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meaning(猪狩兄弟)

「兄さん、ちょっと味見をしてもらえませんか?」

 年が明けて正月、元旦だろうといつも通りトレーニングのウォーミングアップを終えて自宅に戻ると、ちょうど弟と出くわした。エプロンを付けているその出で立ちを見るに、料理をしていたのだろう。弟は、野球も勉強も料理も出来る。

「お夕飯に、母さんとおせちを作ったんですけど、初めて作るものばかりで自信がないので、兄さんに味をみてもらいたいんです」
「ああ、いいよ。でも、母さんと作ったんだろう?」
「ふふ、母さんは何を食べても「美味しい」になっちゃいますから」
「確かに」

 2人で笑いながら長い廊下を歩く。ボクたち兄弟、ことさら進には甘い母の反応は見なくても目に浮かぶようで、ボクたちは顔を見合わせて笑った。

「どうぞ。口に合えばいいですけど」
「いただくよ」

 キッチンというよりは厨房と表現した方が良いそこへ到着し、進から箸を渡される。色とりどりのそれらに感心しながら、ボクは静かに箸を付けた。

「どうですか?」
「ああ、どれもおいしいよ。ほとんど、進が作ったんだろう」
「母さんにも手伝ってもらいましたよ」

 一皿ずつ少しずつ食べ進め、お世辞抜きにしてどれも初めて作ったとは思えないくらいに美味しかった。我が弟ながらしみじみと感心してしまう。

「兄さん、おせち料理の意味って知ってますか?」
「意味?」
「例えば、れんこん。穴が多く空いていて先がよく見えることから、見通しの良い1年を祈るという意味が込められているんですよ」
「へえ、なるほど。知らなかったよ」
「伊達巻きは、巻物の形をしていることから学問が成就するように、筑前煮は、根菜類と鶏肉を一緒に煮ることから家族が仲良く一緒に結ばれるように」
「詳しいんだな」
「レシピを調べるときに、一緒に書いてあって覚えちゃいました。おもしろいですよね」
「あ、数の子もあるんだな。ひとつもらおう」

 進に取ってもらって、ボクはもぐもぐと数の子を食べた。醤油もなにも付けないでそのまま食べるのが好きだった。正月に食べる数の子はなんとなく特別で美味しい気がして、ボクはもうひとつ食べようかと箸を伸ばした。

「兄さん、数の子の意味は知ってます?」
「うーん、知らないな」

 口を動かすのに忙しいボクを見てにこにこと微笑みながら進は言う。それはさながら天使の微笑み。

「とてもたくさんの卵が付いていることから、子孫繁栄の意味があるんですよ。そして、子宝成就」
「んっ!?」

 唐突に頬に触れた進に驚いて、ボクは大袈裟に反応してしまった。それでもにこにこと笑っている進は先程と寸分も様子が違わない。

「口元、付いてましたよ」
「あ、ああ、ありがとう」

「兄さんに食べてもらって自信が付きました。お夕飯、楽しみにしててくださいね」

 「じゃあ、あとで」そう言った弟は今日いちばんの笑顔で微笑むのであった。無意識に、先程弟の指が撫でていった場所に手を当てていた。頬が熱いのはトレーニング後のせいだと言い聞かせ、ボクはシャワーを浴びるべく浴室へ向かうのだった。


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新年明けましておめでとうございます!
本年もゆっくりぱわぷろしていく所存ですので、何卒よろしくお願いします^^

また、6月に開催されるぱわぷろオンリーにも参加する予定でおります!
改めてお知らせいたしますので、こちらもよろしくお願いしますー!

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