流れ星がながれたら
流れ星がながれたら
「あっ、流れ星!」
隣を歩く男が、夜の空を指して言う。月のない夜に星々はキラキラと瞬いていたが、友沢が顔を上げた時にはもう、それは見えなくなっていた。
「友沢、見れた?」
「見れなかった」
「そっか。残念だったな」
「今日はやらないのか、あれ」
少し前のことを思い出して、友沢は茶化すように聞いてみた。あの日も、今日みたいに部活動が終わった後、ふたりだけで居残り練習した帰り道だった。あの時も流れ星を見たらしい隣の男は、願いごとを叶えてもらうのだと言って随分と熱心に手を合わせていた。
流れ星が光っている間に三回願いを唱えると、それを叶えてくれるらしい。そういえば、昔幼い弟妹に読んであげた絵本にも、そんなことが書いてあったっけ。確か、流れ星が見えている瞬間には天の扉が開いていて、神様がこちらを見ているから願いごとを叶えてくれるのだと書いてあった。神様なんて、いるわけないのに。絵本を読み上げながら、そんなことを思っていた。
「この前のオレの願いごとはもう叶っちゃったからさ、今度は自分の力で叶えるよ」
「そうなのか」
「うん」
「それって、お前の願いごとって、なんだったんだ」
意味ありげにこちらの顔を見る男の意図が、友沢には分からなかった。黙ったまままばたきを繰り返していると、男が嬉しそうに言う。
「ずっと、ずーっと友沢が隣にいてくれますようにって、お願いしたんだ!」
「……」
「なんだよ、その顔」
なんて返事をしたらいいのか分からなくて、咄嗟に友沢が口にしたのは、実に可愛げのない言葉だった。
「ずっと隣にいるなんて、いつ約束したんだ」
「いてくれないの?」
「……いる、けど」
満面の笑みを浮かべる男の顔が、それこそ星なんかよりもよっぽど眩しくて友沢は困った。顔を見ていられなくて、わざと明後日の方を見る。
「友沢のそんな顔、初めて見た」
「そうかよ」
「もっとよく見せて」
いやだと言ったはずなのに、そっぽを向いて逃れたはずなのに、友沢は簡単に捕まって男の腕の中にいた。
瞼を下ろして二人の影がひとつになる頃、もう一度流れ星がながれていったことに友沢は気が付かなかった。
了
ーーーーーーーーーー
主友好きだなーってしみじみ実感してます
「あっ、流れ星!」
隣を歩く男が、夜の空を指して言う。月のない夜に星々はキラキラと瞬いていたが、友沢が顔を上げた時にはもう、それは見えなくなっていた。
「友沢、見れた?」
「見れなかった」
「そっか。残念だったな」
「今日はやらないのか、あれ」
少し前のことを思い出して、友沢は茶化すように聞いてみた。あの日も、今日みたいに部活動が終わった後、ふたりだけで居残り練習した帰り道だった。あの時も流れ星を見たらしい隣の男は、願いごとを叶えてもらうのだと言って随分と熱心に手を合わせていた。
流れ星が光っている間に三回願いを唱えると、それを叶えてくれるらしい。そういえば、昔幼い弟妹に読んであげた絵本にも、そんなことが書いてあったっけ。確か、流れ星が見えている瞬間には天の扉が開いていて、神様がこちらを見ているから願いごとを叶えてくれるのだと書いてあった。神様なんて、いるわけないのに。絵本を読み上げながら、そんなことを思っていた。
「この前のオレの願いごとはもう叶っちゃったからさ、今度は自分の力で叶えるよ」
「そうなのか」
「うん」
「それって、お前の願いごとって、なんだったんだ」
意味ありげにこちらの顔を見る男の意図が、友沢には分からなかった。黙ったまままばたきを繰り返していると、男が嬉しそうに言う。
「ずっと、ずーっと友沢が隣にいてくれますようにって、お願いしたんだ!」
「……」
「なんだよ、その顔」
なんて返事をしたらいいのか分からなくて、咄嗟に友沢が口にしたのは、実に可愛げのない言葉だった。
「ずっと隣にいるなんて、いつ約束したんだ」
「いてくれないの?」
「……いる、けど」
満面の笑みを浮かべる男の顔が、それこそ星なんかよりもよっぽど眩しくて友沢は困った。顔を見ていられなくて、わざと明後日の方を見る。
「友沢のそんな顔、初めて見た」
「そうかよ」
「もっとよく見せて」
いやだと言ったはずなのに、そっぽを向いて逃れたはずなのに、友沢は簡単に捕まって男の腕の中にいた。
瞼を下ろして二人の影がひとつになる頃、もう一度流れ星がながれていったことに友沢は気が付かなかった。
了
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主友好きだなーってしみじみ実感してます
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答え合わせ
付き合うって、なんだろう。
隣を歩く男の話に相槌を打ちながら、友沢はぼんやりと考えていた。同級生であり、同じ部活動のチームメイトでもある男は、何がそんなに楽しいのか饒舌に話を続けている。実のところ友沢は全く話を聞いていなかったが、それでも男は普段と変わらない。その様子に焦れるというよりは怒りすら湧いてきて、友沢は自分の感情に戸惑った。こんな気持ちは今まで知らない。知らない感情は持て余すばかりで、消化不良を起こすだけだ。
好きだ、付き合ってほしい。いいよ。そんなやり取りが果たして一般的な交際のスタートに当たるのか否か、その判別すら友沢には難しい。何はともあれ、男の告白に頷いたことだけが、友沢にとって唯一の事実であった。
部活動の帰り道、どうやら今日は寄り道をしていかないようなので、もう間も無く別れ道に差し掛かるところだ。今日の練習は特別疲れたからさっさと帰って身体を休めたかったし、何より家には友沢の帰りを待つ幼い弟妹たちがいる。それなのにこの時間を名残惜しいと思うことが、友沢には不思議だった。
ポケットに突っ込んでいた手に力を込めて、ぎゅうと握りしめる。手を繋ぎたいなんて、どんな顔をして言えばいいのか分からなかった。だって付き合っているのに。付き合うって、なんだろう。今日もまた、言えなかった。分かれ道に差し掛かるこのタイミングで言えるわけもなくて、ポケットの中に突っ込んだ手をもう一度握りしめる。
「ねえ友沢。キスしてもいい?」
顔を上げた時には、ポケットの中の両手を引っ張り出されていて、男の手と繋がれていた。両手を取られ、そのまま男に引かれると、友沢の身体は簡単にそちらへ傾いた。不意打ちのそれに倒れそうになったところを、男が抱きしめる。自分の背中に男の手が回される頃、友沢はその状態をようやく自覚した。
「……これがお前の言う、キスってやつなのか?」
「違うけど!抱きしめたかったのもほんとだし」
語尾が小さくなっていって、その先は聞こえなかった。たぶん、友沢が考えていたことと同じようなことを言ったのだと思う。そう思うと口元は自然と緩んで、友沢は返事の代わりに自分の手を男の首に回した。外が暗くて良かったと思った。こんな顔を見られたら、明日からどんな顔をして会えばいいのか分からない。会えなくなるのは、困る。
「早くしろよ」
「友沢って、ムードとかさあ、そういうのないの?」
「もう待てない」
たぶん、男と友沢が唇を寄せたタイミングは全く同じだった。だから、歯をぶつけた。笑えばいいのか怒ればいいのか、あまりのことに友沢が反応出来ずにいるうちに、再び唇が重なっていた。我慢出来ないのを隠しもしないで、強く押し当てられただけの幼い口付けだった。熱い。それはすぐに離れたが、その瞬間にはまた重なっている。何度も繰り返しているうちに、友沢は頭がぼんやりして何も考えられなくなった。唇の端を男が舐めていったから、友沢は驚いて変な声が出た。その声に男が反応する。二人合わせて、熟れた林檎よりも顔が赤い。
「じゃあ、えっと、そろそろ帰ろっか」
「ああ」
これが付き合うということならば、いよいよ困ったことになったと、友沢は考えていた。
了
ーーーーーーーーーーー
主友を書いたら胸がドキドキザワザワしました。
好きなんだと思います
好きだ
隣を歩く男の話に相槌を打ちながら、友沢はぼんやりと考えていた。同級生であり、同じ部活動のチームメイトでもある男は、何がそんなに楽しいのか饒舌に話を続けている。実のところ友沢は全く話を聞いていなかったが、それでも男は普段と変わらない。その様子に焦れるというよりは怒りすら湧いてきて、友沢は自分の感情に戸惑った。こんな気持ちは今まで知らない。知らない感情は持て余すばかりで、消化不良を起こすだけだ。
好きだ、付き合ってほしい。いいよ。そんなやり取りが果たして一般的な交際のスタートに当たるのか否か、その判別すら友沢には難しい。何はともあれ、男の告白に頷いたことだけが、友沢にとって唯一の事実であった。
部活動の帰り道、どうやら今日は寄り道をしていかないようなので、もう間も無く別れ道に差し掛かるところだ。今日の練習は特別疲れたからさっさと帰って身体を休めたかったし、何より家には友沢の帰りを待つ幼い弟妹たちがいる。それなのにこの時間を名残惜しいと思うことが、友沢には不思議だった。
ポケットに突っ込んでいた手に力を込めて、ぎゅうと握りしめる。手を繋ぎたいなんて、どんな顔をして言えばいいのか分からなかった。だって付き合っているのに。付き合うって、なんだろう。今日もまた、言えなかった。分かれ道に差し掛かるこのタイミングで言えるわけもなくて、ポケットの中に突っ込んだ手をもう一度握りしめる。
「ねえ友沢。キスしてもいい?」
顔を上げた時には、ポケットの中の両手を引っ張り出されていて、男の手と繋がれていた。両手を取られ、そのまま男に引かれると、友沢の身体は簡単にそちらへ傾いた。不意打ちのそれに倒れそうになったところを、男が抱きしめる。自分の背中に男の手が回される頃、友沢はその状態をようやく自覚した。
「……これがお前の言う、キスってやつなのか?」
「違うけど!抱きしめたかったのもほんとだし」
語尾が小さくなっていって、その先は聞こえなかった。たぶん、友沢が考えていたことと同じようなことを言ったのだと思う。そう思うと口元は自然と緩んで、友沢は返事の代わりに自分の手を男の首に回した。外が暗くて良かったと思った。こんな顔を見られたら、明日からどんな顔をして会えばいいのか分からない。会えなくなるのは、困る。
「早くしろよ」
「友沢って、ムードとかさあ、そういうのないの?」
「もう待てない」
たぶん、男と友沢が唇を寄せたタイミングは全く同じだった。だから、歯をぶつけた。笑えばいいのか怒ればいいのか、あまりのことに友沢が反応出来ずにいるうちに、再び唇が重なっていた。我慢出来ないのを隠しもしないで、強く押し当てられただけの幼い口付けだった。熱い。それはすぐに離れたが、その瞬間にはまた重なっている。何度も繰り返しているうちに、友沢は頭がぼんやりして何も考えられなくなった。唇の端を男が舐めていったから、友沢は驚いて変な声が出た。その声に男が反応する。二人合わせて、熟れた林檎よりも顔が赤い。
「じゃあ、えっと、そろそろ帰ろっか」
「ああ」
これが付き合うということならば、いよいよ困ったことになったと、友沢は考えていた。
了
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主友を書いたら胸がドキドキザワザワしました。
好きなんだと思います
好きだ
ひとつもあげない
ひとつもあげない
「友沢、どうしたの」
気遣う声がどこまでも優しくて、つまらないことで不貞腐れている自分が本当に嫌になった。練習をして、一緒に飯を食べてから帰る道。腹ごなしの散歩も兼ねて、駅からわざわざ遠回りして帰るこの道が友沢は何よりも好きだった。そうだったのに。昔はそれだけで十分満足していたのに、今の友沢はどうしても子供のように駄々をこねるのをやめられなかった。
「ずっと、猪狩さんがいいんだと思ってた」
「また言ってる」
優しい眼差しに耐えかねて、何か言わなくてはと思った結果がこれだ。自分の口は、余計なことしか言わない。言ったそばから後悔したが、それでもやめることは出来なかった。下を向いたまま早足で歩く友沢には、今どこを歩いているのかもよく分からなくなっていた。いつもの道を外れて、ずいぶんと人通りが少なくなったことだけは分かる。月のない夜に、街灯の明かりばかりが眩しい。
「なんで猪狩さんじゃなくて、オレなんですか」
「友沢と猪狩を比べたことがないから、そんなの分かんないよ」
優しい言葉だと思った。告白をしたのは自分の方で、彼はそれにオーケーしてくれただけ。そう思っている自分には、過ぎた言葉だと思う。そう思うのに、満足出来ない。だから何度も確認するのに、すればするほど不安になった。大好きだと思う人を手に入れてこれでようやく満たされると思ったのに、欲求には際限がなくて、次から次へと欲しくなる。本当に子供みたいで、馬鹿みたいで、幼稚な感情だ。
彼が話す学生時代のちょっとした思い出だとか、野球にまつわるエピソードだとか、そういうものにいちいち付いて回る猪狩守の名前が気に入らない。面白くない。そうやって話を蒸し返しては、何度似たようなやり取りを繰り返したことだろう。いよいよ愛想を尽かされても、おかしくない。
「友沢って、そんな顔もするんだな」
言われて、友沢はようやく顔を上げることができた。優しい眼差しに抱かれて、何も言えなくなる。あんまり無邪気に笑うもんだから、友沢は全身の力が抜けていくのが分かった。固く握りしめていた手の平を解いてポケットから出すと、その手をひょいと掴んで繋がれる。
「オレ、友沢のこと好きだよ」
ぶわ、と全身の熱が顔に集まったように熱くなる。なんにも言えなくなって黙っていると、彼がまた笑う。
「友沢は、どうしたい?」
「言ってもいいんですか」
「もちろん」
考えるよりも前に、言葉が出ていた。
「オレを、あんただけのものにして」
言われた彼は少しだけ驚いたような顔をして、その後で繋いでいた手に力を込めた。それをぎゅうと握り返して、友沢は彼の言葉を待つ。
「家、来る?」
返事の代わりとばかりに抱き付くと、彼の笑い声が降ってくる。友沢は、もっと言いたいこと言っていいよ。本当にそんなことになったらあんたが困るだけだと言い返したかったが、友沢はそれを飲み込み、お言葉に甘えてキスをねだることにした。
了
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めーっちゃ嬉しかったので、書きました!ありがとうございます!友沢くん、幸せになってくれ〜!
「友沢、どうしたの」
気遣う声がどこまでも優しくて、つまらないことで不貞腐れている自分が本当に嫌になった。練習をして、一緒に飯を食べてから帰る道。腹ごなしの散歩も兼ねて、駅からわざわざ遠回りして帰るこの道が友沢は何よりも好きだった。そうだったのに。昔はそれだけで十分満足していたのに、今の友沢はどうしても子供のように駄々をこねるのをやめられなかった。
「ずっと、猪狩さんがいいんだと思ってた」
「また言ってる」
優しい眼差しに耐えかねて、何か言わなくてはと思った結果がこれだ。自分の口は、余計なことしか言わない。言ったそばから後悔したが、それでもやめることは出来なかった。下を向いたまま早足で歩く友沢には、今どこを歩いているのかもよく分からなくなっていた。いつもの道を外れて、ずいぶんと人通りが少なくなったことだけは分かる。月のない夜に、街灯の明かりばかりが眩しい。
「なんで猪狩さんじゃなくて、オレなんですか」
「友沢と猪狩を比べたことがないから、そんなの分かんないよ」
優しい言葉だと思った。告白をしたのは自分の方で、彼はそれにオーケーしてくれただけ。そう思っている自分には、過ぎた言葉だと思う。そう思うのに、満足出来ない。だから何度も確認するのに、すればするほど不安になった。大好きだと思う人を手に入れてこれでようやく満たされると思ったのに、欲求には際限がなくて、次から次へと欲しくなる。本当に子供みたいで、馬鹿みたいで、幼稚な感情だ。
彼が話す学生時代のちょっとした思い出だとか、野球にまつわるエピソードだとか、そういうものにいちいち付いて回る猪狩守の名前が気に入らない。面白くない。そうやって話を蒸し返しては、何度似たようなやり取りを繰り返したことだろう。いよいよ愛想を尽かされても、おかしくない。
「友沢って、そんな顔もするんだな」
言われて、友沢はようやく顔を上げることができた。優しい眼差しに抱かれて、何も言えなくなる。あんまり無邪気に笑うもんだから、友沢は全身の力が抜けていくのが分かった。固く握りしめていた手の平を解いてポケットから出すと、その手をひょいと掴んで繋がれる。
「オレ、友沢のこと好きだよ」
ぶわ、と全身の熱が顔に集まったように熱くなる。なんにも言えなくなって黙っていると、彼がまた笑う。
「友沢は、どうしたい?」
「言ってもいいんですか」
「もちろん」
考えるよりも前に、言葉が出ていた。
「オレを、あんただけのものにして」
言われた彼は少しだけ驚いたような顔をして、その後で繋いでいた手に力を込めた。それをぎゅうと握り返して、友沢は彼の言葉を待つ。
「家、来る?」
返事の代わりとばかりに抱き付くと、彼の笑い声が降ってくる。友沢は、もっと言いたいこと言っていいよ。本当にそんなことになったらあんたが困るだけだと言い返したかったが、友沢はそれを飲み込み、お言葉に甘えてキスをねだることにした。
了
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めーっちゃ嬉しかったので、書きました!ありがとうございます!友沢くん、幸せになってくれ〜!
エゴ・サーチ
エゴ・サーチ(友沢亮→主守)
友沢亮には、日課がある。プロ入りしてから始まった日課だ。眠る前、好きな人の名前をインターネットで検索すること。馬鹿みたいだと思っても、一度やるとやめられなくなった。先輩であり、チームメイトであるその人の名前を今日も検索ボックスに打ち込む。そうすると、その人の写真や、プロフィール、ネットニュースなんかが目の前に一気に現れる。情報の波だ。その中で一番最初に目に飛び込んで来たニュースは、やっぱり今日のヒーローインタビューの様子だった。苦々しい気持ちで、友沢はそのニュースのトピックを開く。
そのニュースの写真を飾るのは、先輩とチームのエース、猪狩守であった。この二人ときたら、学生の頃から因縁があるだの、甲子園決勝のカードを戦ったライバルだの、猪狩のトレードで今度はチームメイトになっただのと、常に話題には事欠かない。先発で延長まで投げ抜いた猪狩と、サヨナラを決めた先輩は、お立ち台に上がってもなお、いつもの通り仲良く喧嘩をしていた。それが面白いだの、可愛いだの、カイザース名物だのと、好き勝手書かれている。
案の定、今夜も友沢はしっかりと不貞腐れた気持ちになって、スマホを置いて頭から布団を被った。そもそも、あの人の名前を検索すると当たり前のように隣に並んで出てくる、その名前が気に入らなかった。猪狩守。あの人の名前でインターネット検索すると、サジェストには必ず猪狩守の名前が出てくるのだった。同級生だから、甲子園で戦ったから、ヒロインに並んで立ったからって、なんだっていうんだ。
友沢は目を閉じる。瞼の裏、あの人の名前を思って浮かぶのは、取り留めもないことばかりだ。気さくに話しかけてくる様子、笑うと年齢よりも幼く見えること、飯に誘ってくれるときの声のトーン、野球の話をするときには子供みたいな顔付きになるところ、それから。猪狩守と一緒にいるときにだけ見せる、特別な表情。
あーあ。悔しくて、考えたくなくて、瞼の裏の景色すら見たくなくて、腕で顔を覆ってみても、友沢の頭にはどうしようもないことが浮かぶ。
好きだ。敵わない。欲しい。好きだ。あの人の名前を浮かべては、仕様のないことばかりが並んで消える。今夜も止まない、エゴイズム・サーチ。
了
ーーーーーーーーーーーー
俺の妄想アタックを喰らえ!!!!!!!
っていうのが二次創作なので、耐えてください
友沢くん、かわいいね
友沢亮には、日課がある。プロ入りしてから始まった日課だ。眠る前、好きな人の名前をインターネットで検索すること。馬鹿みたいだと思っても、一度やるとやめられなくなった。先輩であり、チームメイトであるその人の名前を今日も検索ボックスに打ち込む。そうすると、その人の写真や、プロフィール、ネットニュースなんかが目の前に一気に現れる。情報の波だ。その中で一番最初に目に飛び込んで来たニュースは、やっぱり今日のヒーローインタビューの様子だった。苦々しい気持ちで、友沢はそのニュースのトピックを開く。
そのニュースの写真を飾るのは、先輩とチームのエース、猪狩守であった。この二人ときたら、学生の頃から因縁があるだの、甲子園決勝のカードを戦ったライバルだの、猪狩のトレードで今度はチームメイトになっただのと、常に話題には事欠かない。先発で延長まで投げ抜いた猪狩と、サヨナラを決めた先輩は、お立ち台に上がってもなお、いつもの通り仲良く喧嘩をしていた。それが面白いだの、可愛いだの、カイザース名物だのと、好き勝手書かれている。
案の定、今夜も友沢はしっかりと不貞腐れた気持ちになって、スマホを置いて頭から布団を被った。そもそも、あの人の名前を検索すると当たり前のように隣に並んで出てくる、その名前が気に入らなかった。猪狩守。あの人の名前でインターネット検索すると、サジェストには必ず猪狩守の名前が出てくるのだった。同級生だから、甲子園で戦ったから、ヒロインに並んで立ったからって、なんだっていうんだ。
友沢は目を閉じる。瞼の裏、あの人の名前を思って浮かぶのは、取り留めもないことばかりだ。気さくに話しかけてくる様子、笑うと年齢よりも幼く見えること、飯に誘ってくれるときの声のトーン、野球の話をするときには子供みたいな顔付きになるところ、それから。猪狩守と一緒にいるときにだけ見せる、特別な表情。
あーあ。悔しくて、考えたくなくて、瞼の裏の景色すら見たくなくて、腕で顔を覆ってみても、友沢の頭にはどうしようもないことが浮かぶ。
好きだ。敵わない。欲しい。好きだ。あの人の名前を浮かべては、仕様のないことばかりが並んで消える。今夜も止まない、エゴイズム・サーチ。
了
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俺の妄想アタックを喰らえ!!!!!!!
っていうのが二次創作なので、耐えてください
友沢くん、かわいいね
卒業
卒業
さっきまであんなに騒がしかった部室には他に誰もいなくて、二人きりだった。三年間ミーティングのために使ったホワイトボードには、部員たちによる卒業の寄せ書きがいっぱいに書き詰められている。もちろんオレも書いた。オレが部室に入った時、友沢はそれを眺めていた。
「ばかだな」
ボードを見たまま振り向きもせずにそう言った友沢の声には、特に何の感情も乗っていなかった。卒業式の後、つい感情が高じてこんなところにこんなことを書いてしまったオレとは大違いだ。なんだよ、と言い返そうとしたところで、もう一度友沢が同じ言葉を繰り返した。その音色の変化にオレはたまらず友沢の肩を掴む。振り返った友沢は、別にいつも通りだった。
「お前、こんなとこに書いてないで、口で言えよ」
「口で言えないから、書いたんだよ」
「オレが気付かなかったら」
「それならそれでいいと思ってた」
「やっぱり、ばかだ」
「もう分かったよ」
オレがお手上げとばかりに両手を上げて降伏してみせると、友沢はようやくそこで少しだけ笑った。
「返事、くれないの」
友沢は笑いながら、「言えない」と言ってオレを茶化す。こんなことになるなら、やっぱり初めからちゃんと言えば良かった。そう思って口を開こうとしたところに友沢の唇で塞がれて、オレはまた、言えないのだった。
了
ーーーーーーーーーーー
沢ピッピから主人公ちゃんにキチュするの好き好き侍
さっきまであんなに騒がしかった部室には他に誰もいなくて、二人きりだった。三年間ミーティングのために使ったホワイトボードには、部員たちによる卒業の寄せ書きがいっぱいに書き詰められている。もちろんオレも書いた。オレが部室に入った時、友沢はそれを眺めていた。
「ばかだな」
ボードを見たまま振り向きもせずにそう言った友沢の声には、特に何の感情も乗っていなかった。卒業式の後、つい感情が高じてこんなところにこんなことを書いてしまったオレとは大違いだ。なんだよ、と言い返そうとしたところで、もう一度友沢が同じ言葉を繰り返した。その音色の変化にオレはたまらず友沢の肩を掴む。振り返った友沢は、別にいつも通りだった。
「お前、こんなとこに書いてないで、口で言えよ」
「口で言えないから、書いたんだよ」
「オレが気付かなかったら」
「それならそれでいいと思ってた」
「やっぱり、ばかだ」
「もう分かったよ」
オレがお手上げとばかりに両手を上げて降伏してみせると、友沢はようやくそこで少しだけ笑った。
「返事、くれないの」
友沢は笑いながら、「言えない」と言ってオレを茶化す。こんなことになるなら、やっぱり初めからちゃんと言えば良かった。そう思って口を開こうとしたところに友沢の唇で塞がれて、オレはまた、言えないのだった。
了
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沢ピッピから主人公ちゃんにキチュするの好き好き侍
冗談みたいな話ですが
オレと友沢は、結婚した。友沢というのは友沢亮のことで、学生時代は同じ部活動で野球をしてきた同級生であるが、プロになってからは同チームで切磋琢磨するライバル同士であり、友人であり、大切な人だ。その友沢とオレは先日、入籍をした。どこの国の話とか、憲法とか法律とか、そういう野暮なことは一旦脇に置いておいてもらいたい。
入籍する前から半同棲状態だったオレたちではあるが、結婚を機に引っ越しをして、今は仲睦まじく暮らしている。引っ越しに際し、倹約家であり節約家である友沢とは金の使い方を巡ってやや揉めたが、最終的には友沢の方が折れた。華美な生活や不必要な贅沢をするつもりはない、オレと友沢が普通に暮らしていけるだけのマンションを購入した。扉を開ければ、友沢が家にいてくれる。オレは、家に帰るのが何よりも楽しみだった。
「友沢、ただいま〜」
玄関を開けても、わざわざ友沢が出迎えてくれるようなことはない。新婚ほやほやに間違いなかったが、友沢ときたら結婚する前からなんら変わりがない。少し寂しい気持ちもするが、あの友沢がオレの帰りを待ち侘びて、戸を開けた瞬間飛び出してくるようなことがあったらこわい。シャツのボタンを上からひとつふたつ外しながら、入って来た時からいい匂いのしているキッチンの方へ歩いて行く。
「ただいま」
「お帰り。早かったな」
「うん。今日の晩めしは?」
「見れば分かるだろ、カレーだ」
振り返った友沢は、おたまで鍋の中をかき混ぜながら言った。エプロンを付けたその後ろ姿にぎゅうと抱き付くと、オレの行動を咎めるように、おいと言う。その声がただの照れ隠しだととっくに知っているオレは、たまらずその口を自分のそれで塞いでしまう。一度唇を離し、二度目の口付けを交わすときには、友沢はおたまを置いて鍋の火を切っていた。そういうところが、たまらない。
「ここでするのか」
「うん。晩飯の前に友沢を食べようかな」
「馬鹿だな」
言葉だけを聞くとずいぶんひどいが、その声はこちらが恥ずかしくなるほど甘い。友沢が首の後ろに手を回して口付けをねだる間に、オレはエプロンに手を伸ばしてそのリボン結びをほどいてしまう。ほどいたそれにするりと手を掛けて、友沢を見る。
「エプロン付けてる友沢って、エロいな」
「台所でエプロンしないでどこでするんだ」
「それは、確かに」
少しだけ考えて、ほどいたばかりのリボンをもう一度結び直す。こちらに寄りかかりながら小首を傾げる友沢の仕草は、世界一かわいかった。
「なんだ?しないのか」
「いや、このままの方がエッチかな〜と思って」
「ほんとうに、お前は……」
呆れているみたいだけど、別に怒られない。それどころか、友沢の方も満更ではなさそうだ。
「ねえ友沢、キスして」
とびきりかわいらしい返事が唇にちゃんと返ってきて、オレは思わずにやけてしまいながら、腕の中の友沢を抱き直した。
「という夢を見たんだ」
「それは、夢オチにしない方が良かったんじゃないか」
「友沢、どこ見て言ってんだ?」
オレの次に風呂から上がった友沢は、こちらではなくあらぬ方向を見ながら、そう言った。早く全方位に謝罪した方が良いなどと要領の得ないことを言っている友沢を耳半分に聞きながら、オレは布団の上に寝転がる。
「オレたちが結婚したらさあー、朋恵ちゃんも翔太くんも、もちろん友沢のお母さんも、みんな一緒に暮らそうな」
「誰と誰が結婚するんだ」
「はは、友沢照れてやんの」
「……」
「オレ、これからもっと活躍するし、友沢より稼げるようにがんばるし」
「言ってろ」
濡れた髪もそこそこにタオルを放り出した友沢は、照れ隠しなのかなんなのか、寝転んでいるオレの鼻を摘んだ。少しの間見つめ合い、オレは自分から目蓋を下ろした。友沢にはその意味がちゃんと伝わっていて、少ししてから唇の感覚がちょんと触れた。かわいらしい友沢からのキスにばっちり嬉しくなってテンションの上がったオレは、起き上がってから友沢を抱き締めて、そのまま一緒になって布団の上を転がった。
「へへへ、友沢、好きだよ」
「知ってる」
「誕生日、おめでとう」
「知ってたのか」
「当たり前だろ。プレゼントもちゃんとあるよ」
「そういうのは、言わない方がいいんじゃないのか」
「サプライズの方が良かった?」
「べつに。お前がいれば、それでいい」
「ひゃー、すごい殺し文句」
二人して布団の上でくすくすと笑い合って、もう一度唇にキスをした。愛してるよと囁けば、さっきまでの余裕はどこへやら友沢は真っ赤な顔で黙ってしまったものだから、机の上に置いてあるあの小さな箱を見たらどうなってしまうのか、オレは想像してまた笑った。
了
ーーーーーーーーー
つい先日うっかり倒れて救急車に乗ってしまったので、予定していた計画が全てパァとなり、ご迷惑をお掛けした皆々様につきましては改めてお詫び申し上げます
いつもありがとうございます
今年はこのような形になってしまいましたが、友沢亮くん、お誕生日おめでとう!
来年もまた絶対お祝いさせてね!
友沢くんもみなさんもどうか健康で。ご自愛ください。
入籍する前から半同棲状態だったオレたちではあるが、結婚を機に引っ越しをして、今は仲睦まじく暮らしている。引っ越しに際し、倹約家であり節約家である友沢とは金の使い方を巡ってやや揉めたが、最終的には友沢の方が折れた。華美な生活や不必要な贅沢をするつもりはない、オレと友沢が普通に暮らしていけるだけのマンションを購入した。扉を開ければ、友沢が家にいてくれる。オレは、家に帰るのが何よりも楽しみだった。
「友沢、ただいま〜」
玄関を開けても、わざわざ友沢が出迎えてくれるようなことはない。新婚ほやほやに間違いなかったが、友沢ときたら結婚する前からなんら変わりがない。少し寂しい気持ちもするが、あの友沢がオレの帰りを待ち侘びて、戸を開けた瞬間飛び出してくるようなことがあったらこわい。シャツのボタンを上からひとつふたつ外しながら、入って来た時からいい匂いのしているキッチンの方へ歩いて行く。
「ただいま」
「お帰り。早かったな」
「うん。今日の晩めしは?」
「見れば分かるだろ、カレーだ」
振り返った友沢は、おたまで鍋の中をかき混ぜながら言った。エプロンを付けたその後ろ姿にぎゅうと抱き付くと、オレの行動を咎めるように、おいと言う。その声がただの照れ隠しだととっくに知っているオレは、たまらずその口を自分のそれで塞いでしまう。一度唇を離し、二度目の口付けを交わすときには、友沢はおたまを置いて鍋の火を切っていた。そういうところが、たまらない。
「ここでするのか」
「うん。晩飯の前に友沢を食べようかな」
「馬鹿だな」
言葉だけを聞くとずいぶんひどいが、その声はこちらが恥ずかしくなるほど甘い。友沢が首の後ろに手を回して口付けをねだる間に、オレはエプロンに手を伸ばしてそのリボン結びをほどいてしまう。ほどいたそれにするりと手を掛けて、友沢を見る。
「エプロン付けてる友沢って、エロいな」
「台所でエプロンしないでどこでするんだ」
「それは、確かに」
少しだけ考えて、ほどいたばかりのリボンをもう一度結び直す。こちらに寄りかかりながら小首を傾げる友沢の仕草は、世界一かわいかった。
「なんだ?しないのか」
「いや、このままの方がエッチかな〜と思って」
「ほんとうに、お前は……」
呆れているみたいだけど、別に怒られない。それどころか、友沢の方も満更ではなさそうだ。
「ねえ友沢、キスして」
とびきりかわいらしい返事が唇にちゃんと返ってきて、オレは思わずにやけてしまいながら、腕の中の友沢を抱き直した。
「という夢を見たんだ」
「それは、夢オチにしない方が良かったんじゃないか」
「友沢、どこ見て言ってんだ?」
オレの次に風呂から上がった友沢は、こちらではなくあらぬ方向を見ながら、そう言った。早く全方位に謝罪した方が良いなどと要領の得ないことを言っている友沢を耳半分に聞きながら、オレは布団の上に寝転がる。
「オレたちが結婚したらさあー、朋恵ちゃんも翔太くんも、もちろん友沢のお母さんも、みんな一緒に暮らそうな」
「誰と誰が結婚するんだ」
「はは、友沢照れてやんの」
「……」
「オレ、これからもっと活躍するし、友沢より稼げるようにがんばるし」
「言ってろ」
濡れた髪もそこそこにタオルを放り出した友沢は、照れ隠しなのかなんなのか、寝転んでいるオレの鼻を摘んだ。少しの間見つめ合い、オレは自分から目蓋を下ろした。友沢にはその意味がちゃんと伝わっていて、少ししてから唇の感覚がちょんと触れた。かわいらしい友沢からのキスにばっちり嬉しくなってテンションの上がったオレは、起き上がってから友沢を抱き締めて、そのまま一緒になって布団の上を転がった。
「へへへ、友沢、好きだよ」
「知ってる」
「誕生日、おめでとう」
「知ってたのか」
「当たり前だろ。プレゼントもちゃんとあるよ」
「そういうのは、言わない方がいいんじゃないのか」
「サプライズの方が良かった?」
「べつに。お前がいれば、それでいい」
「ひゃー、すごい殺し文句」
二人して布団の上でくすくすと笑い合って、もう一度唇にキスをした。愛してるよと囁けば、さっきまでの余裕はどこへやら友沢は真っ赤な顔で黙ってしまったものだから、机の上に置いてあるあの小さな箱を見たらどうなってしまうのか、オレは想像してまた笑った。
了
ーーーーーーーーー
つい先日うっかり倒れて救急車に乗ってしまったので、予定していた計画が全てパァとなり、ご迷惑をお掛けした皆々様につきましては改めてお詫び申し上げます
いつもありがとうございます
今年はこのような形になってしまいましたが、友沢亮くん、お誕生日おめでとう!
来年もまた絶対お祝いさせてね!
友沢くんもみなさんもどうか健康で。ご自愛ください。
そんなわけないだろ
そんなわけないだろ(主友)
友沢って、性欲ないのかな。そう思ってしまうのも仕方がないほど、隣を歩く男は今日も澄ました顔をしていて、オレはそのきれいな横顔にこっそりと目をやりながら心の中で息をついた。
友沢というのは同級生男子のことで、同じ野球部のチームメイトでもある。出会った初めこそ口数も少なく何を考えているのかよく分からなかったが、ひと夏、そしてもうひと夏と越す頃には随分と距離も近しくなって、気が付けばいつしか惹かれ合っていた。確かに告白をしたのはオレの方だったし、友沢の返事といえばいつものように素っ気ないものだったが、気恥ずかしそうに逃した視線や頬を染めながら初めて見せるその表情は、言葉なんかよりもずっと雄弁に友沢の気持ちを語っていた。
そうして始まったオレと友沢の交際は、順調かつ順当に清く正しい。二人で並んで歩く帰り道、たまに寄り道をする公園、コンビニ、時々は手を繋いだり、別れ際にキスをしたりもした。それでも、友沢はいつだって表情ひとつ崩さずに、涼しい顔をしている。
それどころか、この前ははっきりと拒絶をされてしまった。練習に熱が入り、結局最後まで残っていたのはオレと友沢の二人だけ、遅くまで居残り練習をしていたあの日。あの日はどうしても離れがたくて、いつものように澄ましている友沢のその先の表情が見てみたくて、何よりもっと友沢に触れたくなって、少しだけ強引にキスをした。常ならば唇同士が触れるだけのそれに、舌を捻じ込ませた。その瞬間、強い力で押し返される。こちらが悪かったのも強引だったのも重々承知しているが、なにも突き飛ばさなくても。驚いたままごめんと言ったオレの声だけが、グラウンドの真ん中で妙に響いて聞こえていた。
「じゃあ、飲み物取ってくるから、ちょっと待ってて」
そういうことを考えながら歩いていたら、あっという間に家に着いていた。自分の部屋に友沢がいるのは、不思議な感覚だった。帰ってきたオレたちと入れ違いで母さんは買い物に出て行ったから、正真正銘の二人きり。本当ならもっと緊張とか期待とかしてしまうのかもしれないけど、この前のことがあったから、さすがのオレもそんな気持ちにはならなかった。無理強いするのは絶対に嫌だったし、友沢がしたくないなら、オレは我慢できる。我慢してみせる。名目上はまもなくやってくる期末テストに向けて勉強をするために集まったのだから、勉学に励めばいいのだ。オレと友沢が集まったところで、どれほどの効果があるのかは知らないが。
「おい」
「ん?」
ドアノブを回して部屋から出ようとしたところを呼び止められ、振り返ったらそのまま腕を掴まれた。なんだと思っているうちにベッドの上に投げ出されて、呆気に取られて目を丸くしていると友沢も同じくベッドに乗り上げた。横になった自分の身体の上に友沢が跨って、そのままキス。胸ぐらを掴まれて、もう一度。躊躇うことなく差し入れられた友沢の舌の感覚にオレの頭はそこでようやく現実に追いついて、声を上げた。待て。待て待て待て。なにが起こっている。
「待っ……待てって、友沢!急にどうしたんだよ!」
「なんだ、したくないのか」
「そういうことじゃなくて、急すぎるだろ!」
「急じゃない」
「だってお前、この前キスしたら突き飛ばしたじゃんか」
「……」
「友沢はそういうことしたくないのかと思ってたし……いつも涼しい顔してるから、性欲とかないのかなって思ってた」
「バーカ」
こちらを見下ろした友沢が、挑発的な表情で微笑んでみせる。
「そんなわけないだろ」
「じゃあ、なんで」
「外で我慢出来なくなったら困るだろ」
「え」
友沢の唇に飲み込まれて、オレの言葉はそこで途切れる。柔らかくて、熱い。息を継ぐために吐き出す友沢の吐息が妙に生々しくて、オレは難しいことを考えていられなくなる。それでもこのままやられっぱなしではいられないと、乗り上げた友沢の手を引いてオレはぎゅうと力いっぱい抱き締めた。思わず勢い余って布団の上で転がると、腕の中の友沢は声を出して笑っていた。
「友沢、お前そんな顔して笑うんだな」
「そりゃ笑うだろ」
「もっと見せて」
途端恥じらう友沢の顔をつかまえて、オレは優しくキスをした。目蓋を下ろした友沢はやっぱり笑っているように見えたから、オレも一緒に笑った。
了
ーーーーーーーー
友沢ーーーー!!!!!!!!!!
一行目の問いにタイトルで答える意欲作ですね
友沢に胸ぐら掴まれてキスされる主人公ちゃん好き好き侍です
主人公ちゃんの胸ぐら掴んでキスする友沢くん好き好き好き侍です
友沢って、性欲ないのかな。そう思ってしまうのも仕方がないほど、隣を歩く男は今日も澄ました顔をしていて、オレはそのきれいな横顔にこっそりと目をやりながら心の中で息をついた。
友沢というのは同級生男子のことで、同じ野球部のチームメイトでもある。出会った初めこそ口数も少なく何を考えているのかよく分からなかったが、ひと夏、そしてもうひと夏と越す頃には随分と距離も近しくなって、気が付けばいつしか惹かれ合っていた。確かに告白をしたのはオレの方だったし、友沢の返事といえばいつものように素っ気ないものだったが、気恥ずかしそうに逃した視線や頬を染めながら初めて見せるその表情は、言葉なんかよりもずっと雄弁に友沢の気持ちを語っていた。
そうして始まったオレと友沢の交際は、順調かつ順当に清く正しい。二人で並んで歩く帰り道、たまに寄り道をする公園、コンビニ、時々は手を繋いだり、別れ際にキスをしたりもした。それでも、友沢はいつだって表情ひとつ崩さずに、涼しい顔をしている。
それどころか、この前ははっきりと拒絶をされてしまった。練習に熱が入り、結局最後まで残っていたのはオレと友沢の二人だけ、遅くまで居残り練習をしていたあの日。あの日はどうしても離れがたくて、いつものように澄ましている友沢のその先の表情が見てみたくて、何よりもっと友沢に触れたくなって、少しだけ強引にキスをした。常ならば唇同士が触れるだけのそれに、舌を捻じ込ませた。その瞬間、強い力で押し返される。こちらが悪かったのも強引だったのも重々承知しているが、なにも突き飛ばさなくても。驚いたままごめんと言ったオレの声だけが、グラウンドの真ん中で妙に響いて聞こえていた。
「じゃあ、飲み物取ってくるから、ちょっと待ってて」
そういうことを考えながら歩いていたら、あっという間に家に着いていた。自分の部屋に友沢がいるのは、不思議な感覚だった。帰ってきたオレたちと入れ違いで母さんは買い物に出て行ったから、正真正銘の二人きり。本当ならもっと緊張とか期待とかしてしまうのかもしれないけど、この前のことがあったから、さすがのオレもそんな気持ちにはならなかった。無理強いするのは絶対に嫌だったし、友沢がしたくないなら、オレは我慢できる。我慢してみせる。名目上はまもなくやってくる期末テストに向けて勉強をするために集まったのだから、勉学に励めばいいのだ。オレと友沢が集まったところで、どれほどの効果があるのかは知らないが。
「おい」
「ん?」
ドアノブを回して部屋から出ようとしたところを呼び止められ、振り返ったらそのまま腕を掴まれた。なんだと思っているうちにベッドの上に投げ出されて、呆気に取られて目を丸くしていると友沢も同じくベッドに乗り上げた。横になった自分の身体の上に友沢が跨って、そのままキス。胸ぐらを掴まれて、もう一度。躊躇うことなく差し入れられた友沢の舌の感覚にオレの頭はそこでようやく現実に追いついて、声を上げた。待て。待て待て待て。なにが起こっている。
「待っ……待てって、友沢!急にどうしたんだよ!」
「なんだ、したくないのか」
「そういうことじゃなくて、急すぎるだろ!」
「急じゃない」
「だってお前、この前キスしたら突き飛ばしたじゃんか」
「……」
「友沢はそういうことしたくないのかと思ってたし……いつも涼しい顔してるから、性欲とかないのかなって思ってた」
「バーカ」
こちらを見下ろした友沢が、挑発的な表情で微笑んでみせる。
「そんなわけないだろ」
「じゃあ、なんで」
「外で我慢出来なくなったら困るだろ」
「え」
友沢の唇に飲み込まれて、オレの言葉はそこで途切れる。柔らかくて、熱い。息を継ぐために吐き出す友沢の吐息が妙に生々しくて、オレは難しいことを考えていられなくなる。それでもこのままやられっぱなしではいられないと、乗り上げた友沢の手を引いてオレはぎゅうと力いっぱい抱き締めた。思わず勢い余って布団の上で転がると、腕の中の友沢は声を出して笑っていた。
「友沢、お前そんな顔して笑うんだな」
「そりゃ笑うだろ」
「もっと見せて」
途端恥じらう友沢の顔をつかまえて、オレは優しくキスをした。目蓋を下ろした友沢はやっぱり笑っているように見えたから、オレも一緒に笑った。
了
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友沢ーーーー!!!!!!!!!!
一行目の問いにタイトルで答える意欲作ですね
友沢に胸ぐら掴まれてキスされる主人公ちゃん好き好き侍です
主人公ちゃんの胸ぐら掴んでキスする友沢くん好き好き好き侍です
サヨナラ
サヨナラ(主人公×友沢亮)
失恋したら、髪を切る。もはや迷信めいた、ある種古めかしい、いっそ儀式のような、そういうことをまさか自分がすることになろうとは、友沢亮は鏡の中を見て、自分のことながらどこか他人事のように思っていた。もともとそこまで髪が長いわけではなかったが、なんとなく伸びていたそれをばっさり切った。事実ではなく、これから起こる予定の結果に対して。つまり友沢には、これから失恋する予定があった。
言葉にすると馬鹿のようであるが、友沢にとっては、一世一代の覚悟のつもりだった。己にこのような女々しい、未練とも執着とも取れる感情があることに友沢は驚いていた。そのくらい好きになってしまっていた。元は同級生の男だ。学生の頃は部活動で、プロになってからはなんと同じ球団で野球をして来た。もう何年になるのか、数えるのも面倒くさい。振り返れば友沢の野球人生の大半はその男と共にあり、またその男がいなければ、今の友沢はいないといっても過言ではないほど、友沢にとって男は人生の一部となっていた。
そういう相手をつかまえて、今になってわざわざ告白なんてしようというのだから、我ながら酔狂にもほどがある。短くなった髪を無意識に指で弄びながら、友沢は待ち合わせの場所で待っていた。食事をするという体でわざわざ呼び付けたのだ。友沢の決意など知る由もないその男は、いつものように返事を寄越して、友沢はその気心知れた様子が嬉しいのか悲しいのか分からなくなった。
男にとって自分は昔からただの同級生であり、そして友人であり、チームメイトなのだ。もちろん、男が自分のことを特別だと思ってくれていることも、ほかの他人よりも親しくしていることも知っている。そうでなければ、赤の他人の母親の手術費として、己の契約金を全額渡したりはしないだろう。ようやく掴んだプロ入りの切符、自分の契約金と男の契約金を足して、病気の母親は手術をすることが出来た。元気な母の顔を見るたびに、感謝の念が湧き上がる。その頃から確実に、男は友沢にとって特別な存在であり、そして好意の対象だった。ただ、好きだと思った。
「ごめん友沢、ちょっと遅れた」
「オレも今来たところ」
「あ、髪切ったんだな」
似合うよと笑う男に友沢は、礼を言う代わりに好きだと言った。きょとんとした男はしかし、オレもだよなどと言うものだから、今度は友沢が目を丸くする番だった。オレのは、そういう意味じゃない。じゃあ、どう言う意味。特別な、好きってことだ。オレも友沢のこと、好きだよ。だから、違う。なにが。お前はオレのこと、好きじゃない。友沢には、分かるの。ああ。
なんだかおかしなことになった。何を言っても話の通じない男に、友沢は苛々もしていた。人より表情に出ないだけで、友沢は結構短気な面がある。
「あ!分かった!」
「なにがだよ」
出鼻を挫かれ不貞腐れた友沢は、投げやりに返事をする。
「愛してるって言えば、通じるだろ?」
にこにこ。効果音を当ててやりたくなるほどの満面の笑みに、友沢は固まった。遅れてやって来る、理解と自覚。男は笑っている。男の顔が近付き、話す吐息が友沢の耳に触った。ぼん。これはたぶん、自分の顔から火が出たときの音だ。
「友沢がオレのこと好きなの知ってたし、オレも友沢のこと、大好きだよ」
全部分かったように笑う男に、友沢はもう勘弁してくれとばかりに目を閉じた。切った髪と共に、友沢の日常もまた、どこかに行ってしまった。さっきまでの友沢は、もういない。
了
ーーーーーーーーーー
お幸せに!
失恋したら、髪を切る。もはや迷信めいた、ある種古めかしい、いっそ儀式のような、そういうことをまさか自分がすることになろうとは、友沢亮は鏡の中を見て、自分のことながらどこか他人事のように思っていた。もともとそこまで髪が長いわけではなかったが、なんとなく伸びていたそれをばっさり切った。事実ではなく、これから起こる予定の結果に対して。つまり友沢には、これから失恋する予定があった。
言葉にすると馬鹿のようであるが、友沢にとっては、一世一代の覚悟のつもりだった。己にこのような女々しい、未練とも執着とも取れる感情があることに友沢は驚いていた。そのくらい好きになってしまっていた。元は同級生の男だ。学生の頃は部活動で、プロになってからはなんと同じ球団で野球をして来た。もう何年になるのか、数えるのも面倒くさい。振り返れば友沢の野球人生の大半はその男と共にあり、またその男がいなければ、今の友沢はいないといっても過言ではないほど、友沢にとって男は人生の一部となっていた。
そういう相手をつかまえて、今になってわざわざ告白なんてしようというのだから、我ながら酔狂にもほどがある。短くなった髪を無意識に指で弄びながら、友沢は待ち合わせの場所で待っていた。食事をするという体でわざわざ呼び付けたのだ。友沢の決意など知る由もないその男は、いつものように返事を寄越して、友沢はその気心知れた様子が嬉しいのか悲しいのか分からなくなった。
男にとって自分は昔からただの同級生であり、そして友人であり、チームメイトなのだ。もちろん、男が自分のことを特別だと思ってくれていることも、ほかの他人よりも親しくしていることも知っている。そうでなければ、赤の他人の母親の手術費として、己の契約金を全額渡したりはしないだろう。ようやく掴んだプロ入りの切符、自分の契約金と男の契約金を足して、病気の母親は手術をすることが出来た。元気な母の顔を見るたびに、感謝の念が湧き上がる。その頃から確実に、男は友沢にとって特別な存在であり、そして好意の対象だった。ただ、好きだと思った。
「ごめん友沢、ちょっと遅れた」
「オレも今来たところ」
「あ、髪切ったんだな」
似合うよと笑う男に友沢は、礼を言う代わりに好きだと言った。きょとんとした男はしかし、オレもだよなどと言うものだから、今度は友沢が目を丸くする番だった。オレのは、そういう意味じゃない。じゃあ、どう言う意味。特別な、好きってことだ。オレも友沢のこと、好きだよ。だから、違う。なにが。お前はオレのこと、好きじゃない。友沢には、分かるの。ああ。
なんだかおかしなことになった。何を言っても話の通じない男に、友沢は苛々もしていた。人より表情に出ないだけで、友沢は結構短気な面がある。
「あ!分かった!」
「なにがだよ」
出鼻を挫かれ不貞腐れた友沢は、投げやりに返事をする。
「愛してるって言えば、通じるだろ?」
にこにこ。効果音を当ててやりたくなるほどの満面の笑みに、友沢は固まった。遅れてやって来る、理解と自覚。男は笑っている。男の顔が近付き、話す吐息が友沢の耳に触った。ぼん。これはたぶん、自分の顔から火が出たときの音だ。
「友沢がオレのこと好きなの知ってたし、オレも友沢のこと、大好きだよ」
全部分かったように笑う男に、友沢はもう勘弁してくれとばかりに目を閉じた。切った髪と共に、友沢の日常もまた、どこかに行ってしまった。さっきまでの友沢は、もういない。
了
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お幸せに!
おれたちは勉強が出来ない
おれたちは勉強が出来ない(主友)
唐突だが、オレと友沢は赤点候補生の筆頭ということで、このたび試験に備えて勉強するよう異例の御達しが出た。顧問や同級生からならまだしも、後輩部員にまで言われてしまっては、いくら野球バカのオレたちといえども無視することが出来なかった。
空き教室を借り受けて、観念してテキストを開いている。赤点を取った後の補習や再テストを思えば、なるほど始めから及第点を取った方が無駄がない。理屈ではそうだが、なにせ勉強は好きじゃないのだ。オレも友沢も、ペンを握ってノートに書きつける時間があるのならば、バットを握って、ボールを追い掛けていたい。
それでも、試験前くらいは勉学に励まなければいけないオレたちは悲しいかな学生、高校生、いくらプロ野球選手が目標だからといって、勉学を疎かにすることは出来ない。そもそも卒業出来なければ、プロ野球選手にもなれない。
「なに見てるんだ。集中しろ」
目の前でオレと同じようにテキストを開いている友沢はこちらを一瞥するとすぐにまた視線を教科書に落として、さも勉強しているかのような仕草を見せた。オレがペンを握りながらもうだうだと余計なことを考えているように、友沢もさっきから一ページとして進んでいないことはすでに気が付いている。
誰もいない空き教室、夏は日が長いので、夕方になってもまだまだ明るい。日の光に透けた友沢の髪がきらきらと光っていた。家に帰ったところで勉強しないので、仕方なく二人して集まっては試験勉強をすることにしている。無論、効果の程は保証しかねる。開けっ放しの窓から風が一陣吹き抜けて、友沢の髪を揺らしていった。机に影を落とすほどの長い睫毛が持ち上がって、無遠慮にこちらを見る。
「見てるだけでいいのか」
顔はいつも通りの無表情だが、挑発的な声色だった。暑さから汗で張り付いた前髪を鬱陶しそうに指でよける仕草。その腕を捕まえて、オレは少々無理な体勢で立ち上がった。引いた椅子がガタンとそのまま後ろに倒れて、品のない音を立てる。掴んだ腕を引き寄せ、構わず唇を合わせると、友沢の口元は緩んでいた。ゆっくり離れると、友沢は隠しもせずにやっぱり笑っていた。
「それだけでいいのか」
言ったな。持っていたペンを放り出し、空いた手をその頬へ添えると、オレはもう一度友沢の唇を奪った。奪われることを待っていたそこは薄く開いていて、オレの舌の侵入を容易く許す。友沢の方から絡められたそれにオレは目を閉じて、友沢って普段は体温低いのにここはすごい熱いんだよなあとか、そういうことを考えていた。
「もう終わりか」
「友沢ってさあ」
「なんだ」
「誘ってるのか?」
「分からないのか」
馬鹿真面目に答えてみせた友沢にオレは白旗を振って、ペンもノートも盛大に放り出した。笑った友沢の顔がかわいくて、オレはもう一度だけキスをした。
了
ーーーーーーーーー
主友いいーわーーー効く
唐突だが、オレと友沢は赤点候補生の筆頭ということで、このたび試験に備えて勉強するよう異例の御達しが出た。顧問や同級生からならまだしも、後輩部員にまで言われてしまっては、いくら野球バカのオレたちといえども無視することが出来なかった。
空き教室を借り受けて、観念してテキストを開いている。赤点を取った後の補習や再テストを思えば、なるほど始めから及第点を取った方が無駄がない。理屈ではそうだが、なにせ勉強は好きじゃないのだ。オレも友沢も、ペンを握ってノートに書きつける時間があるのならば、バットを握って、ボールを追い掛けていたい。
それでも、試験前くらいは勉学に励まなければいけないオレたちは悲しいかな学生、高校生、いくらプロ野球選手が目標だからといって、勉学を疎かにすることは出来ない。そもそも卒業出来なければ、プロ野球選手にもなれない。
「なに見てるんだ。集中しろ」
目の前でオレと同じようにテキストを開いている友沢はこちらを一瞥するとすぐにまた視線を教科書に落として、さも勉強しているかのような仕草を見せた。オレがペンを握りながらもうだうだと余計なことを考えているように、友沢もさっきから一ページとして進んでいないことはすでに気が付いている。
誰もいない空き教室、夏は日が長いので、夕方になってもまだまだ明るい。日の光に透けた友沢の髪がきらきらと光っていた。家に帰ったところで勉強しないので、仕方なく二人して集まっては試験勉強をすることにしている。無論、効果の程は保証しかねる。開けっ放しの窓から風が一陣吹き抜けて、友沢の髪を揺らしていった。机に影を落とすほどの長い睫毛が持ち上がって、無遠慮にこちらを見る。
「見てるだけでいいのか」
顔はいつも通りの無表情だが、挑発的な声色だった。暑さから汗で張り付いた前髪を鬱陶しそうに指でよける仕草。その腕を捕まえて、オレは少々無理な体勢で立ち上がった。引いた椅子がガタンとそのまま後ろに倒れて、品のない音を立てる。掴んだ腕を引き寄せ、構わず唇を合わせると、友沢の口元は緩んでいた。ゆっくり離れると、友沢は隠しもせずにやっぱり笑っていた。
「それだけでいいのか」
言ったな。持っていたペンを放り出し、空いた手をその頬へ添えると、オレはもう一度友沢の唇を奪った。奪われることを待っていたそこは薄く開いていて、オレの舌の侵入を容易く許す。友沢の方から絡められたそれにオレは目を閉じて、友沢って普段は体温低いのにここはすごい熱いんだよなあとか、そういうことを考えていた。
「もう終わりか」
「友沢ってさあ」
「なんだ」
「誘ってるのか?」
「分からないのか」
馬鹿真面目に答えてみせた友沢にオレは白旗を振って、ペンもノートも盛大に放り出した。笑った友沢の顔がかわいくて、オレはもう一度だけキスをした。
了
ーーーーーーーーー
主友いいーわーーー効く
kiss me!!
今まで生きてきて、自分の見た目について関心を持ったことなど一度もなかった。容姿、外見、見目、顔の良し悪し。そんなものは野球をするのに一切関係がないからだ。友沢亮という人間は、そういう考えを持って生きてきた。己の容姿など、最も興味のないことのうちのひとつだった。あの日までは。
「友沢、かわいい」
あの日、そんなことを言って顔を寄せてきた男のことを思い出すと、友沢はいても経ってもいられなくなる。キスを、そう、正真正銘友沢にとって初めてのキスを、あろうことかそんなことを言いながら奪った男は、はにかみながら頬を赤らめ、自分の方がよほどかわいらしい態度であった。友沢といえば、いつもの通り表情筋の動きに乏しいその顔のまま、黙っていただけだ。
鏡をまじまじと見る。かわいい。かわいいのか、これが。今までこんな風に鏡を覗き込んだこともなければ、己の面差しについて何ら感想を持ったこともないので分からない。とにかく分からない。
「友沢、遅かったけど大丈夫か?そんなに飲んでなかった気がするけど、気分悪い?」
「いや、べつに」
友沢は大丈夫と答えたのだが、相手はそろそろ出ようかと言って伝票を持った。騒がしい大衆居酒屋の一角、長々とトイレから帰ってこなかった友沢を相手は心配した目で見ている。特別酔ってなどいないのに、友沢はまるで酔った時のように顔や身体が熱っぽくなるのを感じていた。どくり、胸が跳ねる。相手の目に今の自分はどんな風に映っているのか、そんなことばかりが気になっていた。
「あそこ、安いわりに美味かったな」
きっちりワリカンでの会計を済ませて外へ出ると、男はお腹いっぱい!と言って満足そうに笑っていた。そろそろ冬の足音が聞こえてきそうな夜だったが、火照った身体には冷たい風も心地良くて、友沢はつられたように口元を緩めた。腹ごなしとばかりに、わざと遠回りをして歩いて帰る。
「じゃあ、また明日な。友沢」
駅の方に歩いて行きながら手を振る男に友沢は頷いて、そのままその背中を眺めていた。今日はキスされなかった。今日の自分は、かわいくなかったからだろうか。馬鹿な。一体何を考えているんだ。早く帰って素振りでもして、一刻も早くこんな思考は打ち消さなければいけない。ふいに、男が振り返る。見るな。自分が今どんな顔をしているのかなんて知りたくもないのに、こちらへやって来た男は友沢を見て言った。
「そんなかわいい顔されると、帰りたくなくなるんだけど」
かわいい、誰が、自分が、まさか、かわいいなんて言われて嬉しいなんて、嘘だ!叫び出したい友沢の唇を男が塞いでしまったので、友沢は今日もやっぱり黙っている。かわりに服の裾を掴んでもう一度と、ねだった。
kiss me!!
ーーーーーーー
すぐ乙女チック沢亮くんにしてしまうけどこういうのが好きなんだ!!!!!!(拳を突き上げる絵文字)
「友沢、かわいい」
あの日、そんなことを言って顔を寄せてきた男のことを思い出すと、友沢はいても経ってもいられなくなる。キスを、そう、正真正銘友沢にとって初めてのキスを、あろうことかそんなことを言いながら奪った男は、はにかみながら頬を赤らめ、自分の方がよほどかわいらしい態度であった。友沢といえば、いつもの通り表情筋の動きに乏しいその顔のまま、黙っていただけだ。
鏡をまじまじと見る。かわいい。かわいいのか、これが。今までこんな風に鏡を覗き込んだこともなければ、己の面差しについて何ら感想を持ったこともないので分からない。とにかく分からない。
「友沢、遅かったけど大丈夫か?そんなに飲んでなかった気がするけど、気分悪い?」
「いや、べつに」
友沢は大丈夫と答えたのだが、相手はそろそろ出ようかと言って伝票を持った。騒がしい大衆居酒屋の一角、長々とトイレから帰ってこなかった友沢を相手は心配した目で見ている。特別酔ってなどいないのに、友沢はまるで酔った時のように顔や身体が熱っぽくなるのを感じていた。どくり、胸が跳ねる。相手の目に今の自分はどんな風に映っているのか、そんなことばかりが気になっていた。
「あそこ、安いわりに美味かったな」
きっちりワリカンでの会計を済ませて外へ出ると、男はお腹いっぱい!と言って満足そうに笑っていた。そろそろ冬の足音が聞こえてきそうな夜だったが、火照った身体には冷たい風も心地良くて、友沢はつられたように口元を緩めた。腹ごなしとばかりに、わざと遠回りをして歩いて帰る。
「じゃあ、また明日な。友沢」
駅の方に歩いて行きながら手を振る男に友沢は頷いて、そのままその背中を眺めていた。今日はキスされなかった。今日の自分は、かわいくなかったからだろうか。馬鹿な。一体何を考えているんだ。早く帰って素振りでもして、一刻も早くこんな思考は打ち消さなければいけない。ふいに、男が振り返る。見るな。自分が今どんな顔をしているのかなんて知りたくもないのに、こちらへやって来た男は友沢を見て言った。
「そんなかわいい顔されると、帰りたくなくなるんだけど」
かわいい、誰が、自分が、まさか、かわいいなんて言われて嬉しいなんて、嘘だ!叫び出したい友沢の唇を男が塞いでしまったので、友沢は今日もやっぱり黙っている。かわりに服の裾を掴んでもう一度と、ねだった。
kiss me!!
ーーーーーーー
すぐ乙女チック沢亮くんにしてしまうけどこういうのが好きなんだ!!!!!!(拳を突き上げる絵文字)

