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夏とタピオカ

夏とタピオカ(主守)

 甘い。それが、この飲み物に対する感想であった。隣で同じものを飲んでいるパワプロが言うには、現在若者を中心に大変流行している飲み物だそうだ。なんでそんなものをこいつと一緒に、それもわざわざ並んでまで飲んでいるのか、よく分からない。
 それでも、誘われるまま付いて行ってしまうのは、知らないものに対する好奇心、そしていつだって能天気すぎるパワプロの笑顔のせいであった。猪狩、行こうぜ。何にも考えていないこいつは、いつもそんな風にボクに声を掛ける。こちらの都合も機嫌も全然関係なさそうに、パワプロは笑ってボクを呼ぶのだ。それになんだかんだと小言をこぼしながらも付き合ってしまうのが、このところのお決まりだった。
 ついこの間は、ハンバーガー。その次はラーメン。クレープというものを食べたこともあった。次々と提案されるそれに、次は一体何を食べに行くのか、内心で期待をするようになってしまっていることは断じて秘密だ。これもこれも、パワプロが悪い。そういうことにしておく。
「これがいま大流行中のタピオカドリンクか」
「甘すぎるぞ」
「確かに。でも、このモチモチした何かは美味いな」
「キミね。何か、って、それこそがタピオカという代物じゃないのかい」
「ていうか、タピオカって、なに?」
「キャッサバの根茎から製造したデンプンのことだ」
「え、キャッサバってなに?」
「……」
 尋ねておきながら、パワプロはさして気にした様子もなく無邪気に笑っている。ボクは黙って手元のドリンクを吸い上げた。
「猪狩って、変なことは知ってるんだな」
「変なことって、なんだ」
 他愛のない会話。それなのに、不思議と心地良いのはなぜだろう。気を使う必要がないからだろうか。思い返せば、部活動の入部の際に初めて会ったときから、ボクはこいつに対して気を使ったことがない。自分の好きなように振る舞うこと、それはいつも通りのボクであったが、それに対して真正面からぶつかって来るやつがいるのは、いつも通りではなかった。パワプロは、不思議なやつだった。
「でも猪狩、甘いの好きだろ?」
「キライじゃない」
「今度、猪狩の好きなロールケーキの店、教えてよ」
「なんで知ってるんだ」
 パワプロは笑うばかりだ。おそらく、進辺りがパワプロに話したんだろう。弟は、自分と同じく甘いものが好物だった。
「なあ。次はどこ行こっか」
 パワプロは笑っている。知らぬ顔で飲み干したタピオカドリンクは、やっぱりとても甘かった。



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タピオカて。細かいことはお気になさらず
主人公と守さんには、いろんなところに行っていろんな美味しいものをたくさん食べてほしい

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