3つ数えて
2010/主進
「ねえ、パワプロさん」
隣に座っている進くんに呼ばれてオレは顔を上げた。
熱さと闘いながら食べていたちくわをなんとか飲み込む。
熱いが食べたい、食べたいが熱い。猫舌であるオレがおでんを食べるのは一種の闘いのようなものだ。なにしろオレは今とてつもなく腹が減っている。
ともすれば火傷しそうなほどアツアツに煮込まれたおでんがそこにはいる。がっつくなという方が無理な話である。
隣を見ると、箸をおいた進くんは手元のお猪口から少しだけお酒を舐めて、満面の笑みで言った。
「僕、パワプロさんのことが好きなんですよ」
ついに言っちゃったあ、間延びした口調で言った進くんはにこにこと笑いながらお猪口の酒を一気に飲み干した。
おっ、いい飲みっぷりだねえと言いながらすかさず大将が新しい酒を注ぐ。
皿に盛られた大根をつつきながら進くんがこちらを見る。
「パワプロさん?どうかしました?」
「あ、いや、べつに、大丈夫」
もごもごと口ごもりながらオレは大将におでんの追加を頼んだ。
いつもこの時間には大繁盛している屋台が、今日はオレと進くんだけの貸切状態である。
とうに顔なじみとなった大将は手慣れた様子で次の具を皿につぐ。オレの好物のこんにゃくだ。ついでに生中も追加しておいた。
ここはオレと進くんいきつけの屋台である。元々はオレのいきつけであったのだが、2人で何度も来ているうちにオレと進くんのいきつけとなった。
最初こそ外の屋台で食事をするということに慣れない様子の進くんだったが(進くんはいいところのおぼっちゃんである)、いまではすっかり打ち解けて気軽に世間話をしているし、料理をすることが好きらしい進くんは大将とも話が合うようだ。
大将さん、大将さんと呼ぶその様子はかわいらしかったし、大将も進くんのことを気に入っているようだ。
「今日のパワプロさん、よく飲みますね」
僕も追加しちゃおうかなあ、やっぱり間延びした声で言った進くんはまたも一気に日本酒を流し込んでしまうのだった。
どうやら酔っているらしい。酒は嗜む程度、普段は決して酔うほど飲まない進くんにしては珍しいことだった。
だいたい、酒が弱いわけではない彼がここまでになるには相当の量を飲んでいるはずなのだが、おでんを食べることに一生懸命だったオレは全く気が付かなかったらしい。
こんにゃくをもごもごと咀嚼しながらオレは先ほどの話を蒸し返した。このままなんとなく流されてしまうわけにはいかない。
「ねえ進くん」
「なんですか?」
「さっきの、あれ、どういう意味なの?」
「さっきの?」
こてんと首を傾げてみせた進くんはどことなく幼い動作で考え込むと、結局は何も思い当たらなかったらしく、なんのことですか?とのたまった。
頬は血色よくピンク色に染まっており、瞳はきらきらと輝いていた。
どうやらオレの想像以上に酔っているらしい。
ちょんまげ兄ちゃんは、兄ちゃんのことが好きなんだよな!威勢よく言い放った大将がお猪口にお代わりを注ぐ。オレの止める間もなく進くんはそつなく受け取って、透明なそれをぺろりと舐めた。
そうです、僕パワプロさんのことが好きなんです!これまた大将に負けじと威勢よく言い放った進くんはお猪口を両手で持ってうふふと笑ってみせた。
それを見た大将も笑っている。
「えっと、好きってそれはなんていうか、うんオレも進くんのこと好きだけど」
「僕のはLoveですよ」
大将さんおかわりください!元気に言った進くんはほかほかの牛すじに口をつけると、熱いですねと言って笑った。
熱いのはオレの顔だ。額からはだらだらと汗が流れてくるし、めちゃくちゃ熱い。
「ラ、ラブって進くん」
「Likeじゃあなくって、Loveの方ってことですよ」
兄ちゃん、つまり愛の告白だな?けらけらと笑った大将が囃し立ててくる。それでも進くんはにこにこと笑ったままだ。
どうでもいいが、大将はオレのことを兄ちゃんと呼び、進くんのことをちょんまげ兄ちゃんと呼ぶ。
ちょんまげとは、どうやら進くんの結び髪のことを言っているらしい。その呼び名はどうなのかなあと思案したオレであったが、当の本人が全く気にしていないようなのでオレも気にするのをやめた。
ちょんまげ兄ちゃん、お代わり飲むか?大将がさらに酒を勧めていたので今度こそオレはそれを阻止した。
「進くん、今日は飲みすぎだって!」
「だって、美味しいです」
「おいしくても、もうダメ!」
「パワプロさんと食べるご飯はどうしてこんなにおいしいのかなあ」
むにゃむにゃと語尾を怪しくしながら言った進くんは唐突に机に突っ伏し、見ているとなんとそのままスヤスヤと寝息を立て始めてしまった。
あっけにとられたオレは何も言葉にならず手元にあった生中を一気に流し込んだ。ぬるい。
大将の方を見ると、新しくやってきた客の注文をとっているところだった。
こちらに顔を向けたまま眠っている進くんの顔をまじまじと眺める。
キレイな顔だ。中世的で美しいその顔立ちはともすれば女の子のようであったが、もちろん進くんは男であるし、オレだって男だ。
酔っぱらった進くんの言うことを真に受けるわけではないが、好きだと言われればいやでも意識してしまう。だってオレは男なのだ。
「…参ったなあ」
何が参ったのか分からないが、オレはいかにも困っていますという体の顔を取り繕ってビールを飲み干した。ぬるくなっていたはずのビールは喉ごしが良くとても美味しかった。
かわいらしい寝顔を眺めながら、あと3つ数えて起きなかったらチューしちゃうぞとオレは心の中で進くんに話しかける。もちろん進くんが起きることはない。
どうやらオレも酔っているみたいだ。
たまにはこんな夜もいいだろうと、オレは上機嫌のまま大将に生中のお代わりを告げた。
――――――――
いきつけ、常連、この単語だけでここまで萌えましたー主進くださいー(懇願)
「ねえ、パワプロさん」
隣に座っている進くんに呼ばれてオレは顔を上げた。
熱さと闘いながら食べていたちくわをなんとか飲み込む。
熱いが食べたい、食べたいが熱い。猫舌であるオレがおでんを食べるのは一種の闘いのようなものだ。なにしろオレは今とてつもなく腹が減っている。
ともすれば火傷しそうなほどアツアツに煮込まれたおでんがそこにはいる。がっつくなという方が無理な話である。
隣を見ると、箸をおいた進くんは手元のお猪口から少しだけお酒を舐めて、満面の笑みで言った。
「僕、パワプロさんのことが好きなんですよ」
ついに言っちゃったあ、間延びした口調で言った進くんはにこにこと笑いながらお猪口の酒を一気に飲み干した。
おっ、いい飲みっぷりだねえと言いながらすかさず大将が新しい酒を注ぐ。
皿に盛られた大根をつつきながら進くんがこちらを見る。
「パワプロさん?どうかしました?」
「あ、いや、べつに、大丈夫」
もごもごと口ごもりながらオレは大将におでんの追加を頼んだ。
いつもこの時間には大繁盛している屋台が、今日はオレと進くんだけの貸切状態である。
とうに顔なじみとなった大将は手慣れた様子で次の具を皿につぐ。オレの好物のこんにゃくだ。ついでに生中も追加しておいた。
ここはオレと進くんいきつけの屋台である。元々はオレのいきつけであったのだが、2人で何度も来ているうちにオレと進くんのいきつけとなった。
最初こそ外の屋台で食事をするということに慣れない様子の進くんだったが(進くんはいいところのおぼっちゃんである)、いまではすっかり打ち解けて気軽に世間話をしているし、料理をすることが好きらしい進くんは大将とも話が合うようだ。
大将さん、大将さんと呼ぶその様子はかわいらしかったし、大将も進くんのことを気に入っているようだ。
「今日のパワプロさん、よく飲みますね」
僕も追加しちゃおうかなあ、やっぱり間延びした声で言った進くんはまたも一気に日本酒を流し込んでしまうのだった。
どうやら酔っているらしい。酒は嗜む程度、普段は決して酔うほど飲まない進くんにしては珍しいことだった。
だいたい、酒が弱いわけではない彼がここまでになるには相当の量を飲んでいるはずなのだが、おでんを食べることに一生懸命だったオレは全く気が付かなかったらしい。
こんにゃくをもごもごと咀嚼しながらオレは先ほどの話を蒸し返した。このままなんとなく流されてしまうわけにはいかない。
「ねえ進くん」
「なんですか?」
「さっきの、あれ、どういう意味なの?」
「さっきの?」
こてんと首を傾げてみせた進くんはどことなく幼い動作で考え込むと、結局は何も思い当たらなかったらしく、なんのことですか?とのたまった。
頬は血色よくピンク色に染まっており、瞳はきらきらと輝いていた。
どうやらオレの想像以上に酔っているらしい。
ちょんまげ兄ちゃんは、兄ちゃんのことが好きなんだよな!威勢よく言い放った大将がお猪口にお代わりを注ぐ。オレの止める間もなく進くんはそつなく受け取って、透明なそれをぺろりと舐めた。
そうです、僕パワプロさんのことが好きなんです!これまた大将に負けじと威勢よく言い放った進くんはお猪口を両手で持ってうふふと笑ってみせた。
それを見た大将も笑っている。
「えっと、好きってそれはなんていうか、うんオレも進くんのこと好きだけど」
「僕のはLoveですよ」
大将さんおかわりください!元気に言った進くんはほかほかの牛すじに口をつけると、熱いですねと言って笑った。
熱いのはオレの顔だ。額からはだらだらと汗が流れてくるし、めちゃくちゃ熱い。
「ラ、ラブって進くん」
「Likeじゃあなくって、Loveの方ってことですよ」
兄ちゃん、つまり愛の告白だな?けらけらと笑った大将が囃し立ててくる。それでも進くんはにこにこと笑ったままだ。
どうでもいいが、大将はオレのことを兄ちゃんと呼び、進くんのことをちょんまげ兄ちゃんと呼ぶ。
ちょんまげとは、どうやら進くんの結び髪のことを言っているらしい。その呼び名はどうなのかなあと思案したオレであったが、当の本人が全く気にしていないようなのでオレも気にするのをやめた。
ちょんまげ兄ちゃん、お代わり飲むか?大将がさらに酒を勧めていたので今度こそオレはそれを阻止した。
「進くん、今日は飲みすぎだって!」
「だって、美味しいです」
「おいしくても、もうダメ!」
「パワプロさんと食べるご飯はどうしてこんなにおいしいのかなあ」
むにゃむにゃと語尾を怪しくしながら言った進くんは唐突に机に突っ伏し、見ているとなんとそのままスヤスヤと寝息を立て始めてしまった。
あっけにとられたオレは何も言葉にならず手元にあった生中を一気に流し込んだ。ぬるい。
大将の方を見ると、新しくやってきた客の注文をとっているところだった。
こちらに顔を向けたまま眠っている進くんの顔をまじまじと眺める。
キレイな顔だ。中世的で美しいその顔立ちはともすれば女の子のようであったが、もちろん進くんは男であるし、オレだって男だ。
酔っぱらった進くんの言うことを真に受けるわけではないが、好きだと言われればいやでも意識してしまう。だってオレは男なのだ。
「…参ったなあ」
何が参ったのか分からないが、オレはいかにも困っていますという体の顔を取り繕ってビールを飲み干した。ぬるくなっていたはずのビールは喉ごしが良くとても美味しかった。
かわいらしい寝顔を眺めながら、あと3つ数えて起きなかったらチューしちゃうぞとオレは心の中で進くんに話しかける。もちろん進くんが起きることはない。
どうやらオレも酔っているみたいだ。
たまにはこんな夜もいいだろうと、オレは上機嫌のまま大将に生中のお代わりを告げた。
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いきつけ、常連、この単語だけでここまで萌えましたー主進くださいー(懇願)
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