アスピリンも効かない
主進
「じゃ、じゃあいいかな?」
「は、はい…」
ベッドに横たえた進くんの上にのしかかりながら、オレはなんとも情けない声で尋ねた。電気を消すのを忘れてしまったので、進くんの表情がありありと見える。時折ちらっと顔を上げて視線を泳がせているのはつまりそういう意味もあるかもしれない。しかしここまで来てわざわざ電気を消しに行くのも随分マヌケな行為である(先程の質問も十分にマヌケであるということは伏せておこう)。
ずっとこうしたかったはずなのに、ずっと望んでいたはずなのに、いざこういう状況になったらオレというやつはなんとも情けないことにどうしたらいいのか分からないのだった。オレも望んでいるし、進くんだって望んでいる。何も障害はないのだ。
20代も半ばを過ぎ、多くはないが何人かの女性と付き合った経験もあり、もちろん童貞ではない。進くんは男だったが、根本的にすることは同じなのでやり方が分からないというわけでもない。だいたい、勉強熱心なオレはすでにネットで予習復習も済ませているのである。もちろん欲情だってしているし、正直張り詰めた下半身は痛いほどだ。
据え膳食わぬはなんとやらというが、まさにそんな状況である。
恋人の部屋、心地の良いベッド、愛し合う二人が互いを求めるという最高に幸せな状況だった。
どうしたらいいのか分からないのは進くんも同じようで、ベッドに寝転んだまま真っ赤に熟れた顔でしきりに視線を泳がせている。前髪をさらりとかきあげると、ぴくんと反応して目をつぶってしまった。額と、震える睫毛に唇を落とす。震えているのはオレも同じだった。抑えきれない高揚感と興奮で体はふわふわしていた。
真っ白いシーツの上に散らばる進くんの髪を見て、心底愛おしいと思う。髪をほどいた彼はとても色っぽく、物欲しげに開いた唇はオレの情欲をかきたてた。
この唇から、一体どんな声が零れ落ちるのだろう。
「あの、パワプロさん…?」
「え、あ、うん!?」
彼の顔を眺めながら妄想を突っ走らせていたオレは、突然呼びかけられたことで素っ頓狂な声をあげてしまった。およそ行為中に出す声ではない。ムードが台無しだ。
「あの、もしかして、無理してませんか?」
「なんのこと?」
「やっぱり、僕なんかに欲情しないのかなって…」
「まさか!」
何言ってるの!と大きな声を出してしまったせいで、進くんはびっくりした顔でオレを見つめた。恥ずかしさで小さくなりながら謝ると、彼はホッと息をつきながら安心しましたとだけ言って瞳を伏せた。妙な沈黙が二人の間に流れる。
オレはもうお手上げの気持ちになって、なにも言わず進くんをただ抱きしめた。ぎゅうぎゅうと腕をしめつけて、彼の首筋に顔を埋める格好でぐりぐりと擦り寄る。
「あー、もう、ごめん!オレってダサすぎ!」
「パワプロさん…?」
「しばらくこうしててもいい?」
もちろんですと言って笑った進くんの腕がオレの背中にそっと回される。そのまま無言のまま二人して抱き合っていると、ようやく気持ちも落ち着いてきた。
顔を上げて進くんの鼻先にチュウと吸い付く。
「なんか、いざそのときがきたらどうしたらいいのか分からなくなっちゃって」
「はい…僕もです」
「分かると思うけど、オレ今だって結構限界なんだよ」
わざと意識させるように下半身を押し付けると、進くんの頬はぽぽぽっと染まって、さらに耳まで真っ赤にしながら「僕だってそうです」と口ごもった。
「進くんのことほしくてほしくてたまんないけど、それ以上に大切すぎて、どうしたらいいのか分かんなくなっちゃって。なんかほんとごめん、情けなくて」
「そんなこと…」
「……。進くんっていい匂いするよね」
くんくんと擦り寄って首筋に鼻を埋めると、くすぐったいのか進くんはくすくすと小さく笑った。ふんふんと甘い匂いを堪能しながら、悪戯心でべろりと舐め上げる。唐突なことにびっくりしたのか、彼は小さく声を上げると恥ずかしそうに瞳を伏せた。濡れた瞳と熱い眼差しはオレを煽るのには十分すぎるほどだった。
「あの、さっきから気になっていたんですが、電気消しませんか?」
「ダメ」
進くんのかわいい顔が見れなくなるから。言い置いて、そのまま唇を重ねる。まるで待っていたかのように薄く開かれた唇に優しく舌を差し入れる。絡まった舌は熱く、もっと深く、もっとたくさん彼を感じたくてオレは角度を変えて何度でも口付けた。
合間に紡がれる吐息すら逃すのが惜しかった。ちゅくちゅくと立てられる水音と彼の方から絡められる舌に興奮する。苦しくなって束の間唇を離すも、進くんのそれによってすぐに塞がれる。夢中で交わした口付けは、今までに経験したことのないものだった。
「僕、もう我慢できません」
「うん。オレも」
「いい子のフリは、今日でおしまいにします」
「じゃあ、悪い子になるの?」
「はい。パワプロさんの前でだけ、限定です」
真剣な顔でそう言った彼にオレは噴き出してしまって、それを見た進くんはなんで笑うんですか!と言ってオレを叱る。ぶうとむくれてしまった彼が愛しくてかわいくてどうにかなりそうだった。
慌てて、オレは良い子の進くんも悪い子の進くんも大好きだよと囁くと、少しは機嫌が直ったようだった。じっと見つめていると、キスしてくれたら許してあげますなどとかわいく言うものだから、オレは愛しい恋人の唇に再び口付けを落とした。
―――――――――――
主進しあわせになれよばかーーーーー!!
手を繋いだり触れるだけのキスをしていた二人が一線を越える夜
今夜はお赤飯ね
アスピリンは熱さましの薬です
「じゃ、じゃあいいかな?」
「は、はい…」
ベッドに横たえた進くんの上にのしかかりながら、オレはなんとも情けない声で尋ねた。電気を消すのを忘れてしまったので、進くんの表情がありありと見える。時折ちらっと顔を上げて視線を泳がせているのはつまりそういう意味もあるかもしれない。しかしここまで来てわざわざ電気を消しに行くのも随分マヌケな行為である(先程の質問も十分にマヌケであるということは伏せておこう)。
ずっとこうしたかったはずなのに、ずっと望んでいたはずなのに、いざこういう状況になったらオレというやつはなんとも情けないことにどうしたらいいのか分からないのだった。オレも望んでいるし、進くんだって望んでいる。何も障害はないのだ。
20代も半ばを過ぎ、多くはないが何人かの女性と付き合った経験もあり、もちろん童貞ではない。進くんは男だったが、根本的にすることは同じなのでやり方が分からないというわけでもない。だいたい、勉強熱心なオレはすでにネットで予習復習も済ませているのである。もちろん欲情だってしているし、正直張り詰めた下半身は痛いほどだ。
据え膳食わぬはなんとやらというが、まさにそんな状況である。
恋人の部屋、心地の良いベッド、愛し合う二人が互いを求めるという最高に幸せな状況だった。
どうしたらいいのか分からないのは進くんも同じようで、ベッドに寝転んだまま真っ赤に熟れた顔でしきりに視線を泳がせている。前髪をさらりとかきあげると、ぴくんと反応して目をつぶってしまった。額と、震える睫毛に唇を落とす。震えているのはオレも同じだった。抑えきれない高揚感と興奮で体はふわふわしていた。
真っ白いシーツの上に散らばる進くんの髪を見て、心底愛おしいと思う。髪をほどいた彼はとても色っぽく、物欲しげに開いた唇はオレの情欲をかきたてた。
この唇から、一体どんな声が零れ落ちるのだろう。
「あの、パワプロさん…?」
「え、あ、うん!?」
彼の顔を眺めながら妄想を突っ走らせていたオレは、突然呼びかけられたことで素っ頓狂な声をあげてしまった。およそ行為中に出す声ではない。ムードが台無しだ。
「あの、もしかして、無理してませんか?」
「なんのこと?」
「やっぱり、僕なんかに欲情しないのかなって…」
「まさか!」
何言ってるの!と大きな声を出してしまったせいで、進くんはびっくりした顔でオレを見つめた。恥ずかしさで小さくなりながら謝ると、彼はホッと息をつきながら安心しましたとだけ言って瞳を伏せた。妙な沈黙が二人の間に流れる。
オレはもうお手上げの気持ちになって、なにも言わず進くんをただ抱きしめた。ぎゅうぎゅうと腕をしめつけて、彼の首筋に顔を埋める格好でぐりぐりと擦り寄る。
「あー、もう、ごめん!オレってダサすぎ!」
「パワプロさん…?」
「しばらくこうしててもいい?」
もちろんですと言って笑った進くんの腕がオレの背中にそっと回される。そのまま無言のまま二人して抱き合っていると、ようやく気持ちも落ち着いてきた。
顔を上げて進くんの鼻先にチュウと吸い付く。
「なんか、いざそのときがきたらどうしたらいいのか分からなくなっちゃって」
「はい…僕もです」
「分かると思うけど、オレ今だって結構限界なんだよ」
わざと意識させるように下半身を押し付けると、進くんの頬はぽぽぽっと染まって、さらに耳まで真っ赤にしながら「僕だってそうです」と口ごもった。
「進くんのことほしくてほしくてたまんないけど、それ以上に大切すぎて、どうしたらいいのか分かんなくなっちゃって。なんかほんとごめん、情けなくて」
「そんなこと…」
「……。進くんっていい匂いするよね」
くんくんと擦り寄って首筋に鼻を埋めると、くすぐったいのか進くんはくすくすと小さく笑った。ふんふんと甘い匂いを堪能しながら、悪戯心でべろりと舐め上げる。唐突なことにびっくりしたのか、彼は小さく声を上げると恥ずかしそうに瞳を伏せた。濡れた瞳と熱い眼差しはオレを煽るのには十分すぎるほどだった。
「あの、さっきから気になっていたんですが、電気消しませんか?」
「ダメ」
進くんのかわいい顔が見れなくなるから。言い置いて、そのまま唇を重ねる。まるで待っていたかのように薄く開かれた唇に優しく舌を差し入れる。絡まった舌は熱く、もっと深く、もっとたくさん彼を感じたくてオレは角度を変えて何度でも口付けた。
合間に紡がれる吐息すら逃すのが惜しかった。ちゅくちゅくと立てられる水音と彼の方から絡められる舌に興奮する。苦しくなって束の間唇を離すも、進くんのそれによってすぐに塞がれる。夢中で交わした口付けは、今までに経験したことのないものだった。
「僕、もう我慢できません」
「うん。オレも」
「いい子のフリは、今日でおしまいにします」
「じゃあ、悪い子になるの?」
「はい。パワプロさんの前でだけ、限定です」
真剣な顔でそう言った彼にオレは噴き出してしまって、それを見た進くんはなんで笑うんですか!と言ってオレを叱る。ぶうとむくれてしまった彼が愛しくてかわいくてどうにかなりそうだった。
慌てて、オレは良い子の進くんも悪い子の進くんも大好きだよと囁くと、少しは機嫌が直ったようだった。じっと見つめていると、キスしてくれたら許してあげますなどとかわいく言うものだから、オレは愛しい恋人の唇に再び口付けを落とした。
―――――――――――
主進しあわせになれよばかーーーーー!!
手を繋いだり触れるだけのキスをしていた二人が一線を越える夜
今夜はお赤飯ね
アスピリンは熱さましの薬です
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