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そんなことあるわけないのにね

「ねえ、パワプロさん。もし僕がいなくなったら、どうしますか?」
「えー、なにそれ」
 休日の朝。二人揃って寝坊して、二度寝したり微睡んだり、布団の中でごろごろしながら贅沢な時間を楽しんでいるひととき。こちらを見上げるように見る進くんを捕まえて、腕の中に閉じ込める。そのまま顔を埋めると、髪がくすぐったいのか、彼はくすくすと笑っている。
「なんでそんなこと言うのー」
「もしもの話ですよ」
「進くんがいなくなったらイヤだから、この話はもうおしまい」
 くるりと大きな目が、こちらを見る。
「たとえばの話ですよ。僕が病気とか、なんでもいいんですけど動けなくなって、そのときにパワプロさん好みの、かわいくて、きれいな女の人に好きですって言われたら、どうしますか?」
「なーに、それ!」
 腕の中の彼をぎゅうと抱きしめて笑う。
「だってパワプロさん、かわいくて、きれいな人が好きでしょう?」
「それはそうだけど、オレが好きなのは進くんだよ」
 進くんは、かわいくてきれい。そう言うと進くんは黙ってしまって目を逸らした。かわいい。
「じゃあ、今度は進くんの番だからね。進くんの好きなもの」
「なんですか?」
「進くんが好きなのは……えー、野球?」
「それは、パワプロさんでしょ」
「それはもちろんそうなんだけど。でも進くんって、本当に野球が好きだよね。見てれば分かるよ」
「そうですか?」
「うん。じゃあさ、たとえばここに悪魔が来てさ」
「悪魔?」
「悪魔に魂を渡さないと野球ができないぞーって言われたら、どうする?」
「そんなの、どうもしないですよ」
「魂渡さない?」
「もちろんです」
「ほんと?」
「なんでそんなこと聞くんですか?」
「さっき進くんがオレのこと困らせたから、おかえし。困った?」
「はい」
 魂、あげちゃだめだからね。念を押すように言うと、進くんはふきだすように笑った。



「進!自分の足で、ここまでこい。ピッチャーとしてマウンドをまかされたからには最後までしっかりしろ!」

そんなことあるわけないのにね 2024.8.22


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もう一生こういうの書いてたい

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