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ぶつかる

ぶつかる(主守)

 ファーストキスはレモン味、まさかそこまで夢を見ていたわけではなかったが、これはないだろう。顔を上げたときにはもう向こうの唇が、唇というよりは歯が当たって、猪狩は顔を顰めた。痛い。唇が切れたのか、血が出たようだ。口の中に鉄の味が広がる。そんなところをそんな風に痛めた経験など皆無だったものだから、猪狩は静かな衝撃に固まっていたのだが、相手はそれでも構う様子はない。何故なら、気まずそうな表情をしながらも、再度猪狩の方へ顔を寄せて来たからだ。おい。言葉は声にならない。猪狩の声は音になる前に飲み込まれてしまった。
 今度は歯をぶつけることなく、パワプロの唇は猪狩のそれに重なった。ん、と声を上げそうになり、猪狩はその感触と己の身に起きている変化に羞恥を覚えて逃れようとするが、いつの間にか腰に回された腕が猪狩をがっちりと抱いていて、それを許さない。後ずさる様に一歩ずつ後退すると、ついに壁際まで来てしまった。それで猪狩はここが部室であることを思い出したが、それでもパワプロは猪狩を離さない。口付けは終わらない。息継ぎのためにほんの一瞬唇が離れて、その拍子に猪狩は力が抜けて倒れそうになるが、背は壁にもたれかかり、猪狩を抱くパワプロの腕がそれを支えた。ぐい、と引き寄せられたかと思ったら、今度は両手で顔を包み込むようにいだかれて、キスは続く。ん、ん、と短い声が溢れて落ちて、恥ずかしいのに我慢することも出来なくて、それどころか頭がぼんやりして来て、自分がどんな状態なのかそれすらも定かではなくなってきた。気持ちが良い。唇と唇が触れ合うだけでなぜこうも快感を覚えるのか、初めてキスを経験した猪狩には分からない。
 熱くて、二人分の境界線が曖昧になっていく感覚。力が抜ける、そう思ったとき、口の中にパワプロの舌が入って来て、猪狩はとうとう立っていられなくなった。ずるずると壁伝いに崩れ落ちて、床に座り込んでしまったが、それでもパワプロはやめなかった。パワプロは優しく猪狩を抱き起こし、覆い被さるようにして舌を差し入れた。猪狩が驚いている間にそれは口の中で好き勝手に動いていって、歯列を割り、舌先を絡め、上顎を舐めていったときには殊更高い声が出た。もう何がなんだか分からない。苦しくなって、しかしそれは向こうも同じなのか、少しだけ唇が離れて、それでもそのすぐ後にまた重なった。苦しいのに、それでもやめて欲しいとは思わなくて、猪狩は知らぬ間に自らの腕をパワプロの首に絡めていた。口を離されて、近距離で見つめ合う。そうして口の端を舐められるまで、猪狩は唾液が垂れていることにも気が付かなかった。互いに肩で息をしている。よほどの過酷なトレーニングをしたって、猪狩はこんなにも苦しくなったりしない。
 欲しい。そう思ったとき、猪狩は今日初めて、自らパワプロに口付けていた。その時、勢い余って再び歯をぶつけてしまい、猪狩は声を上げて笑った。







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主守っていいよね。
十年で百本書いたけど、自分まだ主守やれます。やらせてください。
全然勝手にやりま〜す✌️✌️

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