忍者ブログ

デジャ・ビュ

デジャ・ビュ

 耳をつんざくような大歓声、照り付ける太陽光、降り注ぐすべてが熱狂と興奮に満ちていた。その真ん中に立つのは自分だ。マウンド、ここが一番高い場所。
 夏のマウンドは信じられないほど熱かった。甲子園の切符を賭けた地方大会決勝戦。ロジンを掴み、前を見る。けぶる土煙、蜃気楼のように立ち込めるその向こうには、今までに何度も見てきた男が立っている。見慣れた赤いユニフォーム姿、この状況でも集中力が途切れる様子はまるでない。相手にとって不足なし。唇の端を舐めるのは、勝負に夢中になっているときの猪狩の癖だった。
 キャッチャーを務める弟のサインは先程と変わらない。首を振る。もう一度同じ動作を繰り返してから頷いて、大きく振りかぶった。伸びのあるストレートは、いま自分が投げることの出来る最高のものだ。男の振ったバットは空を切り、ミットに収まった白球に思わず拳を握る。これでフルカウント。間違いなく、勝負は次で決するだろう。
 ロジンを拾うと、不思議な感覚が猪狩を襲った。弱小高にも関わらずここまで勝ち上がってきたその男と甲子園の椅子を取り合うのは、これが初めてだ。それでも、猪狩には既視感があった。何度もこんなことを繰り返している気がする。思い出されはしない記憶の端にはいつも男の姿があった。
 何度目でも構わない、何度でも自分が勝つだけだ。打席に立つ男が笑っているような気がして、猪狩は唇の端を持ち上げた。さあ、最高の勝負をしようじゃないか。





ーーーーーーーーーー
たまに野球してる話書くとそういえばパップロって野球のゲームだよって気付きますね

拍手

PR

カレンダー

03 2026/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

最新記事

ブログ内検索

忍者アナライズ