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類似品

類似品(5/猪狩進→主人公と猪狩守)

 幼い頃は、よく双子に間違われた。僕と、一つ上の兄である猪狩守の顔はよく似ている。高校生となった今でこそ体格差があるものの、幼少期の頃の兄は他の子供と比べても小柄だった。よく似た兄弟。二人とも野球をする。態度が大きくて目立ちたがりの兄、謙虚で礼儀正しい弟の僕。マウンドに立つ兄はピッチャーで、それを受けるキャッチャーが僕、猪狩進だ。比べるなという方が無理な話であろう。まして、子供の世界であれば、なおさら。僕の人生は、兄が歩いた後に出来る影を踏んで歩くようなものだった。

「弟よ、この程度の奴に、あいさつする必要はないぞ。バカがうつるかもしれないからな」
 そう言う兄はフンと笑って、それを見た他校の野球部員、名前をパワプロさんといって、その人は怒っていた。気になる人間にあらぬちょっかいをかけるのは、昔から兄の悪癖であった。兄はこの人のことを気に入っている。初めて会った時から、僕は分かっていた。なにしろ、僕と兄はよく似ている。
 よくもまあこれほどまでに道端で偶然出会うものだと思ったが、不思議なほどパワプロさんとはよく遭遇した。今日は、兄と連れ立ってランニングをしている最中に出くわし、僕のトレーニングに付き合うといった兄は自転車に乗っていた。その自転車でわざわざ前方を歩いていたパワプロさんにぶつかりに行ったのだから、相当だ。まるで小学三年生程度の、気の引き方。当然だが案の定パワプロさんは怒り出して、僕は兄の隣でその様子を眺めていた。
「パワプロさん、こんにちは。兄が、すみません」
「あっ、進くん!いやいいんだよ、進くんが謝ることじゃないし」
「なんだ、ボクの弟にいやに馴れ馴れしいなキミは」
「この前、一緒にゲームセンターに行ったんですよ」
 兄はきょとんとしている。大きな目を丸くして、二の句が継げないのか黙っている。もちろんそんなことに気付きもしないパワプロさんは、楽しそうに続けた。
「そうそう、進くんすっごく上手だからびっくりしたよ!」
「たまたまですよ。そうだ、せっかくですし、今日はこの前言ってたバッティングセンターに行きませんか?」
「いいね!行く行く!」
「兄さんは、どうします?」
「……」
 兄がこんな顔をするのを初めて見た。自分の知らない僕の交友関係に戸惑っているのだろう。しかも相手は、無自覚ながら慕っているパワプロさんなのだから。
 パワプロさんは、いい人だ。彼の友人に、初対面で「猪狩二号」だなんて紹介された僕に対して、全くそのように扱わず、振る舞わず、猪狩進として接してくれた。僕がこの人を慕うのは、息をするより自然なことであった。
 パワプロさんは、魅力的だ。優しくて、おおらかで、野球が好きで、笑った顔が眩しい。兄さんには、よく分かることでしょう。なにせ、僕とあなたは大変よく似ている。
「ボクは、行かない」
「そうですか。じゃあパワプロさん、行きましょう」
「猪狩、お前も一緒に行こうぜ」
「フン。キミみたいなヘタクソと一緒に行くわけがないだろう」
「なんだとー!」
 パワプロさん、あなたは優しい。そして、優しいあなたが僕を選んでくれないことを、僕はよく知っている。似ているだけで、僕は兄ではありませんから。
「ほら二人とも、喧嘩してないで早く行きましょう」




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進くんいつもごめんなそういう君が好きだ

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おかげさまで進くんのことばっかり考えていたらこんな感じになってしまいました。好きですね。

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