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溶けるアイスクリーム

溶けるアイスクリーム (主守)

「キミって、本当にバカなんだな」
 斜向かい、二段重ねになったアイスクリームを食べている猪狩がそう言った。言いながら、アイスを食べる手はもちろん止めない。
「せめて、もう少し意義のある発言をしたらどうだい」
「オレにとっては、意義どころか超重要なことなんだけど」
 オレがむくれてみせても、猪狩はどこ吹く風である。二人で映画を見た帰り、猪狩は大層機嫌が良さそうだった。だから軽口ついでにちょっと尋ねてみただけだ。猪狩って、ほんとにオレのこと好きなの?
「このボクが、ここまでしてやってるんだぞ」
「アイス食べてるだけだろ」
「そういうことじゃない」
 猪狩の好きな、バニラとストロベリーのアイスクリーム。早く食べないと溶けてしまうのに、猪狩はいつもゆっくり食べる。オレはもう、とっくに食べ終わってしまったのに。
 少し伸びた前髪をかきあげながら、猪狩がこちらを見る。そんな仕草すらいちいち様になっていて、格好良いなあなんて見惚れてしまうオレは、確かに猪狩の言う通り馬鹿には違いなかった。仕方ない、猪狩は格好良いのだ。
「このボクが、今日はトレーニングよりもキミを優先して付き合ってやってるんだぞ」
「いや、そもそもあの映画見たいって言ったの猪狩じゃん」
「そうだったかな」
 しらじらしく言った猪狩が笑っている。やっぱり、今日は本当に機嫌が良さそうだ。何か良いことでもあったんだろうか。それをそのまま尋ねると、猪狩はどうしようもないものを見るような目でこちらを見返すのだった。
「どうしようもないな、キミは」
「何がだよ。猪狩がやけに楽しそうだから、なんかいいことあったのかって聞いただけだろ」
「そんなの、キミと一緒にいるからに決まっているだろ」
 アイスを舐めながら、猪狩はなんでもないように言う。コーンの部分に辿り着いた猪狩が、それを美味そうに齧っているのをぼんやりと見ながら、オレはようやくその言葉の意味を理解して、一気に顔に熱が集まった。
「オレ、もう一個食べようかな」
「腹を壊すぞ」
「じゃあ、それ一口ちょうだい」
「あっ、おい!」
 食べるのが遅い猪狩のせいで、アイスはすっかり溶けてしまっている。それは今まで食べたどんなアイスよりも美味しくて、オレはもう笑うしかなかった。つられて笑った猪狩の顔は、溶けたアイスクリームよりも甘かった。




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めちゃくちゃイチャイチャしてる。主守だから。

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