lovin' you
lovin' you
「キミの好きなものを当ててやろう」
「なんだよ、唐突だな」
休日、さっきまでグラブの手入れをしていた猪狩はいつの間にそれを終えたのか、気が付いたら後ろに立っていた。ゲームのコントローラーを持ったまま、オレは少しだけ首を回して猪狩を見た。どうやら機嫌が良いらしい。いつもなら、オフでもトレーニングを怠るなとか、ゲームをしながらごろごろするなとか、お小言が飛んでくるのに。
「そうだな。野球」
「いや、そりゃ好きだけど。ていうか猪狩、急にどうしたんだ?」
「ラーメン」
「もしかして、飯行くっていうといつもラーメンだから怒ってる?」
「ユニフォーム」
「それは好きっていうかなんていうか。私服、いや、もうこれ以外の格好が落ち着かないんだよ」
高校までは甲子園行きの切符を争うライバル同士、プロ入り後はチームメイトになったその男は、今にも鼻唄を歌い出しそうなほどの上機嫌で言い切った。
「ボク」
「いや……まあ、好きだけどさ」
「なんだその歯切れの悪い返事は」
そう言いながらも猪狩は不敵に微笑んでからこちらにのしかかってくる。寝転びながらゲームをしていたオレは猪狩に押し潰されて、いつの間にかテレビにはゲームオーバーの文字が表示されていた。根負けして、やれやれとコントローラーを手放す。空いた手を猪狩の背に回し、ころりと転がしたらあっという間に形勢逆転だ。腕の中、猪狩は楽しくて仕方ないと言った様子で笑っている。
「猪狩、もしかして酔ってる?」
「そんなわけないだろう。こんな真っ昼間から」
「じゃあ、どうしたの?」
「キミが昨日言った」
「オレが?」
聞き返すと、むっとしたらしい猪狩は眉間に皺を寄せたが、そこへ唇を押し当てると、すぐに元に戻った。首に回る猪狩の腕が、もっと寄越せと催促している。仰せのままに何度か唇を寄せたが、いかにも物足りないという顔をするものだから、物欲しそうにしているそこへゆっくりと唇を重ね合わせた。持ち上がった瞼の下、猪狩の瞳にはオレだけが映っている。
「オレ、昨日何言った?」
「覚えてないならいいよ」
嘘だ。本当は何を言ったかよく覚えているし、それで猪狩がこんな風になるなんて思いもしなくて、今更恥ずかしくなっている。
「なに考えてるんだ」
「お前のことだよ」
笑った猪狩がかわいくて、オレはもう一度だけ腕の中の宝物にキスをした。
了
ーーーーーーー
たまにはもう、こんなのも良いでしょう
一生ハッピー
「キミの好きなものを当ててやろう」
「なんだよ、唐突だな」
休日、さっきまでグラブの手入れをしていた猪狩はいつの間にそれを終えたのか、気が付いたら後ろに立っていた。ゲームのコントローラーを持ったまま、オレは少しだけ首を回して猪狩を見た。どうやら機嫌が良いらしい。いつもなら、オフでもトレーニングを怠るなとか、ゲームをしながらごろごろするなとか、お小言が飛んでくるのに。
「そうだな。野球」
「いや、そりゃ好きだけど。ていうか猪狩、急にどうしたんだ?」
「ラーメン」
「もしかして、飯行くっていうといつもラーメンだから怒ってる?」
「ユニフォーム」
「それは好きっていうかなんていうか。私服、いや、もうこれ以外の格好が落ち着かないんだよ」
高校までは甲子園行きの切符を争うライバル同士、プロ入り後はチームメイトになったその男は、今にも鼻唄を歌い出しそうなほどの上機嫌で言い切った。
「ボク」
「いや……まあ、好きだけどさ」
「なんだその歯切れの悪い返事は」
そう言いながらも猪狩は不敵に微笑んでからこちらにのしかかってくる。寝転びながらゲームをしていたオレは猪狩に押し潰されて、いつの間にかテレビにはゲームオーバーの文字が表示されていた。根負けして、やれやれとコントローラーを手放す。空いた手を猪狩の背に回し、ころりと転がしたらあっという間に形勢逆転だ。腕の中、猪狩は楽しくて仕方ないと言った様子で笑っている。
「猪狩、もしかして酔ってる?」
「そんなわけないだろう。こんな真っ昼間から」
「じゃあ、どうしたの?」
「キミが昨日言った」
「オレが?」
聞き返すと、むっとしたらしい猪狩は眉間に皺を寄せたが、そこへ唇を押し当てると、すぐに元に戻った。首に回る猪狩の腕が、もっと寄越せと催促している。仰せのままに何度か唇を寄せたが、いかにも物足りないという顔をするものだから、物欲しそうにしているそこへゆっくりと唇を重ね合わせた。持ち上がった瞼の下、猪狩の瞳にはオレだけが映っている。
「オレ、昨日何言った?」
「覚えてないならいいよ」
嘘だ。本当は何を言ったかよく覚えているし、それで猪狩がこんな風になるなんて思いもしなくて、今更恥ずかしくなっている。
「なに考えてるんだ」
「お前のことだよ」
笑った猪狩がかわいくて、オレはもう一度だけ腕の中の宝物にキスをした。
了
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たまにはもう、こんなのも良いでしょう
一生ハッピー
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