my dear friend
my dear friend(主守)
「ボクとキミは、友達なのか?」
単純に疑問に思ったのでそれを口に出して言ったところ、目の前の男は一瞬言葉に詰まった顔をして、そのあとでいつもの間抜け面に戻ってボクの肩を叩いた。
「猪狩ってさ〜。ほんときついっていうか、おまえが「そう」なのはもう知ってるけど、さすがにそれは酷いだろ」
オレだって、傷付くんだからな。半分に割った肉まんをぱくぱくと三口くらいで食べ終わった男は、指をぺろりと舐めた後でそう言った。ボクは渡されたその半分をしばらく眺めていたが、男が黙って見ているので、静かに口を付けた。美味しい。今しがたコンビニで買って来たばかりのそれは、ほこりと湯気を立てている。
部活動の練習帰り、帰路に着く途中いつの間にか立ち寄ることが恒例となっている公園だった。いつもは犬の散歩をしている人やジョギングをする人、同じく学校帰りの学生たちをちらほらと見かけるものだが、今日に限っては妙に閑散としている。季節外れの寒波がやって来たとかで、びゅうびゅうと吹きつける風が原因かもしれない。手の中のそれを温かいうちに食べ終えて、ポケットから取り出したハンカチで口元を拭う。ボクはいらないと言ったのに、隣の男が「友達だから半分やるよ」などと言い、こちらの意向を確認もせずに寄越してきたものだから、ただ疑問を口にしただけだった。
「えーじゃあ、なに。猪狩って、オレのこと友達だと思ってないの」
「そういうことになるな」
「えー!なんで!さすがにその言い草は酷いだろ!毎日一緒に練習して、寄り道して、そのあとお前の家でも練習して、あと、この前はオレんちに矢部くんと一緒に遊びに来てゲームもしたのに、それでも友達じゃないの?」
「寄り道はキミが勝手にしてるんだろう」
現にボクは早く帰りたかった。私設球場で練習の続きを、この前から取り掛かっている新たな決め球の練習を、投げ込みをしたかった。ボクの胸中など露も知らぬ男は、分かりやすく不貞腐れた顔をして唇を尖らせた。
「じゃあ、猪狩はオレと一緒にいても楽しくないってこと?」
「そんなことは言ってないだろう」
「だって、そうじゃんか。一緒にいて楽しかったら、それはもう友達なんじゃないの」
なんでそんな酷いこと言うの。泣き言のような湿っぽい声はいかにも悲しそうで、実際落ち込んでいるらしい男は、しょげて背中を丸めていた。その情けない姿にボクは無意識に息を吐いていて、それが余計に男を刺激したようで、もういいよ猪狩の馬鹿、と暴言を吐いた。バカはどちらだと言いたくなるのを堪えて、ボクは男を呼んだ。
「おい」
「……」
「パワプロ」
「なんだよ」
「こっちを向け」
馬鹿正直にこちらを向いたその顔に、ボクはそっと近付いて顔を寄せた。少しにも満たないその一瞬間。唇と唇が触れて、離れる。男は驚いたように目を丸くして、口を開けたり閉めたりしていた。なんだその顔は。思わず吹き出すと、男はわあわあと何事かを言い連ねた。ボクはつとめて無視をして、男に尋ねる。
「これも、キミのいうところの友達なのかい」
返事は返ってこなかった。その代わりに、男の腕が伸びてきて、ぎゅうと身体を抱き締められる。それは苦しいくらいだったから、ボクは抗議の意を込めて男の名前を呼んだ。それなのに男は全然離してくれなくて、その代わりに何度も何度もボクの名前を呼んだ。それにいちいち律儀に返事を返してやるボクもボクだったけれど、たまにはいいかと、ボクはその背に腕を回して目を閉じた。これを友達だと言うのなら、世話のないことだ。
了
ーーーーーーーーーー
友達って言われて、ムッてする守さん、かわいいね
主守ちゃんは友達で好敵手で親友で恋人で家族で運命
「ボクとキミは、友達なのか?」
単純に疑問に思ったのでそれを口に出して言ったところ、目の前の男は一瞬言葉に詰まった顔をして、そのあとでいつもの間抜け面に戻ってボクの肩を叩いた。
「猪狩ってさ〜。ほんときついっていうか、おまえが「そう」なのはもう知ってるけど、さすがにそれは酷いだろ」
オレだって、傷付くんだからな。半分に割った肉まんをぱくぱくと三口くらいで食べ終わった男は、指をぺろりと舐めた後でそう言った。ボクは渡されたその半分をしばらく眺めていたが、男が黙って見ているので、静かに口を付けた。美味しい。今しがたコンビニで買って来たばかりのそれは、ほこりと湯気を立てている。
部活動の練習帰り、帰路に着く途中いつの間にか立ち寄ることが恒例となっている公園だった。いつもは犬の散歩をしている人やジョギングをする人、同じく学校帰りの学生たちをちらほらと見かけるものだが、今日に限っては妙に閑散としている。季節外れの寒波がやって来たとかで、びゅうびゅうと吹きつける風が原因かもしれない。手の中のそれを温かいうちに食べ終えて、ポケットから取り出したハンカチで口元を拭う。ボクはいらないと言ったのに、隣の男が「友達だから半分やるよ」などと言い、こちらの意向を確認もせずに寄越してきたものだから、ただ疑問を口にしただけだった。
「えーじゃあ、なに。猪狩って、オレのこと友達だと思ってないの」
「そういうことになるな」
「えー!なんで!さすがにその言い草は酷いだろ!毎日一緒に練習して、寄り道して、そのあとお前の家でも練習して、あと、この前はオレんちに矢部くんと一緒に遊びに来てゲームもしたのに、それでも友達じゃないの?」
「寄り道はキミが勝手にしてるんだろう」
現にボクは早く帰りたかった。私設球場で練習の続きを、この前から取り掛かっている新たな決め球の練習を、投げ込みをしたかった。ボクの胸中など露も知らぬ男は、分かりやすく不貞腐れた顔をして唇を尖らせた。
「じゃあ、猪狩はオレと一緒にいても楽しくないってこと?」
「そんなことは言ってないだろう」
「だって、そうじゃんか。一緒にいて楽しかったら、それはもう友達なんじゃないの」
なんでそんな酷いこと言うの。泣き言のような湿っぽい声はいかにも悲しそうで、実際落ち込んでいるらしい男は、しょげて背中を丸めていた。その情けない姿にボクは無意識に息を吐いていて、それが余計に男を刺激したようで、もういいよ猪狩の馬鹿、と暴言を吐いた。バカはどちらだと言いたくなるのを堪えて、ボクは男を呼んだ。
「おい」
「……」
「パワプロ」
「なんだよ」
「こっちを向け」
馬鹿正直にこちらを向いたその顔に、ボクはそっと近付いて顔を寄せた。少しにも満たないその一瞬間。唇と唇が触れて、離れる。男は驚いたように目を丸くして、口を開けたり閉めたりしていた。なんだその顔は。思わず吹き出すと、男はわあわあと何事かを言い連ねた。ボクはつとめて無視をして、男に尋ねる。
「これも、キミのいうところの友達なのかい」
返事は返ってこなかった。その代わりに、男の腕が伸びてきて、ぎゅうと身体を抱き締められる。それは苦しいくらいだったから、ボクは抗議の意を込めて男の名前を呼んだ。それなのに男は全然離してくれなくて、その代わりに何度も何度もボクの名前を呼んだ。それにいちいち律儀に返事を返してやるボクもボクだったけれど、たまにはいいかと、ボクはその背に腕を回して目を閉じた。これを友達だと言うのなら、世話のないことだ。
了
ーーーーーーーーーー
友達って言われて、ムッてする守さん、かわいいね
主守ちゃんは友達で好敵手で親友で恋人で家族で運命
PR

