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毒入り手料理事件

カイザース/主進


ことこと煮られた鍋を見つめながら、そろそろ頃合いかもしれないと箸を持った。意味もなくぐるりとひと混ぜしてみる。料理などほとんどしたことがないので見よう見真似である。以前作ってくれた彼の仕草を思い出しながらそろそろとボウルを掴んだ。
中には溶き卵が入っている。割るときに入ってしまった殻はさっき苦労して取り出したところだ。片手でぱかんと卵を割って笑う彼を思い出しながらゆっくりと卵を溶き入れた。

弱火で熱されたそれはいい具合に煮込まれ、米と卵がしっかり絡んで美味そうに見えた。初めてにしては上出来だろう。少し蒸らすと美味しくなるんですよ、確か彼はそう言っていたはずだと蓋を被せる。
その間に皿とスプーンを用意して、買ったばかりの風邪薬を取り出した。病気をしないので常備薬は置いていないと言っていた言葉の通り、彼の家には薬箱やそれに類するものは何もなかった。なんにでも用意周到に臨む彼にしては意外なことだと思う。

火を切って蓋を開けるとふわふわと白い湯気が立ち上った。作った粥を椀によそって、仕上げに刻んだネギを振りかけた。なかなか見た目は美味そうだ。自分の分もたっぷりよそっていると、待ってましたとばかりにぐうと腹が鳴る。昨日の夜ここにやってきてから、実は何も食べていないのだった。

二人分の食事と薬を盆に持って、オレは彼の寝ている寝室のドアを開けた。呼びかけても返事はない。さっきまで起きていたのに、また眠ってしまったようだ。しかし39度も熱があるのなら仕方ないことだ。これでも少しは下がってきた方だった。

どうしようかと少しだけ悩んで、やっぱり自分だけでも食べてしまおうとスプーンを持つ。ベッド脇であぐらをかいて行儀の悪いことこの上ないが、このくらいはどうか許してほしい。少しでも傍にいたいが、なにはともあれ腹が減っては戦はできないのである。返事をするように、腹の虫がきゅるると情けない声で鳴いた。
いただきます、小さく手を合わせてスプーンを持つ。ふうふうと十分に冷ましてからゆっくりと口に運んだ。まるで毒味のようである。一体どんな出来栄えかと心配だったが、食べてみると普通の卵粥だった。可もなく不可もないといった感じだ。

「うん、まあ食べれるな」
「パワプロさん」

呼び掛けた進くんがくるりと寝返りを打ってこちらを見ていた。額に乗っかっていた濡れタオルが枕の上に落ちる。それを拾い上げながら、オレは立ち上がって彼の瞼にかかった前髪をかきあげた。そのまま指に絡めるようにして優しく髪をすく。

「進くん。起こしちゃったかな、ごめん」
「いえ、僕こそ寝てばっかりで…」
「病人が何言ってんの」
「美味しそうな匂いがします」

少しだけつらそうに眉をしかめて、進くんはベッドに体を起こした。それはふわふわと頼りない動作で、うるんだ瞳は瞬きをするたびに揺れていた。少し見ているだけで、かなり無理をしているのが分かる。

「いいから寝てなって」
「それ、パワプロさんが作ったんですか?」

視線は、横に置かれた粥を真っ直ぐに見つめていた。

「ああ、うん。進くんが作ってくれたのを思い出しながら見よう見真似でね。食べれたらと思ったんだけど、まだつらそうだし今は寝てなよ」
「僕、食べたいです」
「だいじょうぶ?」
「はい」
「じゃあ、ちょっとだけでも。卵粥だよ」

進くんに粥の入った椀とスプーンを差し出そうとして思いとどまった。変なところで動きを止めたオレを進くんが不思議そうな顔で眺めている。
スプーンで粥をひとすくいして、オレはそのまま彼の口元まで持っていった。

「せっかくだしオレが食べさせてあげる」
「そんな、悪いですよ」
「いいの、オレがやりたいんだから」

ふうふうと冷まして改めて彼の方へ差し出した。戸惑いがちに開かれた唇へゆっくりとスプーンを持っていく。ぱくりと粥を食べた進くんは、美味しいですと言った後、だけど予想以上に恥ずかしいですねと言ってほんの少し顔を伏せた。熱で火照った顔がさらに赤くなったような気がする。

「進くんが作ったみたいに美味しくなくて悪いんだけど、まあ食えるから、今回はこれで勘弁してやって」
「…」
「進くん?」
「僕、変ですね、風邪を引いたことがこんなに嬉しいなんて」

力ない笑顔ではあったが、はにかんだ顔はいつもの進くんだった。見ていると、今度は彼の方からあーんと言って口を開いた。そこでようやくオレもこの行為の気恥ずかしさに気付いたのだが、いまさら引っ込めるわけにもいかず、オレは彼の要求するままスプーンを口に運んだ。ゆっくりとではあったが、もぐもぐと咀嚼する彼はとても美味しそうに粥をたいらげてしまうのだった。

「ごちそうさまでした」
「結局全部食べちゃったね」
「とっても美味しかったです」

にこにこと笑う進くんは満足そうだった。くしゃと髪をかき混ぜるように撫でるとくすぐったそうに笑った。その仕草にオレはたまらない気持ちになる。
薬を飲んだ進くんは、再び横になるとぽつぽつと話し始めた。

「起きたときにいつでもパワプロさんがいてくれるなんて夢みたいです」
「夢じゃないから、安心して寝てていいよ」
「ふふ。パワプロさんだいすき」
「…照れるなあ」
「おかゆ、おいしかったです」
「なんとか食べられるものが出来て良かったよ」
「また今度、パワプロさんの作ったごはんが食べたいです」

オレは進くんの手料理が食べたいけどなあ、そう言ったときにはもう彼は瞼を下ろしており、しばらくすると寝息が聞こえてきた。すうすうと安らかそうな寝息を立ててはいるものの、顔はどこか苦しそうだ。
布団を首までかけてあげてから、オレはタオルを冷水で絞りなおした。体温を測るように額に触れてそっと冷たいタオルを乗せる。完全に寝入った顔を見届けてから、オレは自分の分の粥を持った。うん、ごく普通の卵粥だ。


オレが彼の住むマンションにやってきたのは昨日の夜のことだ。風邪を引いて動けないというメールをもらってすぐにすっとんできた。
オフシーズン、まもなく年末年始の足音が聞こえてくる頃、進くんからの連絡が突然ぷっつりと途絶えたのだった。返信のない1日目はそれほど気にならなかったが、3日経った辺りでだんだん心配になってきた。あの几帳面な彼が返信をせずに3日も放っておくなんて今までにはなかったことだ。加えて電話をかけても一切の音沙汰なし。どうしようかと思っているところに届いたのが一通のメールだった。
返信できてなくてごめんなさい。風邪をこじらせたようで、ベッドから動けません。
ディスプレイを眺めるのもそこそこに、オレは財布と上着を掴んで飛び出したのだった。

もらっていた合いカギで部屋に入ると、メールの文面通り進くんはベッドに横になっていた。ひどく衰弱している様子で、少しの受け答えにも息が切れるようだった。行きがけに買ってきたスポーツドリンクを一口飲ませると、彼はおいしそうに喉を鳴らし結局一本を一気に飲み干してしまうのだった。聞くと、丸一日ほとんど飲まず食わずで横になっていたらしい。薬の置いてある場所を尋ねたが、薬はおろか体温計も何もないと言うので、オレは看病に必要だと思われるものを超特急で買い出しに出かけて一晩中彼の横にくっ付いていた。
熱を測ると40度近くもあり、あまりに苦しそうに息を吐く様子が心配でたまらず救急車を呼ぶことも真剣に考えた。しかし、頑なに大丈夫だと言い張る彼の言葉を聞いてオレはしぶしぶその言葉に従った。点滴を打てば随分楽になると思うのだが、何度言っても「病院は嫌い」の一点張りで進くんが首を縦に振ることはなかった。
そうこうしているうちに夜が明け、一晩ぐっすり寝たら大分楽になったようなのでオレは胸をなでおろした。

ホッとすると同時に急激な空腹を覚えたオレは、無断ながらに冷蔵庫を開けて食べられそうなものを探した。そこで見つけたのが、冷凍された米とパックに入ったままの卵だった。綺麗に真空パックされた米の袋を取り出しながら、卵粥を作ろうと思い立つ。卵粥はオレの好物でもあった。
「子供の頃、風邪のときしか食べれないと思うと余計おいしく感じてさ」
「確かに、そういうのってありますよね。あ、良かったら僕今から作りますよ」
ちょうど卵もたくさんありますしね。そんな会話がきっかけで、あの日を境に進くんはよくオレに卵粥を作ってくれるようになった。彼の料理の腕前は一級品で何を作らせても完璧だったが、卵粥はその中でも特に美味しかった。


安らかに眠っている進くんの寝顔を眺める。
毎日のように彼の作ったご飯を食べていたせいで、たった一週間ほど食べていないだけでずいぶんと口寂しく感じていた。見真似で作った自作の粥のせいでその気持ちは余計に大きくなってしまった。
彼の作ったご飯はなぜあんなに美味しいのだろう。何を入れたらそんなにおいしくなるの?半分冗談で、しかし半分は本気で尋ねてみたことがあった。
「秘密のエッセンスが入っているんですよ」
なんちゃってねと言ってあのとき彼は悪戯っぽく笑ったが、まさしくその通りに違いないと今のオレならば分かる。それはきっと、オレにしか効かない特別な調合のエッセンスに違いない。だってこんなにも効果抜群なのだ。

もしかして毒でも入ってんじゃないの?なんてふざけて言ってみても、眠っている進くんが答えることはない。
「君の作ったものだったら、毒入りでも大歓迎なんだけどね」
返事がないのをいいことに、オレは自分でも寒気のするような甘いセリフを2、3呟いて一人赤面している。一体何をやっているんだか。進くんがいないとオレはこんな風になってしまうのである。
だから、早くよくなってね。
もう一度だけ彼の髪に触れ、オレはぬるくなってしまったタオルの水を替えるべくそっと立ち上がった。


――――――――
公式が大正義だから仕方ないね
高校生のあの時から進は薬と病院がだいきらい だったら私が萌える

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すべては愛に起源する

ラブレターの続き
猪狩兄弟


鞄の中をいくら探してみても目当てのものは見当たらなかった。ボクとしたことが、辞書を部室に置き忘れてきたようだ。
教科書や辞書の類を学校に置いたままにできないボクは、当然のように今日も鞄の中にきちんとしまった。確かにそのはずだったのだが、家に帰って鞄を開けるとそこに辞書はない。おかしいなと思って記憶を探ると、そういえば部室で古典のプリントをやっていたパワプロに貸してやったのだった。
なぜわざわざこんなところで、とは思うのだが、パワプロが言うには今日が期限であるそれをすっかり忘れていたらしい。話を聞くとそのプリントは再提出をくらったものらしく、どうしても今日中に出さないとまずいという。
パワプロが大騒ぎしながら取り掛かっている問題のプリントをちらりと覗き見ると、ボクのクラスではとっくに終わっている範囲であった。しかも内容もそれほど難しいものではない。20、30分もあれば片付くだろう。しかしパワプロにとってはそうではないらしく、唸りながら周りに泣きつくも全く進んでいないようだった。その様子がうっとうしく、なによりあまりにもでたらめな解答に見かねて口を出してしまったところ、パワプロのやつはこれ幸いにと今度はボクに泣きついてきた。

猪狩、頼む、あとでなんでもおごってやるから!

縋り付くパワプロの気迫はすさまじくそれを無視することもできないまま、なにより今日は気分も良かったのでボクは少しだけ勉強をみてやることにした。ほんの暇つぶし、気まぐれである。
いつもパワプロの酷い点数を目にしていたボクは(部室でいつも矢部や他の連中と競い合っている。ボクからすれば全員どんぐりの背比べに変わりない)、野球はともかく勉学に関してはどうしようもないやつだと思っていた。しかし、隣で少し教えてやったことでボクはその認識を改めることになった。
言われたことはきちんと理解できるし、なにより呑み込みが早い。ボクが少しアドバイスをしてやると、パワプロはみるみるうちに空白のプリントを埋めていって、結局ものの数十分で片付けてしまった。野球と一緒でやればできるやつなのだ、こいつは。
乗り掛かった船なので仕方なく最後まで付き合ってやったのだが、パワプロは大袈裟に礼を言った後、猪狩って意外といいやつだよな!などとのたまうのだった。意外とは余計である。
失礼な発言に腹も立ったが、ぶんぶんと振り回しながら手を握られたのではそれ以上なにも言えない。
かくしてパワプロのプリントは無事に提出され、ボクは辞書を部室へ置き忘れてきたのだった。

「進、ボクだ。開けるぞ」

さてどうしようかと思い立ち、結局ボクは弟のものを借りることにした。学校指定のものなので、学年が違っても使っているものは一緒である。弟もボクと一緒できちんと教科書類を持ち帰る性分であること、また電子辞書より紙の辞書を好むということも知っていた。
電子辞書は嫌いだ。勉強するのなら紙の辞書をめくると決めている。紙を繰ってページを探したほうが勉強になるし、なにより頭によく入るのだ。

コンコンとノックをして待つも返答がなく、ボクは呼び掛けながら弟の部屋を開けた。やはり進はいないようだ。
そういえばさっき誰かがキッチンを使っていたような気がするが、あれが進だったのかもしれない。弟は昔から料理が得意だったし、キッチンに立つのが好きだった。
特に最近は菓子作りに凝っているらしく、この頃はケーキだのクッキーだのを作っていることが多い。つい先日も甘い香りに誘われてキッチンへと向かったのだが、そこには焼きたてのケーキと奮闘する弟の姿があり、試作でも良いのならといってシフォンケーキを食べさせてもらった。それは今まで食べたことがないくらいにふわふわしていておいしかった。
弟は野球も勉強も料理だってなんでもできる。

弟の部屋はいつだってきちんと整理整頓されている。探せば辞書くらいどこかにあるのだろうが、さすがに勝手に持って行くのは気が引ける。もう少ししたらまた来ようと思って、ボクはそのまま部屋を後にしようとした。
しかし扉を閉める際、開きっぱなしの鞄がふと目についた。進にしてはだらしがなく開きっぱなしにされたそれは中身が丸見えになっており、いちばん上に乗っかっている薄桃色の封筒が目に入った。宛名部分に弟の名前が書かれているだけのそれに合点がいってボクはほんの少しだけ複雑な気持ちになる。ラブレターにちがいなかった。弟もこういうものをもらう年になったのだなあとしみじみと感慨深くもあった。
普段野球部の練習を見ているだけでも進が女生徒に人気があるのはよく知っていたが、しかしボクにとって弟というのはいつまで経っても弟のままである。さみしいような面映ゆいような、不思議な心持だ。あの手紙の主に進はなんといって返答するのであろう。

「兄さん。なにか用ですか?」

唐突に呼ばれて振り返ると、両手に皿を持った進がにこにこと笑っていた。辺りが甘い香りでいっぱいになる。皿に乗っているのは山盛りになったクッキーだった。

「僕に用でした?」
「ああ、辞書を借りようと思って…」

ボクが答えると、進はああなるほどねと言って部屋へと入っていった。ボクには「なるほどね」の部分が何を指しているのか分からなかったのだが、得心がいっているらしい進はボクが何も言わなくても黙って古典の辞書を差し出してきた。にっこりと笑う弟に礼を言って辞書を受け取る。

「クッキー、たくさん焼いたんだな」
「ええ。たくさんありますし、兄さんも少し食べます?」

まだ焼きたてですから、とすすめられたので、ボクは遠慮なくクッキーをいただくことにした。進の言う通り焼きたてらしいそれはまだ温かく、柔らかかった。香ばしいアーモンドの香りとチョコレートの甘さがほど良く合っていておいしい。そういえば進はアーモンドをはじめとしたナッツの類をあまり好まないような気がしていたのだが、ボクの気のせいだっただろうか。

「美味いな」
「ほんとう?今回はちょっと自信なかったんですよ。自分で食べてみてもよく分からなくて」

はにかみながら笑う弟はどこまでも愛らしく、女生徒から「かわいい」と言って評されているのがよく分かった。
甘いクッキーに感化されたのかもしれない、普段はこんなことを言わないのだが、ボクはほんの出来心でさっき見かけた手紙について進に尋ねてみた。相変わらず開いたままの鞄からは手紙が丸見えになっている。視線をそっとそちらに向けると、進もそれに気が付いたようだった。

「進は、やっぱりモテるんだな」
「やめてくださいよ。兄さんまで」

兄さんまで、ということは、他の誰かにもこのように囃し立てられたことがあるのだろうか。やっぱりボクの弟はモテるのだなと他人事ながら鼻が高くなるような気持ちだった。

「だいたい、僕には必要のないものですしね」

そう言って立ち上がった進は鞄の中から手紙をつまみ上げると、なんでもない顔をしてそれをくずかごへ放った。あまりに自然な動作に反応が遅れたが、やっぱりにこにこと笑っている進にボクは絶句をして押し黙った。上手い言葉がでてこない。そこでようやく、ボクは進の笑顔に違和感を覚えた。

「そういえば兄さん、最近パワプロさんと仲良いですよね」
「パワプロ?突然なんの話だ」
「あの人は僕のですから、いくら兄さんでも手を出したら許しませんよ」

唇に乗る笑みはいつもの通りだったが、眼差しはボクの方を真っ直ぐと捉えたまま動くことがない。ごくりと生唾を飲み込む。進が何を言っているのかよく分からなかったし、どうして突然こんなことになっているのか理解が追いつかなかった。ボクは何も言葉にすることができないままただ黙るばかりであった。

「兄さん、辞書いるんでしょ?」
「あ、ああ…」
「今日は僕もう使いませんから、返すのは明日でいいですよ」
「…分かった」
「じゃあ、おやすみなさい」

半ば締め出されるような形で僕は手に辞書を持たされ弟の部屋をあとにした。しばらく閉められたドアを眺めていたが、当然のようにドアの向こうは静かなままなんの反応もない。
長い廊下は甘い匂いでいっぱいになっており、それは自分の部屋に戻る道までずっと続いていた。


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まさかの続き。進くんコエーヒエー
なんかまだ続きそうですよね~えっあなたがかいてくださるんですかヤッタ~!

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ラブレター

主進


握りしめると手の中でぐしゃりと潰れた。
もしかしたら多少なりとも価値のあったそれはたった今僕の手の中で紙くずになってしまった。白い封筒にハートマークのシールという、模範的とも古典的ともいえるそれを苦々しい気持ちで見つめる。
くしゃくしゃになったそれは確かにラブレターと呼ばれる類のものであった。
ぱかりと開いた下駄箱の蓋を持ち上げて奥をのぞく。手紙だけではない、まだ何か入っていた。
煮える頭を落ち着かせながら奥の方に突っ込まれていたそれを引っ張り出す。
手の平に乗るほどの小さい長方形の箱だった。
ピンク地の包装紙に淡い黄色のリボンが巻かれていた。手紙と共に贈られたプレゼントらしい。

センス悪いな。

先ほどつまみ上げた手紙と一緒に手近なゴミ箱へ放った。
ゴミ箱の中に入っていてもなお不愉快なそれらを目につかないように奥まで押し込む。
そこまでするとようやくスッキリとした心持になって、僕は人知れず薄く笑んだ。
顔を上げて時刻を確認する。もうすぐあの人がやってくる時間だ。

朝いちばん、誰よりも早く登校する僕には毎日行わなくてはならない日課があった。
早朝、人気のない昇降口、目当ては下駄箱の中身だった。
ぱかりと開けて、何も入っていないことを確認する。入っていれば中身を捨てるだけだ。
何も入っていないことが確認できたら、今度は駆け足で教室まで向かう。
目的地は自分のクラスがある階よりもひとつ上にある。普段用がなければ上がることもない階だった。
そっと扉を開けて静かに足を踏み入れる。昨日席替えが行われたことはすでに知っていた。
あの人の机を探し出し、僕は中身を覗いた。
腰をかがめて中を見ると、そこにはいつもの通り置きっぱなしの教科書が入っているだけだった。
間に折れたプリントがくしゃくしゃになって何枚か挟まっている。
全く仕方のない人だなあと心の中でお説教をしながらも僕はにこにこ顔でその場をあとにした。
昨日はそう、ラッピングされたお菓子が入っていたのだった。不味そうなクッキーだった。
もちろん捨てた。

朝の日課を終えた僕の足取りはとても軽やかだ。
爽やかな朝の陽ざしが廊下に差し込み、僕の心までも晴れやかにする。
だいたい、人の机や下駄箱にものを入れていく神経がつくづく僕には理解できない。
迷惑極まりないことであるし、だいたい下駄箱などに食べ物の類を入れるなど衛生的にも問題があるように思え、一体何を考えているのかと問い詰めてやりたい。
僕なら絶対にそんなことはしないし、だいたい僕だったらもっとセンスの良いプレゼントを選ぶし、もっとおいしいクッキーを焼く自信がある。
あの人だって褒めてくれるのだから、僕の思い違いや勘違いなんかではない。
進くんの焼いたクッキーは美味しいね
そのように言うあの人を想像して僕はこっそりと微笑んだ。
今度はマーブル模様のクッキーを焼いていこう。チョコレートクッキーでもいいかもしれない。
チョコレートはあの人の好物だった。

「あ、進くんおはよう」
「おはようございます、パワプロさん」

昇降口へ戻ると、ちょうどパワプロさんがやってくるところだった。
重そうな鞄を脇に置いてにっこりと笑うので、その眩しさに当てられながら僕も挨拶を返す。

「進くん、今日も早いね。どうしたの?」
「ええ、ちょっと教室まで忘れ物を取りに」
「進くんでも忘れ物するのか~」

パワプロさんが靴をしまっている横で僕も自分の下駄箱を開ける。ほんの少し驚いてどうしようかと迷っていると、いつの間にか隣に来ていたパワプロさんがにやにやと笑っていた。

「さすが進くん、モテるね」
「いやだな、やめてくださいよ」
「わ、すごい、本物のラブレターだ」

取り出されたそれは薄桃色の封筒で、表に「猪狩進さま」と記されていた。
ひっくり返してみても裏にはなにも書いておらず、差出人は不明だ。体裁だけを見ると、確かにパワプロさんの言うとおりラブレターらしかった。

「進くんかっこいいもんなあ」
「そんなんじゃあないですよ」
「女の子の気持ちわかるわかる」
「野球部が甲子園に出てからというもの、なんだか調子の狂うことばっかりです」
「確かにそれはあるね。この前矢部くんも女の子になんかもらってたしなあ~。くう~、なんでオレにはなんにもないんだ!!」

オーバーリアクションで騒ぐ彼を微笑ましく眺めながら、さてこの手の中のものをどうしようかと考える。
心底どうでも良かったが、彼の目の前でそのように扱うわけにもいくまい。
適当に鞄のポケットにしまって、パワプロさんの話に調子を合わせた。

「しっかし進くん、ほんとにいいの?オレの練習に付き合わせて、朝練よりもさらに早く来てもらってさ。って、今更か」
「僕でお役に立てるのなら喜んで。もうすぐ、パワプロさんのスライダーもものになりそうですしね」
「そうなんだ、やっと感覚が掴めてきたところなんだよね。それも全部進くんのおかげだよ」

靴を履き替えて、二人並んでグラウンドに向かうこの時間がなによりも至福だった。
他には誰もいない。他の部員はあと30分もすればやってくるので、まさしく貴重な時間である。
ほんの少しだけれど他愛のない話をして、確かに今ここは僕たち二人だけの世界なのだ。
誰の入り込む余地もなく、誰に侵されることもない。

「ねえパワプロさん、アーモンドココアと焼きチョコのクッキーだったらどっちがいいですか?」
「え、なにそれ美味そう」
「今度作ってみようかなと思って」
「進くんが?オレに?」
「ええ…ダメですか?」
「全然ダメじゃないよ!この前のもすっごい美味しかったし。でもなんか、いつも悪いじゃんか」
「僕がやりたいからいいんです」
「じゃあ、今度一緒にどっか甘いもんでも食べに行こうよ。いつものお礼でオレのおごりだよ」
「そんな、悪いです。僕が勝手にやってるだけなのに」

後輩は先輩の言うことを聞くもんだぞ!
わざと尊大な態度で大きな声を出したパワプロさんにくすくすと笑うことで返答する。
僕につられて笑ったパワプロさんの顔はやっぱりきらきらと眩しくて格好良かった。
ひとしきり笑ってから、それぞれグラブを掴む。

「さあ、今日もやるぞ!」
「よろしくお願いします」

こうして今日も僕の一日が始まる。


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自分のはクソほどもどうでもいいけど主人公ちゃん宛の手紙・プレゼントは許せない進くん
以前ツイッターで呟いたネタを起こしてみたら予想以上にこわい進くんになってしまって満足

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結んだら開いて

主人公と進


「進くん、誕生日おめでとう!」

そう言ったパワプロさんはにっこり微笑むと手に持っていた包みを差し出した。受け取ったものの、唐突なそれにどう反応したらいいのか分からない。ぱちぱちと瞬きをして、にこにこしている彼と薄桃色の包みとを交互に見やった。手の平ほどの大きさのそれには、淡い桃色の包装紙に赤いリボンが巻かれていた。先端に凝った細工が施されているリボンが風に揺れる。

「あれ、今日って進くんの誕生日だよね?」
「え、ええ、そうです…ありがとうございます」
「この前急に言うからさー!分かってたらもっといいもの用意できたのに」

それは来年で勘弁な、そう言った彼はどこまでも屈託がなくほんの少しだけ照れくさそうに笑った。
手の中の包みに目を落とす。なんだろうとは思ったものの、見た目通りだとしたらきっと自分の予想は当たっていることだろう。

「食べれるものの方が嬉しいと思ってチョコにしたんだ~。なんかね、有名店の有名パティシエが作ったなんとかなんとかだって」
「ふふ、それじゃなんにも分かりませんよ」
「あはは、せっかく調べて買ってきたのに忘れちゃったよ。進くん、甘いもの好きって言ってたよね?」
「はい、大好きです」

ありがとうございますと改めて礼を述べると、パワプロさんは少しだけほっぺたを赤くして僕の髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。照れたときに彼がするいつもの動作であった。くしゃくしゃと心まで撫でられたようにくすぐったくなる。彼からもらえる誕生日プレゼントはもちろん心から嬉しかったが、今回はそれよりももっと嬉しいことがあった。

「ねえパワプロさん、今日って何の日か知ってます?」
「え?だから進くんの誕生日だろ?」

首を捻っているパワプロさんには本当に何の日か分かっていないようだった。その様子を見ていると自然と頬が緩む。
今日は2月14日、確かに、僕の生まれた日だ。誕生日で間違っていない。
だけど、それ以上にもっと大切なイベントが世間では行われているはずなのだ。

「パワプロさん、本当にありがとうございました」
「いいよいいよ、そんな改まらなくて」
「返事はもちろんオーケーですから、来月のお返しを楽しみにしていてくださいね」
「へ?来月?」

未だ要領を得ない様子のパワプロさんに、僕は満面の笑みで返答をする。
今日はバレンタインデーの日だ。そして僕の誕生日。
もらったからには、お返しをするのが当然であろう。パワプロさんの好意に応えるのが僕の義務である。

「お返しなんて気にしなくていいのに、進くんはほんと真面目だなあ」

やっぱりなんにも分かっていないらしい様子の彼が愛おしく、僕はもらった包みを両手で抱えなおす。
そのときは100倍でお返ししますから、どうか覚悟しておいてくださいね。


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進くんお誕生日おめでとう!
ハッピーバースデイバレンタインでかわいすぎますでしょ主進
誕生日を言うと絶対「バレンタインだね」と言われてきた進にとって誕生日>バレンタインなのはとっても嬉しかっただろうな、という妄想


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アスピリンも効かない

主進


「じゃ、じゃあいいかな?」
「は、はい…」

ベッドに横たえた進くんの上にのしかかりながら、オレはなんとも情けない声で尋ねた。電気を消すのを忘れてしまったので、進くんの表情がありありと見える。時折ちらっと顔を上げて視線を泳がせているのはつまりそういう意味もあるかもしれない。しかしここまで来てわざわざ電気を消しに行くのも随分マヌケな行為である(先程の質問も十分にマヌケであるということは伏せておこう)。

ずっとこうしたかったはずなのに、ずっと望んでいたはずなのに、いざこういう状況になったらオレというやつはなんとも情けないことにどうしたらいいのか分からないのだった。オレも望んでいるし、進くんだって望んでいる。何も障害はないのだ。
20代も半ばを過ぎ、多くはないが何人かの女性と付き合った経験もあり、もちろん童貞ではない。進くんは男だったが、根本的にすることは同じなのでやり方が分からないというわけでもない。だいたい、勉強熱心なオレはすでにネットで予習復習も済ませているのである。もちろん欲情だってしているし、正直張り詰めた下半身は痛いほどだ。
据え膳食わぬはなんとやらというが、まさにそんな状況である。
恋人の部屋、心地の良いベッド、愛し合う二人が互いを求めるという最高に幸せな状況だった。

どうしたらいいのか分からないのは進くんも同じようで、ベッドに寝転んだまま真っ赤に熟れた顔でしきりに視線を泳がせている。前髪をさらりとかきあげると、ぴくんと反応して目をつぶってしまった。額と、震える睫毛に唇を落とす。震えているのはオレも同じだった。抑えきれない高揚感と興奮で体はふわふわしていた。
真っ白いシーツの上に散らばる進くんの髪を見て、心底愛おしいと思う。髪をほどいた彼はとても色っぽく、物欲しげに開いた唇はオレの情欲をかきたてた。
この唇から、一体どんな声が零れ落ちるのだろう。

「あの、パワプロさん…?」
「え、あ、うん!?」

彼の顔を眺めながら妄想を突っ走らせていたオレは、突然呼びかけられたことで素っ頓狂な声をあげてしまった。およそ行為中に出す声ではない。ムードが台無しだ。

「あの、もしかして、無理してませんか?」
「なんのこと?」
「やっぱり、僕なんかに欲情しないのかなって…」
「まさか!」

何言ってるの!と大きな声を出してしまったせいで、進くんはびっくりした顔でオレを見つめた。恥ずかしさで小さくなりながら謝ると、彼はホッと息をつきながら安心しましたとだけ言って瞳を伏せた。妙な沈黙が二人の間に流れる。
オレはもうお手上げの気持ちになって、なにも言わず進くんをただ抱きしめた。ぎゅうぎゅうと腕をしめつけて、彼の首筋に顔を埋める格好でぐりぐりと擦り寄る。

「あー、もう、ごめん!オレってダサすぎ!」
「パワプロさん…?」
「しばらくこうしててもいい?」

もちろんですと言って笑った進くんの腕がオレの背中にそっと回される。そのまま無言のまま二人して抱き合っていると、ようやく気持ちも落ち着いてきた。
顔を上げて進くんの鼻先にチュウと吸い付く。

「なんか、いざそのときがきたらどうしたらいいのか分からなくなっちゃって」
「はい…僕もです」
「分かると思うけど、オレ今だって結構限界なんだよ」

わざと意識させるように下半身を押し付けると、進くんの頬はぽぽぽっと染まって、さらに耳まで真っ赤にしながら「僕だってそうです」と口ごもった。

「進くんのことほしくてほしくてたまんないけど、それ以上に大切すぎて、どうしたらいいのか分かんなくなっちゃって。なんかほんとごめん、情けなくて」
「そんなこと…」
「……。進くんっていい匂いするよね」

くんくんと擦り寄って首筋に鼻を埋めると、くすぐったいのか進くんはくすくすと小さく笑った。ふんふんと甘い匂いを堪能しながら、悪戯心でべろりと舐め上げる。唐突なことにびっくりしたのか、彼は小さく声を上げると恥ずかしそうに瞳を伏せた。濡れた瞳と熱い眼差しはオレを煽るのには十分すぎるほどだった。

「あの、さっきから気になっていたんですが、電気消しませんか?」
「ダメ」

進くんのかわいい顔が見れなくなるから。言い置いて、そのまま唇を重ねる。まるで待っていたかのように薄く開かれた唇に優しく舌を差し入れる。絡まった舌は熱く、もっと深く、もっとたくさん彼を感じたくてオレは角度を変えて何度でも口付けた。
合間に紡がれる吐息すら逃すのが惜しかった。ちゅくちゅくと立てられる水音と彼の方から絡められる舌に興奮する。苦しくなって束の間唇を離すも、進くんのそれによってすぐに塞がれる。夢中で交わした口付けは、今までに経験したことのないものだった。

「僕、もう我慢できません」
「うん。オレも」
「いい子のフリは、今日でおしまいにします」
「じゃあ、悪い子になるの?」
「はい。パワプロさんの前でだけ、限定です」

真剣な顔でそう言った彼にオレは噴き出してしまって、それを見た進くんはなんで笑うんですか!と言ってオレを叱る。ぶうとむくれてしまった彼が愛しくてかわいくてどうにかなりそうだった。
慌てて、オレは良い子の進くんも悪い子の進くんも大好きだよと囁くと、少しは機嫌が直ったようだった。じっと見つめていると、キスしてくれたら許してあげますなどとかわいく言うものだから、オレは愛しい恋人の唇に再び口付けを落とした。



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主進しあわせになれよばかーーーーー!!
手を繋いだり触れるだけのキスをしていた二人が一線を越える夜
今夜はお赤飯ね

アスピリンは熱さましの薬です

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ハートホイップ

プロ入り後の主人公と進


ドキドキと早まる鼓動を抑えきれずに、オレは切符と携帯電話を握りしめて改札をくぐり抜けた。
ちょうどホームへと滑り込んできた電車へタイミング良く乗車する。
ここから普通電車に乗って3駅。
ガタンゴトンとのんびり走る列車に妙な安心感を覚えてオレは大きく息をついた。
最寄り駅からたったの3駅先、そこに彼の住むマンションがある。
近いような、遠いようなもどかしい距離だ。
その気にさえなればいつでも会いに行ける距離。
嬉しいような、落ち着かないような、いや、もちろん嬉しいに決まっている。

にやけそうになる顔を必死でこらえながらオレは再び携帯の画面に目を落とした。

お休みのところ突然すみません。猪狩です。
ケーキを焼いたのですが、作りすぎてしまったので良かったら食べていただけないでしょうか。
ご連絡お待ちしています。

短い文面を何度も読み返して、From欄「猪狩進」の文字に頬が綻ぶ。
携帯を眺めてはニヤニヤしているオレは傍から見れば立派な不審者に違いないのだが、初めてもらったメールがこのような嬉しい内容であるのだから喜ぶなという方が無理な話である。
メールアドレスはとうに交換していたが、実際にメールをもらうのは初めてだった。
オレの方からも、進くんにメールを送ったことは今までに一度もない。

チームメイトの彼とはここ最近で随分と仲良くなったが、どこかへ一緒に行くのはいつも決まって練習後のことであったし、チームメイトなので何かあればしょっちゅう顔を見合わせているわけでわざわざメールをする用もなかった。
もちろん、アドレスを交換してから何度もメールをしようと思ったのだが、いかんせんオレにはメールで伝えなければならないような用件を思いつくことができなかったのである。
そんな折に、先ほどのメールだ。
オフである今日一日をどう過ごそうか布団の上でごろごろしながら考えていたオレは、あまりの嬉しさから一気に目が覚めて飛び起きた。
気が付けばアドレス帳から彼の名前を探して電話をかけていた。

(でも、突然家なんかに押しかけちゃってほんとに良かったのかな~)

嬉しさのあまり勢い込んで電話してしまったオレは、気が付けばそのままのノリで今から行くよなどと言ってしまったのだった。
そこからはもう怒涛の展開で、家の場所を尋ねればなんと自宅の最寄駅からたったの3駅先、さらに「僕の予定は今日一日空いていますよ」などと彼も言うものだから、今日は進くんの家で遊ぶことになった。
ここまでとんとん拍子で話が運んでしまって大丈夫だろうかとは思うけれども、反面どうしようもない胸の高鳴りを抑える方法など分からない。
そしてここにきてようやく、オレは彼に抱いていた気持ちの正体を知ったのだった。
分かってしまえば至極単純なものである。

それにしても、少し前に本屋へ寄った時、料理をするのが好きだという話は聞いていたのだが、まさかケーキまで作れるだなんて驚いた。
進くんと手作りケーキの組み合わせ。驚くほど違和感がない。
ケーキのスポンジのようにふわふわと笑う彼を想像してオレはまたもニヤニヤしてしまうのだった。

電車は乗った時と同じように滑らかにホームへとすべり込む。
踏み出した一歩はどうしようもなく軽くて、オレは半分スキップをしながら階段を駆け下りた。





「ど、どうしよう、今からパワプロさんが来ちゃう…!」

握りしめた携帯と目の前のケーキを眺める。喉はからからで、胸はどうしようもなく早鐘を打っていた。
メールなどして大丈夫だったろうかという心配をよそに、パワプロさんからはすぐに返信があった。それも、メールではなく電話で。
ディスプレイに表示された名前にどきどきしてしまって、あとはもうずっとふわふわした心地のまま通話は終了し、気が付けば彼が自分の家に来ることになっていた。
自分は変なことを言わなかっただろうか、チームメイトとしていきすぎたことをしていないだろうか。

「部屋、片づけなくちゃ…」

あわてて部屋を見渡すも、普段からこまめに掃除をしているので別段片付けが必要なところは見つからない。
それでも落ち着かない気分のまま、進は部屋の中を行ったり来たりうろうろするのだった。

ケーキを焼こうと思ったのはほんの気まぐれだった。
たまたま買った料理の本に載っていたので、ちょうど甘いものが食べたかったのもあり作ってみた。
ショートケーキにしたのは、以前に彼が好きだと言っていたのを思い出したからだった。
そして、仕上げの生クリームをしぼり終わったところでようやく我に返った。
そこにあるのは、初めてにしては上手く出来たという喜びと、一体何をやっているんだろうという自問だった。
自分で食べるものなのでレシピもそこそこに適当に作るはずだったのだが、彼のことを思い浮かべながらの作業にはだんだんと熱が入り、気が付けばデコレーションまで完璧に施されたホールケーキがそこにはあった。
乗せられたイチゴの上には粉砂糖まで振りかけてある。
何かをする際、凝り性になってしまうのは昔からだった。

余った生クリームを舐めながらケーキを見つめること数分の後、いつしか彼にこのケーキを食べてもらいたいという思いが湧きあがっていた。
手作りを食べてもらいたいだなんてどこの女の子だと自身に突っ込みを入れながらも、自分の作ったケーキを食べてきっとおいしいと言ってくれるだろう彼のことを考えると胸が高鳴った。
おいしいよ、進くんはなんでもできるんだね。
にっこり笑うその顔はケーキよりも甘いにちがいない。

気が付くとメールをしていて、さらに気が付けば今からパワプロさんが自宅へ来ることになっていた。
まさか自分のマンションからさほど離れていない場所に住んでいるとは思わずに驚いている。
これからは練習後だけではなく、もう少し頻繁に会えるようになるだろうか。いや、それよりも今はこれからのことを考えなければならない。
来客用のお皿とカップを…、背伸びをして少し高い位置にある食器をとろうとしたところでチャイムが鳴った。
あわてた進はエプロンを外すのも忘れて玄関へと急ぐのだった。



―――――――
進がケーキ焼いてたらかわいいよねってことが言いたかっただけなので、意味も内容もありません。
オチは主人公ちゃんが食べました。
ケーキ食べたい

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お気に召すまま

ぬるすぎて笑えますが、性描写があるのでたたんでおきます。
大丈夫な方は続きからどうぞ

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3つ数えて

2010/主進


「ねえ、パワプロさん」

隣に座っている進くんに呼ばれてオレは顔を上げた。
熱さと闘いながら食べていたちくわをなんとか飲み込む。
熱いが食べたい、食べたいが熱い。猫舌であるオレがおでんを食べるのは一種の闘いのようなものだ。なにしろオレは今とてつもなく腹が減っている。
ともすれば火傷しそうなほどアツアツに煮込まれたおでんがそこにはいる。がっつくなという方が無理な話である。
隣を見ると、箸をおいた進くんは手元のお猪口から少しだけお酒を舐めて、満面の笑みで言った。

「僕、パワプロさんのことが好きなんですよ」

ついに言っちゃったあ、間延びした口調で言った進くんはにこにこと笑いながらお猪口の酒を一気に飲み干した。
おっ、いい飲みっぷりだねえと言いながらすかさず大将が新しい酒を注ぐ。
皿に盛られた大根をつつきながら進くんがこちらを見る。

「パワプロさん?どうかしました?」
「あ、いや、べつに、大丈夫」

もごもごと口ごもりながらオレは大将におでんの追加を頼んだ。
いつもこの時間には大繁盛している屋台が、今日はオレと進くんだけの貸切状態である。
とうに顔なじみとなった大将は手慣れた様子で次の具を皿につぐ。オレの好物のこんにゃくだ。ついでに生中も追加しておいた。

ここはオレと進くんいきつけの屋台である。元々はオレのいきつけであったのだが、2人で何度も来ているうちにオレと進くんのいきつけとなった。
最初こそ外の屋台で食事をするということに慣れない様子の進くんだったが(進くんはいいところのおぼっちゃんである)、いまではすっかり打ち解けて気軽に世間話をしているし、料理をすることが好きらしい進くんは大将とも話が合うようだ。
大将さん、大将さんと呼ぶその様子はかわいらしかったし、大将も進くんのことを気に入っているようだ。

「今日のパワプロさん、よく飲みますね」

僕も追加しちゃおうかなあ、やっぱり間延びした声で言った進くんはまたも一気に日本酒を流し込んでしまうのだった。
どうやら酔っているらしい。酒は嗜む程度、普段は決して酔うほど飲まない進くんにしては珍しいことだった。
だいたい、酒が弱いわけではない彼がここまでになるには相当の量を飲んでいるはずなのだが、おでんを食べることに一生懸命だったオレは全く気が付かなかったらしい。

こんにゃくをもごもごと咀嚼しながらオレは先ほどの話を蒸し返した。このままなんとなく流されてしまうわけにはいかない。

「ねえ進くん」
「なんですか?」
「さっきの、あれ、どういう意味なの?」
「さっきの?」

こてんと首を傾げてみせた進くんはどことなく幼い動作で考え込むと、結局は何も思い当たらなかったらしく、なんのことですか?とのたまった。
頬は血色よくピンク色に染まっており、瞳はきらきらと輝いていた。
どうやらオレの想像以上に酔っているらしい。

ちょんまげ兄ちゃんは、兄ちゃんのことが好きなんだよな!威勢よく言い放った大将がお猪口にお代わりを注ぐ。オレの止める間もなく進くんはそつなく受け取って、透明なそれをぺろりと舐めた。
そうです、僕パワプロさんのことが好きなんです!これまた大将に負けじと威勢よく言い放った進くんはお猪口を両手で持ってうふふと笑ってみせた。
それを見た大将も笑っている。

「えっと、好きってそれはなんていうか、うんオレも進くんのこと好きだけど」
「僕のはLoveですよ」

大将さんおかわりください!元気に言った進くんはほかほかの牛すじに口をつけると、熱いですねと言って笑った。
熱いのはオレの顔だ。額からはだらだらと汗が流れてくるし、めちゃくちゃ熱い。

「ラ、ラブって進くん」
「Likeじゃあなくって、Loveの方ってことですよ」

兄ちゃん、つまり愛の告白だな?けらけらと笑った大将が囃し立ててくる。それでも進くんはにこにこと笑ったままだ。
どうでもいいが、大将はオレのことを兄ちゃんと呼び、進くんのことをちょんまげ兄ちゃんと呼ぶ。
ちょんまげとは、どうやら進くんの結び髪のことを言っているらしい。その呼び名はどうなのかなあと思案したオレであったが、当の本人が全く気にしていないようなのでオレも気にするのをやめた。
ちょんまげ兄ちゃん、お代わり飲むか?大将がさらに酒を勧めていたので今度こそオレはそれを阻止した。

「進くん、今日は飲みすぎだって!」
「だって、美味しいです」
「おいしくても、もうダメ!」
「パワプロさんと食べるご飯はどうしてこんなにおいしいのかなあ」

むにゃむにゃと語尾を怪しくしながら言った進くんは唐突に机に突っ伏し、見ているとなんとそのままスヤスヤと寝息を立て始めてしまった。
あっけにとられたオレは何も言葉にならず手元にあった生中を一気に流し込んだ。ぬるい。
大将の方を見ると、新しくやってきた客の注文をとっているところだった。

こちらに顔を向けたまま眠っている進くんの顔をまじまじと眺める。
キレイな顔だ。中世的で美しいその顔立ちはともすれば女の子のようであったが、もちろん進くんは男であるし、オレだって男だ。
酔っぱらった進くんの言うことを真に受けるわけではないが、好きだと言われればいやでも意識してしまう。だってオレは男なのだ。

「…参ったなあ」

何が参ったのか分からないが、オレはいかにも困っていますという体の顔を取り繕ってビールを飲み干した。ぬるくなっていたはずのビールは喉ごしが良くとても美味しかった。
かわいらしい寝顔を眺めながら、あと3つ数えて起きなかったらチューしちゃうぞとオレは心の中で進くんに話しかける。もちろん進くんが起きることはない。
どうやらオレも酔っているみたいだ。
たまにはこんな夜もいいだろうと、オレは上機嫌のまま大将に生中のお代わりを告げた。


――――――――
いきつけ、常連、この単語だけでここまで萌えましたー主進くださいー(懇願)

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ラブイズユー

10/主進


「進くんはいつでもお嫁にいけるね」

ちょっとした軽口のつもりで言った言葉が進くんにはたいそう気に入らなかったようで、進くんにしては珍しく返事が返ってこなかった。いわゆる無視というやつだ。
進くんの作ったおいしい夕食を食べてお腹はいっぱい、極楽気分のまま二人してソファで戯れているこの時間がオレは大好きなのだった。
いつもなら食べてすぐ食器を片づけに席を立つ進くんが、真っ先にオレの胸に甘えてきたのも嬉しかった。
そういう嬉しい気分もあってついつい口が軽くなってしまったのだが、それは進くんの機嫌を損ねる結果となってしまったようだ。
オレの足の間にちょこんと収まっている進くんをがばりと抱きしめる。
後頭部にぐりぐりと顔を押し付けると、くすぐったいのか進くんは少しだけ身じろぎした。

「前に母さんが言ったこと、気にしてるんですね」
「べつに、そういうんじゃないけどさ。今日もすっごく美味しかったから」
「僕は男ですよ」

それきり進くんはまたも黙ってしまうのだった。
進くんの肩越しに食卓を見つめる。テーブルの上には食べてそのままになっている食器たちが置いてある。
箸も、カップも皿もいつの間にか揃いのものになっていた。進くんに手料理を振る舞ってもらっているうちに徐々に増えていったものだ。あるときは一緒に買いに行き、あるときは互いに買ったものを持ち込んでいた。
初めのうちこそお揃いというものに若干の気恥ずかしさを覚えていたオレではあったが、進くんの笑顔の前にいつしかそんな気持ちも消え失せていた。
進くんが笑ってくれるのならオレはなんだってする。

「進くん」

ほっぺたに口付けるのは、こっちを向いてキスしようよというオレの合図だった。
いつの間にか二人の間で承知のものになっていた、暗黙の了解だった。
当然進くんは分かっているはずであるが、オレが何度唇を寄せてもこちらを振り向くことはない。
どうやらよほど怒らせてしまったようだ。
オレは進くんのことを心からかわいいと思っているし料理の腕も一流だと思っているが、進くんのことを女の子の代わりとして扱ったことは一度もない。そして、これからもないだろう。
確かに顔を埋めた進くんの髪からは女の子のようないい匂いがするし愛らしい仕草はまさしく少女のようではあるけれども、抱きしめる体はきっちり筋肉のついた逞しいものであったし、体を張ってホームを守る進くんはまさしく男なのであった。
そして間違いなくオレは男の進くんが好きだった。

どうしたものかと思案して進くんの肩に自分の頭を乗せる。
びっくりしたらしい進くんは少しだけ体をこわばらせたが、やっぱり振り向いてくれることはなくて黙っている。
進くんは、何がそんなに気に入っているのか知らないがオレの固い膝の上がお気に入りだ。
ソファに腰掛けているといつの間にか膝の上に進くんが乗っかっていて、そのまま一緒にテレビを見たりする。
今日は帰りにDVDを借りてきたから、2人で夜更かしして一緒に見るつもりだった。進くんを足の間においたまま、その肩口に頭を乗っけてテレビ鑑賞をするのがオレのお気に入りでもあった。

「進くん」

ソファから下りて、正面から進くんを見つめる。
進くんが下を向いたまま顔を上げてくれなかったので、オレはしゃがみこんで下から掬い上げるように彼を見た。
進くんの大きな瞳はゆらゆらと揺れていた。

「オレの言い方が悪かったみたいでごめんね」
「僕の方こそ、ムキになってごめんなさい」
「いま思いついたんだけど、いっそオレがお嫁さんになろうかな?」

やっと顔を上げてくれた進くんは、それってどういう意味ですか?と言って笑ってくれた。
蕾が花開くような進くんの笑顔。やっぱりオレはこの顔が大好きだ。

「オレがお嫁さんになったら、進くんちゃんと娶ってくれる?」
「パワプロさん、それって」
「お嫁さんでもお婿さんでもいいから、オレは進くんとずっと一緒にいたいなあ」

進くんが破顔する。
オレはたまらなくなって、立ち上がるとソファに座っている進くんをそのまま抱きしめた。
抱き返してくれた進くんをぎゅうと腕に閉じ込めて、耳元にささやく。
くすぐったいのか、進くんはくすくすと笑いながらオレの耳元にも同じ言葉をささやいた。
縺れ合うようにキスを繰り返しているうちに、いつの間にかオレは進くんをソファの上で組み敷いていた。
結っていた進くんの髪がほどけてソファの上に散らばる。その一束を摘み上げてオレは唇を寄せた。

「どうしよう。このまましたくなっちゃった」
「僕もです」

視線を外しながら照れくさそうに言う進くんの唇を塞ぐ。
ついばむように繰り返される浅い口付けから徐々に深くなっていくキスが進くんのお気に入りだった。チュ、チュ、と交わされる口付けの合間に熱い吐息が絡まる。
差し出された進くんの舌をすっぽりと覆い尽くすように舐める頃には2人ともすっかりその気になっていて、こすれる下半身は共に痛いくらい張り詰めていた。

「ソファでもいい?ベッド行こうか?」
「そんなの、聞かないでください…」

オレの首に腕を絡めた進くんが唇を寄せてくる。
最初から答えは聞くまでもなくて、オレは進くんを抱き寄せると二人でソファへと沈み込んだ。


―――――――
かわいいのも怖いのも痛いのも気持ちいいのでもいいです、主進ください
主進、すごくいいと思います…

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自絞死

※ふたりとも頭のネジがゆるゆるな主進



ほろほろと涙を流す進くんの顔を見ながら、オレは「大丈夫だよ、気にしないで」と言いたかった。
それなのにオレの喉というやつはまともに機能をしてくれず、咳き込むばかりである。
ああ、いい加減止めなければ、この咳も、進くんの涙も。

「あの、僕、あの…」
「ゲホッ、いいよ、進くん」
「僕、こんなことするつもりなんてなくて、ぼく、ぼく」
「分かってるから大丈夫だよ」

だから泣かないで、言うと進くんは大きな瞳からさらに大粒の涙を流して泣きじゃくってしまった。
ぽろぽろと流れ落ちるそれは進くんの頬を滑ってオレの掌を濡らした。
ぬぐってもぬぐっても進くんの涙は止まらない。
オレが大丈夫だと言えば言うほど嗚咽は大きくなるばかりである。
泣かせたくなんてないはずなのに、どうしていつもこうなってしまうんだろう。
オレはバカだ。

「タオル、持ってくるよ」

優しく髪を撫でてソファから立ち上がる。
進くんは幼い動作で首をこくんと垂れると近くにあったクッションを手に取って顔を埋めた。
少し前にオレが進くんへプレゼントしたものだった。
僕、緑色が好きなんです、クッションを触りながらにこにこと笑う進くんがかわいくって、次の日オレは一人でまたそのお店へ行ってふわふわのクッションを買った。
プレゼントすると、進くんはクッションみたいにふわふわと笑うのだった。
そのクッションは今、進くんの涙でまだら模様になっている。

洗面所まで行って洗い立てのタオルを一枚手につかむ。
ふわふわのそれはとてもいい匂いだ。そういえば、柔軟剤を変えたんですと進くんが嬉しそうに話していた。進くんは家事が好きだった。
鼻先をタオルに押し付けて深呼吸をする。
咳はようやく止まった。

洗面所の鏡に映った自分をまじまじと見つめる。
首にはくっきりと真紅の跡がついていた。今しがた進くんにつけられた跡だ。
赤色を指でひとなぞりしながらオレは考える。
またやってしまったという反省と後悔。
最近こうして鏡の前で反省する回数が増えてきたような気がするのは、オレの気のせいに違いなかった。

こんなことになったのは、いつからだっただろう。
昔から、進くんには猪狩の話をすると嫌がるところがあった。
オレはそれを重々承知していたし、なるべく猪狩の話題を出さないようにしているのだが、なにぶんオレと猪狩は高校の頃からの同級生であったし、なにより猪狩は進くんの実の兄だ。
どんなに避けていたって、話題に上ることはある。
猪狩の話をする度に嫌な顔をしていた進くんは、いつしか顕著に怒りを表すようになった。
兄さんの話は聞きたくありません。あなたの口から兄さんの名前が呼ばれるのが我慢できません。
オレはそのたびにごめんと謝って、そのあと決まって進くんも謝るのが恒例のパターンだった。
わがままを言ってごめんなさい。

それがいつしかこうなった。いつからかは覚えていない。
気が付いたら進くんはオレの首を絞めていて、オレは抵抗せずにされるがまま、解放された後はこれでもかと咳き込むのだ。
抵抗する気がないのは、進くんの行為に殺意がないのが分かっているからだった。
当然だ、オレたちは恋人同士なのだもの。どうして殺す理由があるっていうんだ。
だからオレは進くんの好きなようにさせて、己の不注意を詫びるのであった。
ごめんね、進くん。
オレが謝ると決まって進くんは泣き出してしまうから、それだけが悩みだった。
オレは進くんに泣いてほしくないのに。
指の跡がくっきりと残った首筋を隠すようにオレはタートルネックの裾を引っ張る。
進くんは悪くないのだから、これ以上悲しませてはいけない。

「パワプロさん」

ソファから立ち上がった進くんが駆け出してくる。
そのままの勢いで進くんはオレの胸に飛び込んできて、オレは少しだけよろめいた。
進くんがいやいやをするように首を振って、ぐりぐりと顔を胸に押し付ける。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「いいって。だからもう泣かないでよ進くん」
「僕、パワプロさんがいないとダメなんです。パワプロさんのことが大好きなんです」
「オレも進くんのことが大好きだよ」

熱い進くんの涙がオレの服に染みを作った。
じんわりと広がるそれにオレまで泣き出しそうになる。
進くんの名前を呼んだ。顎に指をかけて顔を上げさせる。キス。
泣き濡れたまぶたに舌を這わせながら丹念に涙を舐めとり、唇はそのまま下に降りていく。
進くんの嗚咽を閉じ込めるように、ぴったりと唇を合わせて口づけた。
舌を差し入れて口内をねぶる頃には進くんの涙も止まっている。
静かなリビングにちゅくちゅくと水音が響いてオレは妙な心持になる。
名残惜しく唇を離すと、鼻の頭まで真っ赤にした進くんが蕩けた表情でこちらを見つめていた。
その鼻の頭にキスを落としてオレは笑う。

「進くん、好きだよ」
「僕も、好きです。大好きなんです」

もう一度だけ唇を合わせて進くんから離れる。
頭を撫でると、恥ずかしそうに進くんは笑った。オレは、この顔が好きだ。



―――――――
ヤンデレっていうかヤンデル進くんが好きです
それに付き合ってあげる主人公ちゃんも、また

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