答え合わせ
付き合うって、なんだろう。
隣を歩く男の話に相槌を打ちながら、友沢はぼんやりと考えていた。同級生であり、同じ部活動のチームメイトでもある男は、何がそんなに楽しいのか饒舌に話を続けている。実のところ友沢は全く話を聞いていなかったが、それでも男は普段と変わらない。その様子に焦れるというよりは怒りすら湧いてきて、友沢は自分の感情に戸惑った。こんな気持ちは今まで知らない。知らない感情は持て余すばかりで、消化不良を起こすだけだ。
好きだ、付き合ってほしい。いいよ。そんなやり取りが果たして一般的な交際のスタートに当たるのか否か、その判別すら友沢には難しい。何はともあれ、男の告白に頷いたことだけが、友沢にとって唯一の事実であった。
部活動の帰り道、どうやら今日は寄り道をしていかないようなので、もう間も無く別れ道に差し掛かるところだ。今日の練習は特別疲れたからさっさと帰って身体を休めたかったし、何より家には友沢の帰りを待つ幼い弟妹たちがいる。それなのにこの時間を名残惜しいと思うことが、友沢には不思議だった。
ポケットに突っ込んでいた手に力を込めて、ぎゅうと握りしめる。手を繋ぎたいなんて、どんな顔をして言えばいいのか分からなかった。だって付き合っているのに。付き合うって、なんだろう。今日もまた、言えなかった。分かれ道に差し掛かるこのタイミングで言えるわけもなくて、ポケットの中に突っ込んだ手をもう一度握りしめる。
「ねえ友沢。キスしてもいい?」
顔を上げた時には、ポケットの中の両手を引っ張り出されていて、男の手と繋がれていた。両手を取られ、そのまま男に引かれると、友沢の身体は簡単にそちらへ傾いた。不意打ちのそれに倒れそうになったところを、男が抱きしめる。自分の背中に男の手が回される頃、友沢はその状態をようやく自覚した。
「……これがお前の言う、キスってやつなのか?」
「違うけど!抱きしめたかったのもほんとだし」
語尾が小さくなっていって、その先は聞こえなかった。たぶん、友沢が考えていたことと同じようなことを言ったのだと思う。そう思うと口元は自然と緩んで、友沢は返事の代わりに自分の手を男の首に回した。外が暗くて良かったと思った。こんな顔を見られたら、明日からどんな顔をして会えばいいのか分からない。会えなくなるのは、困る。
「早くしろよ」
「友沢って、ムードとかさあ、そういうのないの?」
「もう待てない」
たぶん、男と友沢が唇を寄せたタイミングは全く同じだった。だから、歯をぶつけた。笑えばいいのか怒ればいいのか、あまりのことに友沢が反応出来ずにいるうちに、再び唇が重なっていた。我慢出来ないのを隠しもしないで、強く押し当てられただけの幼い口付けだった。熱い。それはすぐに離れたが、その瞬間にはまた重なっている。何度も繰り返しているうちに、友沢は頭がぼんやりして何も考えられなくなった。唇の端を男が舐めていったから、友沢は驚いて変な声が出た。その声に男が反応する。二人合わせて、熟れた林檎よりも顔が赤い。
「じゃあ、えっと、そろそろ帰ろっか」
「ああ」
これが付き合うということならば、いよいよ困ったことになったと、友沢は考えていた。
了
ーーーーーーーーーーー
主友を書いたら胸がドキドキザワザワしました。
好きなんだと思います
好きだ
隣を歩く男の話に相槌を打ちながら、友沢はぼんやりと考えていた。同級生であり、同じ部活動のチームメイトでもある男は、何がそんなに楽しいのか饒舌に話を続けている。実のところ友沢は全く話を聞いていなかったが、それでも男は普段と変わらない。その様子に焦れるというよりは怒りすら湧いてきて、友沢は自分の感情に戸惑った。こんな気持ちは今まで知らない。知らない感情は持て余すばかりで、消化不良を起こすだけだ。
好きだ、付き合ってほしい。いいよ。そんなやり取りが果たして一般的な交際のスタートに当たるのか否か、その判別すら友沢には難しい。何はともあれ、男の告白に頷いたことだけが、友沢にとって唯一の事実であった。
部活動の帰り道、どうやら今日は寄り道をしていかないようなので、もう間も無く別れ道に差し掛かるところだ。今日の練習は特別疲れたからさっさと帰って身体を休めたかったし、何より家には友沢の帰りを待つ幼い弟妹たちがいる。それなのにこの時間を名残惜しいと思うことが、友沢には不思議だった。
ポケットに突っ込んでいた手に力を込めて、ぎゅうと握りしめる。手を繋ぎたいなんて、どんな顔をして言えばいいのか分からなかった。だって付き合っているのに。付き合うって、なんだろう。今日もまた、言えなかった。分かれ道に差し掛かるこのタイミングで言えるわけもなくて、ポケットの中に突っ込んだ手をもう一度握りしめる。
「ねえ友沢。キスしてもいい?」
顔を上げた時には、ポケットの中の両手を引っ張り出されていて、男の手と繋がれていた。両手を取られ、そのまま男に引かれると、友沢の身体は簡単にそちらへ傾いた。不意打ちのそれに倒れそうになったところを、男が抱きしめる。自分の背中に男の手が回される頃、友沢はその状態をようやく自覚した。
「……これがお前の言う、キスってやつなのか?」
「違うけど!抱きしめたかったのもほんとだし」
語尾が小さくなっていって、その先は聞こえなかった。たぶん、友沢が考えていたことと同じようなことを言ったのだと思う。そう思うと口元は自然と緩んで、友沢は返事の代わりに自分の手を男の首に回した。外が暗くて良かったと思った。こんな顔を見られたら、明日からどんな顔をして会えばいいのか分からない。会えなくなるのは、困る。
「早くしろよ」
「友沢って、ムードとかさあ、そういうのないの?」
「もう待てない」
たぶん、男と友沢が唇を寄せたタイミングは全く同じだった。だから、歯をぶつけた。笑えばいいのか怒ればいいのか、あまりのことに友沢が反応出来ずにいるうちに、再び唇が重なっていた。我慢出来ないのを隠しもしないで、強く押し当てられただけの幼い口付けだった。熱い。それはすぐに離れたが、その瞬間にはまた重なっている。何度も繰り返しているうちに、友沢は頭がぼんやりして何も考えられなくなった。唇の端を男が舐めていったから、友沢は驚いて変な声が出た。その声に男が反応する。二人合わせて、熟れた林檎よりも顔が赤い。
「じゃあ、えっと、そろそろ帰ろっか」
「ああ」
これが付き合うということならば、いよいよ困ったことになったと、友沢は考えていた。
了
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主友を書いたら胸がドキドキザワザワしました。
好きなんだと思います
好きだ
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