かわいいね
かわいいね
女の子と付き合っていた学生の頃、その言葉をよく使った。かわいいね。言われた女の子たちは決まって頬を赤らめて、嬉しいと口に出して言う子もいれば、恥ずかしそうに俯いてしまう子もいた。それを見て、自分は同じ言葉を繰り返す。かわいいね。
そういう過去の出来事を、進は隣にいる先輩を見ながら思い出していた。学生の頃は告白されるまま女の子と付き合っていたが、いま自分が付き合っているのは、同じ球団に所属するプロ野球選手の先輩であり、兄の同級生でもあり、つまりどこからどう見ても男だった。
付き合う理由は、以前と変わらない。向こうが告白して来たから、進はそれに頷いたまで。昔から変わらない自身の主体性のなさに思わず笑ってしまうと、こちらを見ていたらしい彼は何度か瞬きを繰り返してから、視線を彷徨わせた。ここは街中だ、知っている人でも見つけて気まずくなったのだろうか。そういう進の仕草に気付いた彼は何事か口にしたが、人混み、雑踏、店頭から流れる広告、あらゆる雑音にかき消されて、進の耳までは届かなかった。
「どうかしましたか?」
「うん、いや、進くんって、笑った顔がほんとうにかわいいね」
信号が青に変わった。スクランブル交差点になっているそこは、多くの人が一斉に歩き出すことで雑音がさらに増す。それにも関わらずその音は妙に耳に残って、進の胸の内に沈澱していった。かわいいね。自分が女の子たちにそう言っていたのは、そう言えば相手が喜ぶことを知っていたからだ。先輩も、同じ気持ちで言っているのだろうか。
「進くん?」
呼ぶ声に振り返って、進はその手を取った。あ、という声は雑踏に溶けて、進は彼がかわいいと言った顔でにっこりと微笑んでみせた。
了
ーーーーーーーーー
私の書く進は性格が悪い!大変申し訳ございません。進くん大好きです。
女の子と付き合っていた学生の頃、その言葉をよく使った。かわいいね。言われた女の子たちは決まって頬を赤らめて、嬉しいと口に出して言う子もいれば、恥ずかしそうに俯いてしまう子もいた。それを見て、自分は同じ言葉を繰り返す。かわいいね。
そういう過去の出来事を、進は隣にいる先輩を見ながら思い出していた。学生の頃は告白されるまま女の子と付き合っていたが、いま自分が付き合っているのは、同じ球団に所属するプロ野球選手の先輩であり、兄の同級生でもあり、つまりどこからどう見ても男だった。
付き合う理由は、以前と変わらない。向こうが告白して来たから、進はそれに頷いたまで。昔から変わらない自身の主体性のなさに思わず笑ってしまうと、こちらを見ていたらしい彼は何度か瞬きを繰り返してから、視線を彷徨わせた。ここは街中だ、知っている人でも見つけて気まずくなったのだろうか。そういう進の仕草に気付いた彼は何事か口にしたが、人混み、雑踏、店頭から流れる広告、あらゆる雑音にかき消されて、進の耳までは届かなかった。
「どうかしましたか?」
「うん、いや、進くんって、笑った顔がほんとうにかわいいね」
信号が青に変わった。スクランブル交差点になっているそこは、多くの人が一斉に歩き出すことで雑音がさらに増す。それにも関わらずその音は妙に耳に残って、進の胸の内に沈澱していった。かわいいね。自分が女の子たちにそう言っていたのは、そう言えば相手が喜ぶことを知っていたからだ。先輩も、同じ気持ちで言っているのだろうか。
「進くん?」
呼ぶ声に振り返って、進はその手を取った。あ、という声は雑踏に溶けて、進は彼がかわいいと言った顔でにっこりと微笑んでみせた。
了
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私の書く進は性格が悪い!大変申し訳ございません。進くん大好きです。
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