沢の方も満更ではなさそうだ。
「ねえ友沢、キスして」
 とびきりかわいらしい返事が唇にちゃんと返ってきて、オレは思わずにやけてしまいながら、腕の中の友沢を抱き直した。


「という夢を見たんだ」
「それは、夢オチにしない方が良かったんじゃないか」
「友沢、どこ見て言ってんだ?」
 オレの次に風呂から上がった友沢は、こちらではなくあらぬ方向を見ながら、そう言った。早く全方位に謝罪した方が良いなどと要領の得ないことを言っている友沢を耳半分に聞きながら、オレは布団の上に寝転がる。
「オレたちが結婚したらさあー、朋恵ちゃんも翔太くんも、もちろん友沢のお母さんも、みんな一緒に暮らそうな」
「誰と誰が結婚するんだ」
「はは、友沢照れてやんの」
「……」
「オレ、これからもっと活躍するし、友沢より稼げるようにがんばるし」
「言ってろ」
 濡れた髪もそこそこにタオルを放り出した友沢は、照れ隠しなのかなんなのか、寝転んでいるオレの鼻を摘んだ。少しの間見つめ合い、オレは自分から目蓋を下ろした。友沢にはその意味がちゃんと伝わっていて、少ししてから唇の感覚がちょんと触れた。かわいらしい友沢からのキスにばっちり嬉しくなってテンションの上がったオレは、起き上がってから友沢を抱き締めて、そのまま一緒になって布団の上を転がった。
「へへへ、友沢、好きだよ」
「知ってる」
「誕生日、おめでとう」
「知ってたのか」
「当たり前だろ。プレゼントもちゃんとあるよ」
「そういうのは、言わない方がいいんじゃないのか」
「サプライズの方が良かった?」
「べつに。お前がいれば、それでいい」
「ひゃー、すごい殺し文句」
 二人して布団の上でくすくすと笑い合って、もう一度唇にキスをした。愛してるよと囁けば、さっきまでの余裕はどこへやら友沢は真っ赤な顔で黙ってしまったものだから、机の上に置いてあるあの小さな箱を見たらどうなってしまうのか、オレは想像してまた笑った。





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つい先日うっかり倒れて救急車に乗ってしまったので、予定していた計画が全てパァとなり、ご迷惑をお掛けした皆々様につきましては改めてお詫び申し上げます
いつもありがとうございます
今年はこのような形になってしまいましたが、友沢亮くん、お誕生日おめでとう!
来年もまた絶対お祝いさせてね!
友沢くんもみなさんもどうか健康で。ご自愛ください。

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