ひとりでできるもん!
ひとりでできるもん! (主守)
家に帰ると、玄関に猪狩の靴があった。オレのように適当に脱ぎ散らかしたりせず、きちんと揃えてある様はいかにも猪狩の所作であった。合鍵を渡してあるので別にいつ来てもいいのだが、それにしても猪狩は気まぐれだ。確か、今日は誘いの連絡を入れたら断られたのではなかったっけ。だから他の友人と飲んで来た帰りなわけであるが、結果として二軒目には行ずに直帰したのは正解だったようだ。待たされたことにヘソを曲げる猪狩の顔は安易に想像が出来た。オレの誘いを初めに断ったのは自分の方であるにも関わらず、だ。猪狩のわがままは昔からであるので、オレはもうたいして気にもならない。
猪狩とは、これでもう結構な付き合いになる。高校生の頃から続くこの関係は、果たしてなんという名前を付ければ良いのやら。猪狩とは友人で、ライバルで、チームメイトで、いつの間にかそういう関係になっていて、そういう関係というのはつまり、そういう関係のことだ。淡白な猪狩は自分から求めるようなことはなかったが、オレからの誘いを断ることもまた、ないのだった。天才というのは、性欲もないものなのか。猪狩は昔から色恋に疎く、野球が恋人といった風情があった。猪狩とするときは、いつもオレから誘うのがお決まりのパターンであった。
「おーい、猪狩」
リビングの戸を開けると明かりは付いていたが、そこに猪狩の姿はなかった。洗面所にはいないようだったので、あとは寝室の方だろうか。時間も時間なので、寝ているのかもしれない。
プロ入り後、しばらくは寮暮らしだったが、オレは少し前から一人暮らしを始めたのだった。猪狩は相変わらずの実家暮らしであったので、たびたびオレの部屋にやって来るのだった。どうやらオレの様子を見て一人暮らしの気ままさに惹かれている節もあるようだったが、猪狩が一人暮らしをするなど言語道断である。一体何が起こるのか、想像するだけで恐ろしい。だったらもう一緒に住んでしまえばいいような気もするのだが、なんとなく言う機会を逃し続けて今日まで来ている。だって、同居の提案なんて、それはつまり同棲ということになる。恋人に向かって同棲を提案すること、それすなわち。
「猪狩」
やはり猪狩は寝室にいるのだった。戸を開けると、ベッドへ横になる猪狩が背を向けている。オレが声を掛けても全く気が付かないらしい。なんだか様子がおかしいと思ってオレは猪狩の方へ近付こうとして、足を止めた。背を向ける猪狩は、浅い息をついて時折鼻から抜けるような声を出しているのだった。それはまるで、喘ぎ声のような。さらに、もぞもぞと動く左手は、どうやら下半身へ伸ばされている。これは、まさか。まさか。
猪狩が、オレの部屋でオナニーしてる!!
声にならない叫びが頭の中を駆け巡る。猪狩は気付かない。オレが帰ってきたことにも、部屋に入ってきたことにも気が付かないほど、集中しているのだろうか。どうしたものか、呆然と立ち尽くしたまま、それでも視線は猪狩から逸らせない。猪狩は左利きだから、ナニも左でするんだなあ。そんな馬鹿なことを考えている。もはや思考停止だ。これは本当に現実だろうか。
しかも、猪狩が右手で掴んでいるのは、どうやらオレが寝巻きに着ているスウェットらしかった。脱ぎっぱなしでほかってあったそれを、猪狩は掴んだまま顔を埋めていた。それを認めた瞬間、オレは一気に顔に熱が集まって、火が出そうな思いであった。あれっていつから洗濯してないんだっけ、洗濯してないオレのスウェットをオカズにしている猪狩、もはや恥ずかしいのやら興奮しているのやら、めちゃくちゃだ。もう何も考えられない。だから、気が付いたら手が伸びていた。ジーンズのジッパーを下ろし、自らのものを手を伸ばす。そこは何もしていないのにすっかり立ち上がっていて、オレはそのまま上下にしごいた。それでも猪狩はまだ、気付かない。
オナニーしている猪狩、それを見て、オナニーしているオレ。全くの非日常、ある種の異様な状況にオレはどうしようもなく興奮していた。オレは変態だったのかもしれない。だが、恋人のあらぬ痴態を前にして、欲情しない男などいるのだろうか。
猪狩の浅い息遣いと、密やかな、それでいていやらしい音が響いていた。猪狩は先走りでねっとりと濡れるタチであったので、きっと今もそこはぬるぬるしていて気持ちがいいのだろう。そんなことを思うだけで、オレは今にも暴発してしまいそうだった。猪狩も、オナニーするんだな。性欲、あるんじゃん。オレのスウェットがオカズって、どうなの。猪狩、気持ちいいのか。
そんなことを考えながら、オレは一歩、また一歩と猪狩の方へ近付いていく。猪狩。猪狩。
「猪狩」
いつの間にか、声に出ていた。さすがに気が付いた猪狩が、勢い良く振り返って顔を上げる。その顔を見た瞬間、オレは限界まで高まっていた熱を一気に解き放っていた。
………
「猪狩」
「……」
「いーかーり」
「……」
「ごめんって。なあ。悪かったよ」
「……」
オナニーを見られた上、いきなり顔面にぶっかけられた猪狩は、あまりのことに初めは放心状態であったが、状況を理解した途端固まって一切動かなくなってしまった。お決まりのイヤミも小言も出てこない。これは大変だ、オレは慌ててタオルを引っ掴んで猪狩の顔を綺麗に拭いて、丁寧に謝罪をした上で話し掛けているのだが、猪狩は布団の中で丸まったまま出てこない。天の岩戸状態である。もうかれこれ十数分、膠着状態だ。
「猪狩」
「……」
「ごめんって、ほんと」
「それは何に対して謝っているんだ」
「あ、やっと喋った」
「……」
「猪狩、オナニーの邪魔してごめんな」
「キミは、本当にデリカシーがないな!」
がばり、布団から飛び出した猪狩は、怒っているようだったが、それにしてはあまりに迫力がない。いつもきりりと上がっている凛々しい眉は、ふにゃんと曲がっていた。
「ほんっとう、ごめん!」
「……」
「あれ、猪狩のもうおさまってる」
「バカ、触るな!」
目の前にあったので、猪狩の下着の上からそれを触ると、すっかり萎えてしまっているようだった。柔らかいそこを布の上から扱くと、猪狩はまた静かになってしまった。寸止めされた苦しさを、オレは同じ男としてイヤというほど理解するのだった。
「猪狩」
「……」
「猪狩…」
お詫びの気持ちも込めて、オレは猪狩に口付けた。ぴったりと唇を合わせ、そのまま舌を差し入れると、猪狩は素直に応じるのだった。キスをしながら、手は猪狩のものを揉みしだいている。柔らかかったそこはすぐに芯を持って固くなり、オレは猪狩のものを手の平で優しく扱いた。
「ごめんな。今度は一緒に、いっぱい気持ち良くなろうな」
「ん…」
いつにもなく素直に身を預けてきた猪狩が嬉しくて、オレは大きな声で言った。
「よし、まずは一発、猪狩のを抜いてやるからな!」
直後、ものすごい勢いでビンタが飛んできたのは、言うまでもない。夜はまだ、これからだ。
了
ーーーーーーーーー
趣味は丸出しにしていくものだ
久々にえっちなの書きました 主守〜
家に帰ると、玄関に猪狩の靴があった。オレのように適当に脱ぎ散らかしたりせず、きちんと揃えてある様はいかにも猪狩の所作であった。合鍵を渡してあるので別にいつ来てもいいのだが、それにしても猪狩は気まぐれだ。確か、今日は誘いの連絡を入れたら断られたのではなかったっけ。だから他の友人と飲んで来た帰りなわけであるが、結果として二軒目には行ずに直帰したのは正解だったようだ。待たされたことにヘソを曲げる猪狩の顔は安易に想像が出来た。オレの誘いを初めに断ったのは自分の方であるにも関わらず、だ。猪狩のわがままは昔からであるので、オレはもうたいして気にもならない。
猪狩とは、これでもう結構な付き合いになる。高校生の頃から続くこの関係は、果たしてなんという名前を付ければ良いのやら。猪狩とは友人で、ライバルで、チームメイトで、いつの間にかそういう関係になっていて、そういう関係というのはつまり、そういう関係のことだ。淡白な猪狩は自分から求めるようなことはなかったが、オレからの誘いを断ることもまた、ないのだった。天才というのは、性欲もないものなのか。猪狩は昔から色恋に疎く、野球が恋人といった風情があった。猪狩とするときは、いつもオレから誘うのがお決まりのパターンであった。
「おーい、猪狩」
リビングの戸を開けると明かりは付いていたが、そこに猪狩の姿はなかった。洗面所にはいないようだったので、あとは寝室の方だろうか。時間も時間なので、寝ているのかもしれない。
プロ入り後、しばらくは寮暮らしだったが、オレは少し前から一人暮らしを始めたのだった。猪狩は相変わらずの実家暮らしであったので、たびたびオレの部屋にやって来るのだった。どうやらオレの様子を見て一人暮らしの気ままさに惹かれている節もあるようだったが、猪狩が一人暮らしをするなど言語道断である。一体何が起こるのか、想像するだけで恐ろしい。だったらもう一緒に住んでしまえばいいような気もするのだが、なんとなく言う機会を逃し続けて今日まで来ている。だって、同居の提案なんて、それはつまり同棲ということになる。恋人に向かって同棲を提案すること、それすなわち。
「猪狩」
やはり猪狩は寝室にいるのだった。戸を開けると、ベッドへ横になる猪狩が背を向けている。オレが声を掛けても全く気が付かないらしい。なんだか様子がおかしいと思ってオレは猪狩の方へ近付こうとして、足を止めた。背を向ける猪狩は、浅い息をついて時折鼻から抜けるような声を出しているのだった。それはまるで、喘ぎ声のような。さらに、もぞもぞと動く左手は、どうやら下半身へ伸ばされている。これは、まさか。まさか。
猪狩が、オレの部屋でオナニーしてる!!
声にならない叫びが頭の中を駆け巡る。猪狩は気付かない。オレが帰ってきたことにも、部屋に入ってきたことにも気が付かないほど、集中しているのだろうか。どうしたものか、呆然と立ち尽くしたまま、それでも視線は猪狩から逸らせない。猪狩は左利きだから、ナニも左でするんだなあ。そんな馬鹿なことを考えている。もはや思考停止だ。これは本当に現実だろうか。
しかも、猪狩が右手で掴んでいるのは、どうやらオレが寝巻きに着ているスウェットらしかった。脱ぎっぱなしでほかってあったそれを、猪狩は掴んだまま顔を埋めていた。それを認めた瞬間、オレは一気に顔に熱が集まって、火が出そうな思いであった。あれっていつから洗濯してないんだっけ、洗濯してないオレのスウェットをオカズにしている猪狩、もはや恥ずかしいのやら興奮しているのやら、めちゃくちゃだ。もう何も考えられない。だから、気が付いたら手が伸びていた。ジーンズのジッパーを下ろし、自らのものを手を伸ばす。そこは何もしていないのにすっかり立ち上がっていて、オレはそのまま上下にしごいた。それでも猪狩はまだ、気付かない。
オナニーしている猪狩、それを見て、オナニーしているオレ。全くの非日常、ある種の異様な状況にオレはどうしようもなく興奮していた。オレは変態だったのかもしれない。だが、恋人のあらぬ痴態を前にして、欲情しない男などいるのだろうか。
猪狩の浅い息遣いと、密やかな、それでいていやらしい音が響いていた。猪狩は先走りでねっとりと濡れるタチであったので、きっと今もそこはぬるぬるしていて気持ちがいいのだろう。そんなことを思うだけで、オレは今にも暴発してしまいそうだった。猪狩も、オナニーするんだな。性欲、あるんじゃん。オレのスウェットがオカズって、どうなの。猪狩、気持ちいいのか。
そんなことを考えながら、オレは一歩、また一歩と猪狩の方へ近付いていく。猪狩。猪狩。
「猪狩」
いつの間にか、声に出ていた。さすがに気が付いた猪狩が、勢い良く振り返って顔を上げる。その顔を見た瞬間、オレは限界まで高まっていた熱を一気に解き放っていた。
………
「猪狩」
「……」
「いーかーり」
「……」
「ごめんって。なあ。悪かったよ」
「……」
オナニーを見られた上、いきなり顔面にぶっかけられた猪狩は、あまりのことに初めは放心状態であったが、状況を理解した途端固まって一切動かなくなってしまった。お決まりのイヤミも小言も出てこない。これは大変だ、オレは慌ててタオルを引っ掴んで猪狩の顔を綺麗に拭いて、丁寧に謝罪をした上で話し掛けているのだが、猪狩は布団の中で丸まったまま出てこない。天の岩戸状態である。もうかれこれ十数分、膠着状態だ。
「猪狩」
「……」
「ごめんって、ほんと」
「それは何に対して謝っているんだ」
「あ、やっと喋った」
「……」
「猪狩、オナニーの邪魔してごめんな」
「キミは、本当にデリカシーがないな!」
がばり、布団から飛び出した猪狩は、怒っているようだったが、それにしてはあまりに迫力がない。いつもきりりと上がっている凛々しい眉は、ふにゃんと曲がっていた。
「ほんっとう、ごめん!」
「……」
「あれ、猪狩のもうおさまってる」
「バカ、触るな!」
目の前にあったので、猪狩の下着の上からそれを触ると、すっかり萎えてしまっているようだった。柔らかいそこを布の上から扱くと、猪狩はまた静かになってしまった。寸止めされた苦しさを、オレは同じ男としてイヤというほど理解するのだった。
「猪狩」
「……」
「猪狩…」
お詫びの気持ちも込めて、オレは猪狩に口付けた。ぴったりと唇を合わせ、そのまま舌を差し入れると、猪狩は素直に応じるのだった。キスをしながら、手は猪狩のものを揉みしだいている。柔らかかったそこはすぐに芯を持って固くなり、オレは猪狩のものを手の平で優しく扱いた。
「ごめんな。今度は一緒に、いっぱい気持ち良くなろうな」
「ん…」
いつにもなく素直に身を預けてきた猪狩が嬉しくて、オレは大きな声で言った。
「よし、まずは一発、猪狩のを抜いてやるからな!」
直後、ものすごい勢いでビンタが飛んできたのは、言うまでもない。夜はまだ、これからだ。
了
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趣味は丸出しにしていくものだ
久々にえっちなの書きました 主守〜
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