ワンサイドゲーム そのに
「ひとつゲームをしないかい」
そう言った隣の猪狩はオレの部屋でオレのゲームをしているところだったので、今やってるじゃんと言いたくなるのを飲み込んだ。猪狩は、子供の頃あまりゲームには触れてこなかったようで、最新作のものよりも昔のものを好んで遊びたがった。もちろんそれはオレのもので、わざわざ寮の部屋にやって来てはオレに小言やら文句やらを零すついでにコントローラーを握るのだ。このところは、横スクロールのシューティングゲームにハマっているようだ。あれで意外と上手い猪狩は、すでにオレが長年クリア出来なかったステージを難なく通過してしまっている。
「ゲーム?なんのゲームだ?」
「ボクとキミとで、どちらが先に目標を達成出来るかどうか競うんだ」
「ああ、そういう。いきなりどうしたんだ?」
「べつに、たまにはいいだろう」
猪狩がそういうことを言い出すのは珍しかったので、オレは隣に座るその横顔をまじまじと眺めた。今日はここまでにすると言った猪狩が、テレビゲームの電源を落とす。今日は、ということは、当然のようにまた続きをしに来るという意味だ。いつものことだった。
「まあ、いいけどさ。目標っていうのは、何なんだ?」
「それは、もちろん自分で決めるのさ。というより、万年二軍のキミには、そんなのひとつしかないだろう。愚問にも程がある」
「いや、ゲームって言う割にはめちゃくちゃ現実的だな……っていうか、オレはもう二軍じゃないだろ!定着は、まあ、確かに出来てないけど」
「そんな体たらくでボクと同じ立場になった気でいるなら、キミはお気楽でいいね」
「相変わらず嫌味なやつだな〜。……よし!オレの目標は、来シーズンの開幕スタメン!そんで、レギュラー定着!」
「ま、せいぜい、頑張ることだね」
「はいはい。一軍半はせいぜい頑張りますよ。で、猪狩。お前はどうするんだ?」
そう尋ねたところで、突然猪狩が首を回してこちらを見た。くるんとした大きな目でまじまじと見つめられると、なんとなくたじろいでしまう。
「告白させる」
「は?」
「ボクには、前から好きな人がいる。その相手から告白させて、交際をするのが目標だ」
突拍子もなければ脈絡もなく、おおよそ猪狩の口から出るとは思えない言葉に、オレは心の底からぽかんとして、何も返すことが出来なかった。この気持ちはなんだろう。言葉に出来ない。
「なんだ、その顔は」
「いや、猪狩がそういうこと言うの初めて聞いてびっくりしてるっていうか、そもそも好きな人いるんだっていうか、目標って野球のことじゃなくてもいいのかっていうか」
「べつに野球のことだなんて、一言も言ってないだろ」
「ていうか、猪狩。好きなひと、いるの?」
こくんと顎を引くその仕草は素直というよりは妙に幼く見えて、オレは謎のため息を長く吐き出してしまってからもう一度猪狩の顔を見る。猪狩はいたって平静、冷静、いつも通りだ。
「ボクは天才だから、凡人のキミとはかなりのハンディがあるからね。そうだな。もしもキミが勝ったら、キミの言うことをなんでもひとつ聞いてやろう」
そう言った猪狩はいかにも楽しそうに笑ってから、オレの部屋をあとにした。
そういうやり取りがあってからも、オレと猪狩の関係性は特に変わりなかった。一軍の厳しい練習のあと、猪狩と残って練習をしたり、休日になると部屋にやってくる猪狩とゲームをしたり、腹が減ったら一緒に飯を食いに行ったりした。
変わったことといったら、飯を食いに行くラーメンや屋台といった選択肢に、高級ディナーやレストランが加わったことだ。初めてそこへ連れて行かれたとき、オレはすぐにピンと来た。猪狩のやつ、例の目標を達成するために、オレを下見の材料に使っている。
きれいな夜景の見えるレストラン、こんなところで猪狩のような男と食事に来たら、きっと女の子は嬉しいのだろう。何しろ猪狩は学生時代からうんとモテていたし、プロ入りしてからは公式にファンクラブが作られて、バレンタインにはトラックで運ぶほどのチョコレートが届くという。ハンディどころか、最初から完敗しているような気もするが、猪狩に誘われてその気にならない女の子なんているんだろうか。勝負の期限は一年と言っていたが、今のところ猪狩から勝利報告は聞いていない。上等なスーツに身を包み、上品な仕草でナイフとフォークを使いこなす猪狩は、ムカつくほど様になっていて格好良かった。
そういう場所で食事をすることにも抵抗感が薄れて来た頃、今度は猪狩に水族館へ行かないかと誘われた。オレじゃなくて、その好きな女の子を誘えよとよほど口から出掛かったが、これもまたエスコートをするための下見なのだろうなと思い、仕方なく付き合ってやった。我ながら、お人好しもここまでくると極まれりだ。
男二人で水族館に行ってしまえば、あとは映画館だろうが遊園地だろうがどんどん気にならなくなって、猪狩に誘われるまま、オレはどんな場所にも付き合った。そのうち猪狩の好きな相手について無性に気になるようになったが、なるべく考えないことにした。だって、オレと下見に来た後は、猪狩は完璧なデートプランを組んでその子を誘うに違いないのだから。考えたって仕方のないこだ。
それにしても、あの猪狩が、野球以外にほとんど興味がなくて、暇さえあれば練習をしているような猪狩が、ここまで心を砕く相手とは、いったいどんな人なのだろう。
オレはいつの間にか、その相手がいっそ羨ましいような、一目でいいから見てやりたいような、そういう気持ちになっていた。なんだか、おかしな感じだ。こうなったら、何がなんでもこの勝負に勝って、頑なに相手については語らない猪狩から、詳細を聞き出してやるしかない。そういう邪な、ずいぶんと不純な動機の力も加わり、オレは着実にレギュラー入りへの実力を付けていった。
あるとき本当に笑ってしまったのは、バレンタインに猪狩からチョコレートをもらった時のことだ。練習台相手に、そこまでするか。というか、お前が渡すのかよ。そういえば、猪狩は相手に「告白させる」と言っていたから、自分が相手にチョコレートを渡すことでそのシチュエーションを想像しているのかもしれない。いや、ほんとうにそうなのか?もう、よく分からなくなって来た。いちばん分からなかったのは、女の子と付き合っている猪狩を想像すると、なんとなく腹が立ってくる自分自身だった。もはや何に対して怒っているのかも分からない。
そうしているうちに、春が来た。球春の到来だ。キャンプから好調だったオレは順当に実力を認められ、なんと開幕スタメンの座を射止めることに成功していた。あとは、レギュラーへの定着。そうすれば、オレは猪狩との勝負に勝てる。もはやなんの勝負かも分からなくなっていたが、とにかく勝てば、猪狩になんでも好きなことをお願い出来るのだ。オレの願いはもう、決まっていた。
「なあ、猪狩」
ある日の午後のことだ。いつものように猪狩と練習したあと、飯に来ていた。今日は高級レストランではなくて、オレの好きな高架下の屋台だ。がやがやと騒がしい、それでいてどこか独特の雰囲気が落ち着く店で、オレは口火を切った。
「前に言ってた、勝負のことだけど」
「勝負?」
「ほら、目標を先に達成した方が勝ちってやつだよ。お前が言い出したんだろ?」
「ああ。そのことか」
「オレ、レギュラーに定着して結構経つし、この勝負はオレの勝ちってことで、どうだ?」
「定着も何も、まだワンシーズンも終わってないだろう」
「そうだけどさ。お前の方こそどうなんだよ」
「ボク?まあ、想像にお任せするよ」
「ごまかすなよ」
「べつに、ごまかしてるわけじゃない」
煮え切らない猪狩の態度が、酒の回ったオレを妙に刺激する。苛々するというよりは、明確な焦りと、嫌悪だった。
「もうオレの勝ちってことにして、オレの言うことひとつ、聞いてくれよ」
「なんだ、急に情けない声を出して」
「オレ、嫌なんだよ、もう」
「なんのことだ」
「お前の好きな人ってやつの代わりにデートに行ったり、下見の材料にされるの、もう嫌だ」
「……」
「お前が、オレ以外の人と楽しく過ごしてるのを想像するだけで、ダメなんだ。なんでオレだけじゃないんだよ」
「……」
「猪狩。オレ、お前のことが好きだ」
言うつもりのなかった言葉は、心底から出た本音に違いなくて、情けなくてみっともなくても、オレはやめることが出来なかった。いつもだったら猪狩の方がとっくに酔っ払っている頃なのに、今日はオレばかりが酔っているようだ。猪狩の顔が、まともに見れない。
「おい。パワプロ」
「なんだよ。笑いたきゃ笑えよ」
「ハハハ」
「ほんとに笑うやつがあるかよ!」
「ボクの、勝ちだ」
ふてぶてしいほど自信に満ちた声でそう言って、猪狩は勝ち誇ったように笑った。
「ボクの勝ちだ。ハハハ、やっぱりね、こうなるとは思っていたが」
「……は?」
「最初に言ったろう。相手に告白させる、それがボクの条件だったはずだ」
「……はあ?」
「察しの悪いやつだな」
酔ったせいでもない赤い顔で、猪狩が言う。急激に回らなくなった頭でなんとか最適解を探そうとするが、ぽんこつのそれはほとんど使い物にならず、隣の猪狩の顔を眺めることしか出来ない。
「ボクが勝ったんだから、ボクのいうこと、聞いてもらうからな」
それはハンディとしてオレに与えられた条件ではなかったかと一瞬よぎったが、いかにも恥ずかしそうに小さな声で囁かれた猪狩の「お願い」に、酒で壊れたオレの涙腺が崩壊するのは、その数秒後のことだ。完敗だった。いや、この場合は、乾杯なのか?そういう馬鹿なことを考えて、オレは祝いのビールを追加で注文するのだった。さすがに頭からかぶったりはしないけど、今日くらい、ちょっとくらいなら、許してくれてもいいだろう。
了
ーーーーーーーー
脳死してる?っていうくらい同じ主守書いちゃう
だって女の子だもん
タイトルに「そのに」とあるのは、十年前にほぼ同じ主守を同タイトルで書いているからです
こわいです
納涼ですね、ふふ
そう言った隣の猪狩はオレの部屋でオレのゲームをしているところだったので、今やってるじゃんと言いたくなるのを飲み込んだ。猪狩は、子供の頃あまりゲームには触れてこなかったようで、最新作のものよりも昔のものを好んで遊びたがった。もちろんそれはオレのもので、わざわざ寮の部屋にやって来てはオレに小言やら文句やらを零すついでにコントローラーを握るのだ。このところは、横スクロールのシューティングゲームにハマっているようだ。あれで意外と上手い猪狩は、すでにオレが長年クリア出来なかったステージを難なく通過してしまっている。
「ゲーム?なんのゲームだ?」
「ボクとキミとで、どちらが先に目標を達成出来るかどうか競うんだ」
「ああ、そういう。いきなりどうしたんだ?」
「べつに、たまにはいいだろう」
猪狩がそういうことを言い出すのは珍しかったので、オレは隣に座るその横顔をまじまじと眺めた。今日はここまでにすると言った猪狩が、テレビゲームの電源を落とす。今日は、ということは、当然のようにまた続きをしに来るという意味だ。いつものことだった。
「まあ、いいけどさ。目標っていうのは、何なんだ?」
「それは、もちろん自分で決めるのさ。というより、万年二軍のキミには、そんなのひとつしかないだろう。愚問にも程がある」
「いや、ゲームって言う割にはめちゃくちゃ現実的だな……っていうか、オレはもう二軍じゃないだろ!定着は、まあ、確かに出来てないけど」
「そんな体たらくでボクと同じ立場になった気でいるなら、キミはお気楽でいいね」
「相変わらず嫌味なやつだな〜。……よし!オレの目標は、来シーズンの開幕スタメン!そんで、レギュラー定着!」
「ま、せいぜい、頑張ることだね」
「はいはい。一軍半はせいぜい頑張りますよ。で、猪狩。お前はどうするんだ?」
そう尋ねたところで、突然猪狩が首を回してこちらを見た。くるんとした大きな目でまじまじと見つめられると、なんとなくたじろいでしまう。
「告白させる」
「は?」
「ボクには、前から好きな人がいる。その相手から告白させて、交際をするのが目標だ」
突拍子もなければ脈絡もなく、おおよそ猪狩の口から出るとは思えない言葉に、オレは心の底からぽかんとして、何も返すことが出来なかった。この気持ちはなんだろう。言葉に出来ない。
「なんだ、その顔は」
「いや、猪狩がそういうこと言うの初めて聞いてびっくりしてるっていうか、そもそも好きな人いるんだっていうか、目標って野球のことじゃなくてもいいのかっていうか」
「べつに野球のことだなんて、一言も言ってないだろ」
「ていうか、猪狩。好きなひと、いるの?」
こくんと顎を引くその仕草は素直というよりは妙に幼く見えて、オレは謎のため息を長く吐き出してしまってからもう一度猪狩の顔を見る。猪狩はいたって平静、冷静、いつも通りだ。
「ボクは天才だから、凡人のキミとはかなりのハンディがあるからね。そうだな。もしもキミが勝ったら、キミの言うことをなんでもひとつ聞いてやろう」
そう言った猪狩はいかにも楽しそうに笑ってから、オレの部屋をあとにした。
そういうやり取りがあってからも、オレと猪狩の関係性は特に変わりなかった。一軍の厳しい練習のあと、猪狩と残って練習をしたり、休日になると部屋にやってくる猪狩とゲームをしたり、腹が減ったら一緒に飯を食いに行ったりした。
変わったことといったら、飯を食いに行くラーメンや屋台といった選択肢に、高級ディナーやレストランが加わったことだ。初めてそこへ連れて行かれたとき、オレはすぐにピンと来た。猪狩のやつ、例の目標を達成するために、オレを下見の材料に使っている。
きれいな夜景の見えるレストラン、こんなところで猪狩のような男と食事に来たら、きっと女の子は嬉しいのだろう。何しろ猪狩は学生時代からうんとモテていたし、プロ入りしてからは公式にファンクラブが作られて、バレンタインにはトラックで運ぶほどのチョコレートが届くという。ハンディどころか、最初から完敗しているような気もするが、猪狩に誘われてその気にならない女の子なんているんだろうか。勝負の期限は一年と言っていたが、今のところ猪狩から勝利報告は聞いていない。上等なスーツに身を包み、上品な仕草でナイフとフォークを使いこなす猪狩は、ムカつくほど様になっていて格好良かった。
そういう場所で食事をすることにも抵抗感が薄れて来た頃、今度は猪狩に水族館へ行かないかと誘われた。オレじゃなくて、その好きな女の子を誘えよとよほど口から出掛かったが、これもまたエスコートをするための下見なのだろうなと思い、仕方なく付き合ってやった。我ながら、お人好しもここまでくると極まれりだ。
男二人で水族館に行ってしまえば、あとは映画館だろうが遊園地だろうがどんどん気にならなくなって、猪狩に誘われるまま、オレはどんな場所にも付き合った。そのうち猪狩の好きな相手について無性に気になるようになったが、なるべく考えないことにした。だって、オレと下見に来た後は、猪狩は完璧なデートプランを組んでその子を誘うに違いないのだから。考えたって仕方のないこだ。
それにしても、あの猪狩が、野球以外にほとんど興味がなくて、暇さえあれば練習をしているような猪狩が、ここまで心を砕く相手とは、いったいどんな人なのだろう。
オレはいつの間にか、その相手がいっそ羨ましいような、一目でいいから見てやりたいような、そういう気持ちになっていた。なんだか、おかしな感じだ。こうなったら、何がなんでもこの勝負に勝って、頑なに相手については語らない猪狩から、詳細を聞き出してやるしかない。そういう邪な、ずいぶんと不純な動機の力も加わり、オレは着実にレギュラー入りへの実力を付けていった。
あるとき本当に笑ってしまったのは、バレンタインに猪狩からチョコレートをもらった時のことだ。練習台相手に、そこまでするか。というか、お前が渡すのかよ。そういえば、猪狩は相手に「告白させる」と言っていたから、自分が相手にチョコレートを渡すことでそのシチュエーションを想像しているのかもしれない。いや、ほんとうにそうなのか?もう、よく分からなくなって来た。いちばん分からなかったのは、女の子と付き合っている猪狩を想像すると、なんとなく腹が立ってくる自分自身だった。もはや何に対して怒っているのかも分からない。
そうしているうちに、春が来た。球春の到来だ。キャンプから好調だったオレは順当に実力を認められ、なんと開幕スタメンの座を射止めることに成功していた。あとは、レギュラーへの定着。そうすれば、オレは猪狩との勝負に勝てる。もはやなんの勝負かも分からなくなっていたが、とにかく勝てば、猪狩になんでも好きなことをお願い出来るのだ。オレの願いはもう、決まっていた。
「なあ、猪狩」
ある日の午後のことだ。いつものように猪狩と練習したあと、飯に来ていた。今日は高級レストランではなくて、オレの好きな高架下の屋台だ。がやがやと騒がしい、それでいてどこか独特の雰囲気が落ち着く店で、オレは口火を切った。
「前に言ってた、勝負のことだけど」
「勝負?」
「ほら、目標を先に達成した方が勝ちってやつだよ。お前が言い出したんだろ?」
「ああ。そのことか」
「オレ、レギュラーに定着して結構経つし、この勝負はオレの勝ちってことで、どうだ?」
「定着も何も、まだワンシーズンも終わってないだろう」
「そうだけどさ。お前の方こそどうなんだよ」
「ボク?まあ、想像にお任せするよ」
「ごまかすなよ」
「べつに、ごまかしてるわけじゃない」
煮え切らない猪狩の態度が、酒の回ったオレを妙に刺激する。苛々するというよりは、明確な焦りと、嫌悪だった。
「もうオレの勝ちってことにして、オレの言うことひとつ、聞いてくれよ」
「なんだ、急に情けない声を出して」
「オレ、嫌なんだよ、もう」
「なんのことだ」
「お前の好きな人ってやつの代わりにデートに行ったり、下見の材料にされるの、もう嫌だ」
「……」
「お前が、オレ以外の人と楽しく過ごしてるのを想像するだけで、ダメなんだ。なんでオレだけじゃないんだよ」
「……」
「猪狩。オレ、お前のことが好きだ」
言うつもりのなかった言葉は、心底から出た本音に違いなくて、情けなくてみっともなくても、オレはやめることが出来なかった。いつもだったら猪狩の方がとっくに酔っ払っている頃なのに、今日はオレばかりが酔っているようだ。猪狩の顔が、まともに見れない。
「おい。パワプロ」
「なんだよ。笑いたきゃ笑えよ」
「ハハハ」
「ほんとに笑うやつがあるかよ!」
「ボクの、勝ちだ」
ふてぶてしいほど自信に満ちた声でそう言って、猪狩は勝ち誇ったように笑った。
「ボクの勝ちだ。ハハハ、やっぱりね、こうなるとは思っていたが」
「……は?」
「最初に言ったろう。相手に告白させる、それがボクの条件だったはずだ」
「……はあ?」
「察しの悪いやつだな」
酔ったせいでもない赤い顔で、猪狩が言う。急激に回らなくなった頭でなんとか最適解を探そうとするが、ぽんこつのそれはほとんど使い物にならず、隣の猪狩の顔を眺めることしか出来ない。
「ボクが勝ったんだから、ボクのいうこと、聞いてもらうからな」
それはハンディとしてオレに与えられた条件ではなかったかと一瞬よぎったが、いかにも恥ずかしそうに小さな声で囁かれた猪狩の「お願い」に、酒で壊れたオレの涙腺が崩壊するのは、その数秒後のことだ。完敗だった。いや、この場合は、乾杯なのか?そういう馬鹿なことを考えて、オレは祝いのビールを追加で注文するのだった。さすがに頭からかぶったりはしないけど、今日くらい、ちょっとくらいなら、許してくれてもいいだろう。
了
ーーーーーーーー
脳死してる?っていうくらい同じ主守書いちゃう
だって女の子だもん
タイトルに「そのに」とあるのは、十年前にほぼ同じ主守を同タイトルで書いているからです
こわいです
納涼ですね、ふふ
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