話がちがうじゃん
子供の頃、リトルリーグで一緒に野球をしていた女の子がいた。すごくかわいくて、茶色の短い髪がとてもよく似合っていた。かわいいのに負けず嫌いで、ずっと年上の上級生に打ち負かされるたびに本気で悔しがって泣いていたのをよく覚えている。すぐに涙を拭いて練習を始める姿は、子供心にも心の奥深くに印象付いて、今でも忘れない。
それから間もなくして別のチームに行くことになったその子とはそれきりになってしまったけど、いつかまた一緒に野球をしようね、そのときは絶対に負けないよなんて、指切りしながら笑い合った。そんな子供の頃に交わしたかわいらしい約束と、どこかでまたあの子に会える日が来ることを信じて、オレは今日まで野球をして来た。のに。
「話がちがうじゃん!」
「キミはまだその話をしているのか」
暇人は時間があっていいねときれいな顔で笑う隣の男こそ、オレが約束した、子供の頃の思い出の君であった。そんなことって、あるだろうか。猪狩とは高校の入学式の日に再会した。男であることはもちろんすぐに分かったが、あの日の面影も確かに残っていて、胸がときめいてしまったのもまた、事実。
「キミが勝手にボクのことを女だと勘違いしてたんだろ」
「だって、すごいかわいかった!し……」
「それは、どうも」
「タオルとか、水筒とか、持ってる物もみんなかわいくなかった?オレ、すげえ覚えてるんだけど」
「母の趣味だ。あの頃の母は、特にかわいらしいものが好きだったから。髪を伸ばしていた弟の髪は、結われていたぞ」
「そうなんだ……」
再会した猪狩に文句を言いながら帰路を共にするのも、これまた恒例になっていた。猪狩がチームを移ったのは弟と野球を一緒にするためだったらしく、去年までは中学でも兄弟でバッテリーを組んでいたらしい。来年は弟もあかつきに入学予定とのこと、来年の今頃にはまた、猪狩と弟の兄弟バッテリーが見れることだろう。
「それで?子供の頃からの約束が叶った感想は?」
ふてぶてしい顔で笑う猪狩の顔があんまり嫌味ったらしいもんだから、オレは手を伸ばしてその鼻先を摘んでやった。へへ、ざまあみろ、変な顔。
「なにするんだ!」
猪狩は怒っているが、オレは全然、それどころではないのだ。だって、思い出の中のあの子より、いま隣を歩いている猪狩の方がずっとかわいいなんて、そんなこと。一体全体どうしたらそんなことが言えるっていうんだ!
「キミって、しつこいんだな」
そうだよ、今更気付いたか。オレは普通に、女の子が好きだったのに。それなのにお前のせいで、女とか男とか関係なくて、実は猪狩だから好きだったなんて、そんなことに気付いてしまったんだ。あまりにも酷で、あまりにも話が違う。
「面倒だから、もう機嫌を直せ。今日も家で練習するぞ」
そんなかわいい顔で笑うなんて、本当に、本当に、話がちがう!
了
ーーーーーーーーーーーーー
妄想乙!でもたまにはこんなのもよくない?
主守はなんでもいい。
それから間もなくして別のチームに行くことになったその子とはそれきりになってしまったけど、いつかまた一緒に野球をしようね、そのときは絶対に負けないよなんて、指切りしながら笑い合った。そんな子供の頃に交わしたかわいらしい約束と、どこかでまたあの子に会える日が来ることを信じて、オレは今日まで野球をして来た。のに。
「話がちがうじゃん!」
「キミはまだその話をしているのか」
暇人は時間があっていいねときれいな顔で笑う隣の男こそ、オレが約束した、子供の頃の思い出の君であった。そんなことって、あるだろうか。猪狩とは高校の入学式の日に再会した。男であることはもちろんすぐに分かったが、あの日の面影も確かに残っていて、胸がときめいてしまったのもまた、事実。
「キミが勝手にボクのことを女だと勘違いしてたんだろ」
「だって、すごいかわいかった!し……」
「それは、どうも」
「タオルとか、水筒とか、持ってる物もみんなかわいくなかった?オレ、すげえ覚えてるんだけど」
「母の趣味だ。あの頃の母は、特にかわいらしいものが好きだったから。髪を伸ばしていた弟の髪は、結われていたぞ」
「そうなんだ……」
再会した猪狩に文句を言いながら帰路を共にするのも、これまた恒例になっていた。猪狩がチームを移ったのは弟と野球を一緒にするためだったらしく、去年までは中学でも兄弟でバッテリーを組んでいたらしい。来年は弟もあかつきに入学予定とのこと、来年の今頃にはまた、猪狩と弟の兄弟バッテリーが見れることだろう。
「それで?子供の頃からの約束が叶った感想は?」
ふてぶてしい顔で笑う猪狩の顔があんまり嫌味ったらしいもんだから、オレは手を伸ばしてその鼻先を摘んでやった。へへ、ざまあみろ、変な顔。
「なにするんだ!」
猪狩は怒っているが、オレは全然、それどころではないのだ。だって、思い出の中のあの子より、いま隣を歩いている猪狩の方がずっとかわいいなんて、そんなこと。一体全体どうしたらそんなことが言えるっていうんだ!
「キミって、しつこいんだな」
そうだよ、今更気付いたか。オレは普通に、女の子が好きだったのに。それなのにお前のせいで、女とか男とか関係なくて、実は猪狩だから好きだったなんて、そんなことに気付いてしまったんだ。あまりにも酷で、あまりにも話が違う。
「面倒だから、もう機嫌を直せ。今日も家で練習するぞ」
そんなかわいい顔で笑うなんて、本当に、本当に、話がちがう!
了
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妄想乙!でもたまにはこんなのもよくない?
主守はなんでもいい。
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