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未必の故意

未必の故意

「なあ、猪狩って好きな人いる?」
「いるよ」
「えっ!?」
 思いがけない返事はオレを驚かせるのに十分すぎるほどで、思わず口に咥えていたアイスを落としそうになった。呆れたようにこちらを見る猪狩の顔はいつも通りだったが、もちろんオレはそれどころではなかった。アイスでベタベタになった手と口をタオルで拭いてから、オレは隣を歩く猪狩の顔を覗き込む。あからさまに嫌そうな表情を見せた猪狩が、オレから一歩分距離を取る。食べ終わったアイスのゴミを鞄に入れてから、オレは早足で追い付いた。部活動を引退したオレたちは、以前よりもずいぶん帰りが早い。夏過ぎて日が落ちるのも早くなったが、コンビニに寄り道してからゆっくり歩いていても、辺りはまだ明るかった。
「えー、なに、誰、教えろよ猪狩」
「なぜだ」
「なぜってそりゃ……だって、お前、マジかー!今までこの手の話一切無視だったのに」
 修学旅行で寝る前にみんなで話したこととか、部室でクラスの誰々がかわいいとか誰と誰が付き合ってるとか告白したとか、猪狩はその手の話題に一度も加わらず、知らん顔していた。だから、まさか返事にオレは色めき立った。
 確かに最近の猪狩は前よりも雰囲気が柔らかくなったような、嫌味も言うけどそれと同じだけ笑うようになったとか、そういうことを思ったから、なんとなく聞いてみたんだけど。返答を求めていたというよりは、半ば独り言のような質問だったのだ。だから、ここ最近でいちばん驚いた。
「猪狩、好きな人いるのかー」
「いたら悪いかい」
「なんでそう突っかかるんだよ。悪くないよ。ちょっとびっくりしただけ」
 何がなるほどなのか、なるほどねと何度も呟いたオレは、腕組みをして考える。猪狩とは高校に入ってからの付き合いではあるが、それでも野球部を通してほとんど毎日のように顔を見ていた。野球のことばかりではあったが、それでもいろんな話をしたし、多くの時間を共に過ごして来たつもりだ。現に今も、引退してからもわざわざこうして一緒に帰っている。癖と言ったらおかしな話だが、オレは高校三年間で猪狩と過ごすことが当たり前になってしまっていた。
「いつから好きなの?」
「高校入学してすぐ」
「へええ」
 驚きの連続だ。猪狩がオレの質問に素直に答えることも、そんなことを考えていたのも、ぜんぶぜんぶ、びっくりだ。高校入学ということは、相手はどうやら同じ学校の生徒らしい。まさか先生ということはあるまい。いや、どうだろう。オレは、猪狩のことをなんにも知らない。
「うん、オレ、応援するよ!」
「……」
「猪狩、好きな人と付き合えるようになるといいな」
「本当にそう思うかい」
「当たり前じゃんか!」
 なに水臭いこと言ってんだよ!と肩に腕を回すと、静かにそれをほどいてから猪狩はまた歩き始めた。つれない奴だ。口を開こうとしたところで、猪狩が振り返る。
「よろしく頼むよ」
「うん?」
「さっき、応援すると言っただろう」
「うん!もちろん!」
 それを聞いた猪狩は笑っていたから、オレも同じように笑って、もう一度頷いた。

未必の恋



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主守じゃなかったらラストにどうしようもない一文足してたけど、主守ですので
主守は一生一緒にハッピーエンド
かわいいね

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